【ピアノ】モーツァルト「ピアノソナタ 変ホ長調 K.282 全楽章」演奏完全ガイド
► はじめに
曲の背景
このピアノソナタは、モーツァルトが1774年にザルツブルクで書き上げた初期ピアノソナタ群(K.279〜283)の一つです。これらの作品群は、その年の終わりに予定されていたミュンヘン旅行のために作曲され、モーツァルト自身の作曲・演奏技術を披露する目的がありました。
第4番は、同時期の他の4曲と比較すると様式が異なっており、実際には旧作を転用したか、あるいは他の作品よりも以前に書かれた可能性が指摘されています。
最大の特徴は、緩徐楽章であるアダージョで始まる点です。モーツァルトのピアノソナタの中で、第1楽章にアレグロを持たないのは、このK.282と「トルコ行進曲」で知られるK.331のみ。なぜアダージョで開始したのかは不明ですが、当初予定されていたアレグロ楽章が散逸したか、書き直しが間に合わなかった可能性が考えられています。
(参考文献:ピアノ音楽事典 作品篇 / 全音楽譜出版社)
演奏難易度と推奨レベル
この楽曲は「ツェルニー40番中盤程度」から挑戦できます。
本記事の使い方
この楽曲を、演奏のポイントとともに解説していきます。パブリックドメインの楽曲なので譜例も作成して掲載していますが、最小限なので、ご自身の楽譜を用意して読み進めてください。
各セクションごとに具体的な音楽的解釈を示していますので、練習の際に該当箇所を参照しながら進めることをおすすめします。
► 演奏のヒント
‣ 第1楽章
· 提示部:1-15小節
曲頭のダイナミクスの解釈:
・この楽章の原典版楽譜を確認すると、曲頭にダイナミクス指示が書かれていない
・モーツァルトの時代、第1楽章の冒頭にダイナミクス指示がない場合、基本的に f で弾き始めるのが慣例だった
・一方、このソナタは緩徐楽章で始まり、音遣いや曲調からしても穏やかな雰囲気
・そのため、p で弾き始める奏者も多く見られる
・4小節目にわざわざ p が書かれている点を考慮すると、曲頭から p で演奏することに疑問も残る
・かといって、後の時代の記譜における本当の f で始めると曲の雰囲気に合わないようにも感じられる
この問題の解決のヒントとして、「新版 モーツァルト 演奏法と解釈」(エファ&パウル・バドゥーラ=スコダ著)では次のように述べられています:
モーツァルトの f はとても大きな音から中くらいの音量にわたる幅広い範囲を含んでおり、同じようにモーツァルトの p は、豊かで歌うような mp からきわめて弱い p までを意味するのです。強弱はそれぞれの作品の枠組みの中で解釈されなければなりません。
この考え方を踏まえると、曲頭は後の時代の記譜における mf くらいのニュアンスで演奏すると、問題がスッキリと解決します。
フレージングと重心:
・曲頭のメロディの区切り方は何通りもの解釈ができるが、2小節2拍目までを一つのフレーズと見ることが可能
・この中での「重心(Schwerpunkt)」は2小節目の頭
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、1-2小節)

メロディの同音連打の解釈:
・丸印で示したように、メロディでEs音が3回響く
・この3つの音を同じように弾いてしまうと音楽的ではない
・重心である小節頭にある3つ目の音に一番重みが入るように弾く
・カッコで補足したクレッシェンドの松葉を想定してみる
譜例(1-3小節)

隠れシンコペーション:
・2-3小節を見ると、矢印で示した左手の音に厚みが入り、次の拍へ向けて薄くなっている
・隠れシンコペーションの一種
・このような表現を踏まえると、カッコで示したように2拍ごとのニュアンスをつけるといい
・矢印で示した部分を少し強調して、それをデクレッシェンド
・両手でこのニュアンスを表現する
・2小節2拍目もシンコペーションになっている
・この拍は曲頭からのメロディフレーズのおさめどころになっている
・したがって、わずかであっても強調しないほうがいい
バスラインと装飾音:
・4小節目からの4音単位の左手は、バスの響きを深く、それ以外は大きくならないように、立体的に演奏する
・5-6小節のトリルは、32分音符で入れるのが一案(5小節目の場合は、Fa Mi Fa Mi Fa Mi Re Mi)
ため息音型:
・7小節目のメロディに出てくる2音1組の音型は、始めの音よりも後ろの音のほうが控えめに聴こえるように
・同じため息音型はすべて同様に
譜例(8小節目)

