【ピアノ】アンドレ・ギャニオン「秘めた愛」解説:難易度・楽譜・演奏のコツ

スポンサーリンク
スポンサーリンク

【ピアノ】アンドレ・ギャニオン「秘めた愛」解説:難易度・楽譜・演奏のコツ

► はじめに

 

テレビドラマ「甘い結婚」の音楽として記憶に残るアンドレ・ギャニオン(1936-2020)の「秘めた愛(Love Theme)」。大人の音楽として、ピアノが印象的に響く名曲です。

本記事では、ドラマとの関わりから演奏のポイントまで、詳しく解説していきます。

 

► 作品内容について

‣ テレビドラマ「甘い結婚」との結びつき

 

「秘めた愛」が広く知られるきっかけとなったのが、1998年に放送されたフジテレビ系列のドラマ「甘い結婚」です。このドラマは、ギャニオンがオリジナル・サウンドトラックを担当しました。

実は、ギャニオンはこれより前に「Age, 35 恋しくて」のサウンドトラックを手がけて話題となっており、「甘い結婚」は彼が再び日本のドラマ音楽を担当した注目作品でした。ドラマの世界観とギャニオンの音楽が見事に融合し、「秘めた愛」は視聴者の心に深く刻まれる楽曲となりました。

オリジナル・サウンドトラックアルバムも発売され、ドラマファンだけでなく、ギャニオンの音楽を愛する多くのリスナーに届けられています。

 

甘い結婚 オリジナル・サウンドトラック

 

 

 

 

 

‣ 楽曲の魅力

 

Es-dur(変ホ長調)による優しい響きが特徴で、ピアノの温かい音色が、大人の落ち着いた雰囲気を醸し出します。楽曲の中で大きな仕掛けはなく、アルペジオ伴奏に乗せてシンプルなメロディが素直に歌われていきます。同一のメロディが繰り返されていくので、約4分30秒の楽曲を聴き終えたときに馴染みが出ている点にも注目すべきでしょう。

ギャニオンが手がけた数々のドラマ音楽の中でも、感動的で心に残る作品の一つとして、多くのピアノ弾きのレパートリーになりました。

 

‣ 演奏難易度

 

難易度レベル: 全音ピアノピースでいうとAに近いBランク程度

ブルグミュラー25の練習曲の中盤を無理なく演奏できるレベルの方であれば、取り組める難易度です。演奏時間は約4分30秒と長めですが、細かいパッセージや極端な難所は一切出てこないため、譜読みはスムーズに進めていけるでしょう。

レパートリー維持のハードルも高くないので、上級者がBGM演奏のレパートリーにするのもおすすめです。

 

演奏しやすい要素:

・ピアノ的な書法: 作曲者自身がピアニストであるため、手の自然な動きに沿った音の配置がされている
・繰り返しのパターン: 左手の伴奏形は基本的なパターンが多く、一度習得すれば安定して演奏できる

 

挑戦的な要素:

・左手の音域の広さ:やや広い跳躍がありますが、パターン化されているため練習次第で対応可能
・4:3のクロスリズム:右手と左手で異なるリズムを同時に演奏する箇所がある

 

► 演奏のコツ

 

冒頭の高音を柔らかく表現する

1-2小節の伴奏部分に出てくる高いG音は、無機質な響きになりやすい音です。他の伴奏音と同じ仲間として、柔らかい音色で溶け込ませるように弾きましょう。この配慮が、曲全体の優しい雰囲気を作り出す第一歩となります。

 

左手のアルペジオバランスを整える

左手のアルペジオでは、すべての音をよく聴いて、音量バランスに注意を払いましょう。特に無意識のうちに強くなりがちな音(折り返し地点の音など)を意識して抑えることで、流れるような美しいアルペジオが実現します。

 

和声の意外性を楽しむ

曲の中で、B♭7からE♭へ解決すると思いきや、E♭7へ進行する箇所が何箇所かあります。このちょっとした意外性を演奏者自身も楽しみましょう。また、E♭7から次の和音へのつながりを意識し、E♭7でⅠ度(主和音)で落ち着いたような段落感を持たないように注意します。音楽の流れが途切れず、次へと自然に続いていくイメージを大切にしましょう。

 

4:3のクロスリズムへの対処法

右手が3音、左手が4音という、3:2よりも複雑な比率のクロスリズムが数回登場します。この箇所では、数学的な正確性を追求するよりも、音楽的な流れを重視したあいまいな表現のほうが自然に聴こえます。

実践的な練習方法:

・まず片手ずつ完璧に弾けるようにする
・両手を合わせる際は、「拍の頭だけ合えばいい」と気楽に考える

このアプローチにより、機械的ではない、活き活きとした表現が生まれます。

 

右手の2声を明確に

右手の中でメロディと内声の2声を表現する箇所が多く出てきます。メロディラインが埋もれてしまわないよう、上声を意識的に浮き立たせながら演奏しましょう。

 

後半のクライマックスでの注意点

曲の後半、感情が高まる箇所では、かなり低い音が出てきたり、右手が厚めの和音を演奏したりします。ここで大切なのは、決して鍵盤を叩かないこと。唐突な表現を起こしてしまうと、音色が悪くなったり、流れが途切れたように聴こえてしまいます。音量は増しても常に美しい音色を保ち、品格のある表現を心がけましょう。

 

メロディの跳躍を音楽的に

メロディが1オクターヴ以上の上行跳躍をする箇所では、機械的に指を動かすのではなく、音程の距離を感じながら弾きましょう。内なる歌を意識することで、跳躍が音楽的な意味を持つようになります。

 

► おすすめ楽譜

 

一般に流通しているアンドレ・ギャニオンのピアノ譜は耳コピを元に作成されたものがほとんどですが、「ぷりんと楽譜」から入手できる下記の版は、原曲の雰囲気を比較的忠実に再現した内容となっており、実際に多くの方も演奏しているものです。レイアウトの読みやすさにも定評があるため、どの楽譜を選べばいいか迷っている方は、この版を手に取るといいでしょう。

» 秘めた愛

 

► 終わりに

 

アンドレ・ギャニオンの「秘めた愛」は、ドラマ「甘い結婚」を通じて多くの人々の記憶に刻まれた作品です。技術的な完璧さを追求するだけでなく、とにかく楽しみながら取り組んでみましょう。日頃クラシック作品に取り組んでいるときとは別の角度からの学びがあるはずです。

 

推奨記事:【ピアノ】アンドレ・ギャニオン「めぐり逢い」難易度と弾き方解説

 


 

► 関連コンテンツ

著者の電子書籍シリーズ
・徹底分析シリーズ(楽曲構造・音楽理論)
Amazon著者ページはこちら

YouTubeチャンネル
・Piano Poetry(オリジナルピアノ曲配信)
チャンネルはこちら

SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました