【ピアノ】J.S.バッハ インヴェンション 第9番 BWV780 全運指付き楽譜と練習のコツ
► はじめに
本記事では、J.S.バッハ「インヴェンション 第9番 BWV780」に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。
インヴェンション全15曲の中でも比較的演奏難易度が高いこの作品に対して、効果的なアプローチ方法を見ていきましょう。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
推奨テンポ設定:
練習開始時:♩= 30-38(正確性と安定性重視)
中間段階:♩= 38-46(表現力の向上期)
目標テンポ:♩= 46(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが適切なのか:
ヘルマン・ケラーが提案する♩= 46 は、以下の特徴があります:
・楽曲の性格を表現するために適度な速度
・標準的なテンポ設定よりも遅め
・内容的に充実した楽曲なので、丁寧に音楽を作れる速度が理想的
‣ 本楽曲でよくある問題点と対策
· 16分音符が不揃いになってしまう
譜例(曲頭)
16分音符の不揃いの中で一番散見されるのが、タイの直後の16分音符が大きく突出してしまうことです。これは、16分音符に問題があるというよりは、タイで伸び続けている音をよく聴いていないことが原因となります。
譜例(1-6小節)の部分だけでも8回もタイが出てきますが、音を出し終わったら安心してしまわず、その音をよく聴き続けてください。そうすることで、直後に出てくる16分音符がどれくらいの音量で現れればいいのかをコントロールすることができます。
· タイの始まりの音が不明瞭になる
譜例(曲頭)
各タイの始まりの音は、「前のめりで食ってくる重要音」なので、やや太めの音で発音するように意識しましょう。この音が聴こえにくくなってしまうと、リズムのズレている印象が弱まり、音楽の締まりが無くなってしまいます。
また、各タイの始まりの音へ入る時は様々な音程で跳躍するので、その跳躍音程感じて弾くようにしましょう。
· なかなか概ね弾けるようにならない
この作品はテンポは速くありませんが、2声の全15曲の中でも比較的演奏難易度が高い作品として知られています。なかなか概ね弾けるようにならない時には、以下の点に注意して練習してみましょう:
・小節内有効臨時記号は全て書き込んでしまう
・片手ずつ暗譜してしまう
この作品では、小節内有効臨時記号がたくさん出てきます。弾き間違えた時に間違えたこと自体には気づくと思いますが、同じ弾き間違いが続く可能性があります。そこで、小節内有効臨時記号は全て補筆してしまい、小節内有効ということを考えずとも、その音符を見れば臨時記号が書き込んである状態にしてしまいましょう。
また、どちらか一方のパートを先に暗譜してしまうと、一気に体感演奏難易度が下がります。
► 終わりに
技術的なハードルと音楽的な深さを兼ね備えた作品です。本記事で提示した練習法と具体的な対策を参考に、着実に学習してみましょう。
この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。
【ピアノ】園田高弘 校訂版 J.S.バッハ インヴェンション:独学学習者のための決定版
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