ペダリングの工夫:
・8小節目では非和声音も交えながら音が動いているため、1-2拍目はノンペダルで弾くといい
・左手の5の指でバスが伸びているため、ノンペダルでも音響は希薄にならない
3-4拍目に必要なペダリングは、「少しの工夫で少し音楽が良くなるペダルの使い方」です:
・3拍目のペダルは、左手の1の指を連続させて演奏する上段のE音とF音をつなげるために必要
・4拍目のペダルは、音響の切れ際をブツっとさせないために使う
・消したいところでノンペダルで手での処理に頼ると、音響の消え際がバッサリいってしまう
・一方、ペダルをフワっと上げると、消え際がなめらかになる
さらに細かなことを言えば:
・2拍目の最終音から3拍目へ移るときに同音連打がある
・ここを完全につなげる解釈をするのであれば、16分音符一つ分、つなぎのペダルを入れるのもアリ
・Adagioのテンポなので十分に可能なペダリング
多声的な演奏:
・9小節目からの左手は、連桁(れんこう)を分断してバスを示してくれている
・「バス+それ以外」というように多声的に弾き分ける
・ただし、バスに書かれた f は「強く」というよりは、「重みを入れる程度」と考える
・2拍目以降は書かれていないが、明らかにsimile(同様に)
・また、バスから次の音へスラーをつけてしまわないように注意する
メロディのニュアンス:
・9小節3拍目のメロディに出てくるスタッカートは重くならないように
・3拍目頭のF音を弾いたエネルギーの中でついでに弾いてしまうイメージを持つ
譜例(11-12小節)

跳躍の処理:
・11小節2拍目へ移るときに左手が跳躍するため、釣られて跳躍直前の最後の音が雑にならないように注意する
・11-12小節の点線で示した部分は、つなげずに別にすると素材の切れ目を示すことができる
テンポ設定とアーティキュレーション:
・13小節2拍目は重くならないように。また、テンポを急いでしまいがちな部分なので気をつける
・13小節目と31小節目は対応する箇所だが、原典版ではスラーのかかり方が異なるため、区別して演奏する
音価の処理:
・14小節1拍目の左手は短くならないように
・余韻も含めて8分音符の長さになるように離鍵(リリース)する
ダイナミクスの移行:
・14小節目の頭には p が書かれている
・メロディが前の小節の流れから継続しているため、subitoにするとギクシャクしてしまう
・13小節4拍目の裏にデクレッシェンドを補って構わない
・31小節目から32小節目への移り変わりも同様に
譜例(15小節目)

解決音:
・15小節目の頭はフレーズの終わりなので、強くならないように
・2拍目の上段のEs音はスタッカートで切れるが、3拍目のメロディD音へのつながりは意識する
・このような、同じカタマリに属す音同士は、音自体は途切れても音楽自体は途切れないように注意する
・解決するD音のほうが大きくなってしまうと不自然
パッセージの軽さ
・15小節目に出てくる32分音符は極めて軽く
・音符一つおきの「Si Do Re Mi Fa So La」に軸があり、順次進行の音階として次の小節のメロディB音へ到達する
多くの楽曲で言える一般的事項
・ダイナミクスの変化がないまま、あるいは弱まって、音が増えたり音価が細かくなる場合は、より軽い表現になる
· 展開部:16-26
譜例(16-17小節)

