【ピアノ】インヴェンション入門! 第4番「全運指」公開
► はじめに
本記事では、J.S.バッハのインヴェンションに初めて取り組む方のために「第4番 BWV775」を「全運指」付きで解説しています。初心者でも無理なく習得できるよう、具体的な演奏のヒントも説明します。
► インヴェンション入門に最適の楽曲
インヴェンションの中でも、第1番、第4番、第8番、第13番が入門用として多く用いられています。第4番が入門に適している理由として、以下が挙げられるでしょう:
親しみやすい調性
ニ短調で書かれており、初心者にも馴染みやすい調性です。
認知度の高さ
入門用というだけでなく、インヴェンションの中でも人気の楽曲であるため、参考音源も豊富です。
技術的な取り組みやすさ
テンポは快活ですが、曲の長さも短く、技術的に簡潔で弾きやすい構造になっています。
演奏による対位法学習に最適
二声のインヴェンションの中で最も対位法の技法が分かりやすく、演奏による二声対位法の入門に理想的です。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
おすすめテンポ:
♩. = 60
(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが良いのか:
・速めのテンポだが、初〜中級者でも挑戦できる速度設定
・目標テンポと考えると良い
・作品の持つ快活さを十分に表現可能
‣ 片手ずつ完璧にしてから両手で合わせる
対位法で書かれた楽曲では、各声部が独立した「線」として構成されています。通常の「メロディと伴奏」という構造とは異なるため、まず各パートを個別に練習することが重要です。
片手での練習が十分できてから、全体のバランスを整えていきましょう。
‣ 36-37小節に出てくる「ヘミオラ」を理解する
ヘミオラとは、「3拍子系の曲で、2つの小節を3分割するリズムの取り方」。より広義には、「2つの奇数拍子の小節を1つにする」という解釈もあります。
具体的には以下のような形で現れます:
・通常の3拍子:│♩ ♩ ♩│♩ ♩ ♩│
・ヘミオラ: │♩ ♩ ♩ │
譜例(36-38小節)
この楽曲では、36-37小節目にヘミオラが現れます。カギマークに注目してください。「2つの小節を3分割するリズムの取り方」。これは結局のところ「3分割」なので、「今までの3拍子の各拍の長さが倍になった」と考えることもできます。
この部分のメロディを単純に「3/8 × 2」で演奏しようとすると、しっくりこないことが分かるでしょう。左手は単純に8分音符の連続なので、ヘミオラかどうかを見抜くカギは(この譜例の場合は)右手にあります。
右手のカギマーク頭の音(36小節1,3拍目、37小節2拍目)をやや深めに演奏し、ヘミオラになっていることを演奏でも示すといいでしょう。
‣ 本楽曲でよくある問題点と対策
8分音符単位で拍子を取ってしまう:
・8分音符単位ではなく、付点4分音符単位で一小節を一つで取る意識を持つと、音楽が流れる
8分音符の切り方が極端過ぎる:
・J.S.バッハの作品における8分音符は、当時の楽器の特性を考慮して切って演奏することが慣例
・ただし、切り過ぎず「テヌートスタッカート(やや保持する感覚)」で演奏
装飾音符の入りが強くなり過ぎる:
・速いテンポの中でもさりげなく装飾音を入れるように意識
・特に、装飾音符の入りに不必要なアクセントを入れないように注意
► 終わりに
この曲を通じて身につけた対位法の感覚や運指技術は、今後のピアノ学習において必ず役立ちます。本記事の内容を参考に、焦らず段階的に練習を進めてください。完成度を高めることで、バッハ音楽の奥深さと、対位法による音楽構造の美しさを実感できるでしょう。
次のステップとして、他のインヴェンション作品にも挑戦してみることをおすすめします。第1番、第8番、第13番辺りは特に取り組みやすく、それぞれ異なる魅力と学習効果があります。
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