運指やペダリングの参考
・16-17小節の運指やペダリングは、楽譜の書き込みを参考に設定する
最高音の表現:
・16小節2拍目裏のメロディB音は、16-26小節の塊の中で最も高い音
・2拍目からの1オクターヴ跳躍もあるため、音が抜けないようにしっかりと表現する
モルデント的な音型:
・18-19小節に見られる、モルデントを書き譜にしたような「行って返ってくる動き」に注意
・こういった音型は重くなりがち
メロディのつながり:
・20小節目の頭には32分休符がある
・ただし、19小節4拍目のメロディA音が、休符後のB音につながっていることを意識する
ダイナミクス:
・20小節目は左右の手の役割が別々
・したがって、f と p はクレッシェンドやデクレッシェンドを補わずにsubitoで表現する
ため息音型の変化:
・24-25小節のメロディでは、2音1組のため息音型が4回出てくる
・2度上行する形と下行する形が混ざっているため、それぞれのニュアンスの違いを感じながら弾く
・このようなため息音型では、後ろの音のほうが強くなってしまうと不自然
· 再現部+コーダ:27-36小節
回想と終結:
・34小節目からのコーダは、第1主題の素材を一部、回想的に引用している
・最終和音は、響きの切れ目を滑らかに切るためにペダルでサポートする
・手のみで行うよりも効果的
・最終小節には、この楽章で唯一の pp が出てくる
・他の p との違いを明確に出す
・モーツァルトは pp や ff をあまり使わないため、出てきた箇所にはきちんと目をつける必要がある
‣ 第2楽章
· 第1メヌエット
問いかけと応答の構造:
・1-4小節では、同型が反復されており、問いかけと応答の形になっている
・また和声的にも「トニック→ドミナント」に対して「ドミナント→トニック」となっている
・このような「問いかけと応答の形の強調」を読み取る
演奏のポイント:
・メロディに出てくるスタッカートは、あくまでも4分音符につけられたもの
・短くなり過ぎないように注意する
ハーモニーのバランス:
・4小節目の f からはハモリが出てくる
・右手で弾くメロディのほうが多めに聴こえるバランスを作る
・ハモリでは、同じ大きさで弾いてしまうと聴こえたいほうが聴こえにくい
譜例(9-10小節)

効率的な運指:
・9小節目のレッド音符で示した部分は左手でとることを推奨
・右手の跳躍がなくなり、ミスの確率を減らすことができる
・27小節目も同様に
新しい素材の導入:
・12小節目の f からは新しい素材が出てくる
・ダイナミクスも上がるため、ガラリと雰囲気を変える
演奏のポイント:
・ただの音の連続にならないように、半音で下がってきているメロディをよく聴きながら弾く
・このアルペッジョは極めて速く弾かないと拍の感覚が乱れてしまう
・半音の動きによるメロディは、この箇所に限らず、この楽章の特徴の一つ
subitoの p 表現:
・15小節目の p は、直前からの素材の継続性がないため、subitoで表現する
・直前にデクレッシェンドを入れないように
混合音価和音の扱い
20-21小節などに見られる、白玉(全音符や2分音符)と黒玉(4分音符や8分音符)が混在する和音の弾き方については、解釈のヒントを別記事にしています。
参考記事:【ピアノ】混合音価和音の弾き方:白玉と黒玉が混ざった和音の演奏法
第1メヌエットの締めくくり:
・30小節目の f からは第1メヌエットの締めくくりなので、明確に音楽を変える
・この楽章では、全体的にダイナミクスの対比表現が特徴的
· 第2メヌエット
全体的な注意点
・第2メヌエットに出てくる16分音符のカタマリは、すべて重くならないように軽く弾く
バスラインとメロディのバランス
33小節目からの左手
・何度も鳴らされる低いB音が強くならないように注意する
33小節目から34小節目にかけてのメロディ:
・Es音3連続は、均等の音量に並べてしまわないように
・一番重みが入るのは、当然34小節目の頭の音
・その直前のスタッカート付き16分音符が最も小さくなる
・音価の長さや置かれている拍が判断材料
16分音符と3連符の混在:
・37小節目からは16分音符と3連符が混在して出てくる
・テンポが変わってしまわないように、拍感を意識する
譜例(40-44小節)

多声的な伴奏形
・40小節3拍目から始まる伴奏形は、多声で捉える
演奏のポイント:
・何度も鳴らされるF音は強くならないように注意する
・バスラインを意識する
対比表現の理解(譜例のカギマーク参照)
表層的な対比:
・p / f のダイナミクス
・アーティキュレーションの変化
深層的な意味:
・音遣いの方向性(閉じる/開く)が対話的構造を形成
・古典派的な「問いと答え」の構造を内包
・軽さ( p )と歌唱性( f )の対比が二重の性格付けを実現
・p の部分では、メロディにスタッカート混じりのニュアンスがとられている
・音の方向としては、左手と右手が閉じていく
・それに対して f の部分では、メロディがスタッカートはなく、音の方向としては、左手と右手が開いていく
このような対比を読み取れたら:
・ただ単にダイナミクスやアーティキュレーションを弾き分けるだけでなく
・p の部分では「軽さ」を重視し、f の部分では「ウタ」を重視すると考えることも可能
休符を挟んだメロディの連続性:
・47小節2拍目では両手共に休符になる
・それを挟んでも、メロディのF音同士のつながりは忘れない
新たな展開の素材:
・48小節3拍目からは新たな展開
・ここから出てくる「16分音符+付点4分音符」の素材は、47小節1拍目が出所だと考えていい
演奏のポイント:
・スラーを活かして、16分音符に重みを入れる
・付点8分音符は16分音符よりも少し小さく聴こえるように弾く
譜例(53-57小節)

ダイナミクス記号から読み解くフレーズ構造
・55小節目のfで始まる16分音符に注目する
・この音型は見た目としては56小節3拍目のpによる16分音符と類似しているが、楽曲構造上は全く異なる役割
カギマークで示した構成から分かるように:
・f の16分音符は直前の音楽的文脈に属している
・後続の p の16分音符群とは別のグループを形成している
演奏上の実践ポイント:
・55小節2拍目では間を取らず、流れを維持する
・56小節1拍目の4分音符までを一つのフレーズとして弾き通す
・フレーズの切れ目となる56小節2拍目で、初めてわずかな時間を使う
・このように演奏することで、楽譜に記された構造的意図を聴き手に伝えることができる
‣ 第3楽章
· 提示部:1-39小節
基本モチーフの提示:
・曲頭のアウフタクトの8分音符は軽く、直後の付点4分音符に重みを入れる
・この形は楽章を通じて何度も出てくるため、同様に演奏する
重要ポイント:
・オクターヴ跳躍する特徴に着目すべきで、楽章のこの後の展開で広く応用されていく
・跳躍の多い運動的なメロディになっている
リズムの関連性
・1-2小節の左手は、拍がズレているだけで、メロディのリズムを引用している
譜例(3小節目)

3小節目の装飾音の扱い:
・奏法譜で示したように、実際の記譜で装飾音符で記されている箇所は「16分音符」として演奏する
・当時の記譜習慣として、拍頭の非和声音は装飾音符で書くことが一般的だったと音楽学で明らかになっている
・譜例の箇所に限らず、このような装飾音は同様に16分音符で演奏していく
メロディとのハモリ:
・3-4小節の左手はただの伴奏ではなく、メロディとハモることで和声を作る役割も兼ねている
・ハモリのバランスをとり、左手はやや加減する
譜例(9-10小節)

アルベルティ・バスの登場
・9小節目から出てくる高速アルベルティ・バスは、各拍頭のバスの音を響かせて、それ以外の音は軽く弾く
アルベルティ・バスを音楽的かつ速く弾けるようになる方法は、【ピアノ】アルベルティ・バス:演奏と分析両面からのアプローチ という記事を参考にしてください。
速い音型のコツ:
・14小節目のメロディに見られる「2音1組の音型」を速く弾くコツは、1音1音を頑張って弾こうとしないこと
・スラー始まりの音を打鍵したそのアクションの中で、もう一つの音もついでに弾いてしまうイメージ
・2音2アクションではなく、2音1アクションで弾くと音楽的かつ楽に弾ける
「通り過ぎるだけ」という音楽表現:
・15小節2拍目は「つなぎ」なので、サラリと経過するように軽く弾く
・強く弾いたりゆっくりしたりしてしまうと意味を持ってしまい、ただの経過ではなくなってしまう
譜例(16-21小節)

p と f の対比
・16小節目の p の部分は、メロディのアーティキュレーションや伴奏部分のリズムから判断しても、極めて軽く弾く
・20小節目からの f の部分との対比を明確につける
軽く聴かせるポイント:
メロディ部分:
・スラー終わりの音が大きくならないように、きちんとおさめる
・スタッカートの音が大きくならないように
・多少の重みが入るのはスラー始まりの音のみ
伴奏部分:
・8分音符が大きくならないように、かつ、切って弾く
・4分音符の長さを正確に守り、8分休符をきちんとしたタイミングでとる
・この伴奏部分は曲頭のリズムパターンがずれたもの
・16-19小節の左手も、拍がずれているだけで、曲頭のメロディのリズムを引用している
・このリズムが重くならないように注意する
アーティキュレーションを示した連桁の分断
16小節目や18小節目のように「3音ひとカタマリ」のところ
→ 3音とも「連桁(れんこう)」がつながれている
17小節目や19小節目のように「スタッカート+2音ひとカタマリ」のところ
→ スタッカートの音とスラーの音との間の連桁が分断されている
これは、アーティキュレーションを示した連桁の分断と言えます。分断しなくても意味は同様ですが、以下のような作曲家の意思でこのように分断することもあります:
・楽譜から伝わる印象を重視したい場合
・よりアーティキュレーションの意図が分かりやすくなることを求める場合
運指の工夫:
・19小節目の左手の最後の和音は、右手でとることを推奨
・そうすることで、左手の急激な跳躍をなくすことができる
・80小節目も同様に
譜例(24-27小節)

フレーズ解釈の多様性
・24-27小節は、16-19小節の変奏
・左手の4分音符を音価ぶん伸ばし、短くならないように注意する
ここでは、以下の2通りのどちらの解釈も可能です:
・1小節単位で考えて1×4で解釈する
・2小節単位で考えて2×2で解釈する
メロディラインの運動を考えると:
・「2小節ひとかたまりの下降するメロディライン」が装飾されているだけだと分かる
・したがって、2×2でとることもできる
・1小節ごと「問→応 問→応」のように、「問いかけ→応答」が2回繰り返されていると考えるのもアリ
このような何パターンかのグルーピングに解釈できるフレーズでは、どのように捉えるのかによって、出てくるニュアンスも変わります。
譜例(30-35小節)

運指の参考
・30-35小節の運指は、楽譜の書き込みを参考に設定する
テンポキープ:
・36-39小節は急ぎやすい箇所なので、テンポキープを心がける
・右手に一生懸命になり過ぎず、左手の8休符混じりのリズムを安定させることがポイント
· 展開部:40-61小節
譜例(40-43小節)

従の声部も歌わせる:
・40-43小節の下段で演奏される声部は、上段で演奏されるメロディとハモリになっている動き
・「従」の役割で「主」ではない
・しかし、メロディックなラインになっている
・「主でないこの声部もウタにする」という意識を持って音型に沿った多少のニュアンスをつける
多声的な音型の処理:
・42-43小節の右手は、多声になっていることを踏まえる
・何度も鳴らされるC音が大きくなってしまわないように注意する
・それ以外の動く音をピックアップしていくとメロディになっている
・これらのC音は、リズムを細分化する役割と、ハーモニーを分からせる役割を持っている
p と f の交替:
・47小節目から続く p と f の交替の連続は、断片的な素材の集合体
・したがって、クレッシェンドやデクレッシェンドを入れずに、すべてsubitoで表現する
反行と対比:
・56小節目からは、両手の反行を意識しながら弾く
・56小節目のレガートのメロディに対して、57小節目はスタッカートなので、この差が際立つように
・特にスタッカートの部分を短めの音価で軽く弾く
・59小節目にキメがあるが、ここまでノンストップで遅くせずに入ることで、直後の休符の効果が際立つ
· 再現部:62-102小節
譜例(93-96小節)

運指や装飾音の奏法
・93-96小節の運指や装飾音の奏法は、楽譜の書き込みを参考に設定する
譜例(96-99小節)

体験談:目から鱗の運指変更
・98小節目の丸印で示したのG音を、3の指ではなく4の指で弾くようにしたら、一気に弾きやすくなった
どんな試行錯誤があったのか:
・ここでは、Allegroのテンポでメロディを弾くとなると、誰が弾いても概ね同じ運指を使うことになる
・注目して欲しいのは、丸印で示したG音
・直前にもG音が出てくるが、それは3の指で弾いているので、同じようにこのG音も3の指でとろうと思うのが普通
・しかし、少なくとも筆者にとってはこの運指はやりにくく感じた
・筆者はそれほど手が大きいわけではないので、3の指でとるとその後がやや弾きにくい
・1と2の指のあいだを大きく開かないといけなくなり、99小節頭のH音を3の指でとりにくくなる
・「やりにくいな」と思いながらも、このG音はずっと3の指で弾いていた
・あるときに4の指で弾いてみた途端、一気に弾きやすくなって目から鱗が落ちる思いだった
ここで言いたいのは、「わずかに運指を変えるだけで、驚くように弾けるようになる可能性がある」ということです。
楽章の終わり方:
・曲の最後はゆっくりにするとしても少しだけにすることを推奨
・サラリと終わらせる
・楽章が非常に小規模であることと、軽快な曲想でそのまま終わることを踏まえた判断
► 終わりに
緩徐楽章で始まるという珍しい構成を持つこの作品は、モーツァルトの初期ソナタの中でも独特の魅力を持っています。楽譜から読み取れる情報をもとに、自分なりの音楽表現を探求してみてください。
モーツァルトの作品は、一見シンプルに見えても、深く掘り下げるほど新たな発見があります。
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