【ピアノ】チャイコフスキー作品の演奏ポイント解説集:譜例付き実践ガイド
► はじめに
本記事では、チャイコフスキーのピアノ作品における実践的な演奏アドバイスをまとめています。各曲の重要なポイントを、譜例とともに具体的に解説していきます。
この記事は随時更新され、新しい作品や演奏のヒントが追加されていく予定です。
► 四季 12の性格的描写
‣ 6月 舟歌
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、11-12小節)
12小節目のカギマークをつけた箇所は、1声部だけの「Solo」になります。
Soloというのはそれだけで個性的な音楽表現なので、分散和音ですがノンペダルで1本の線として聴かせましょう。
ダンパーペダルを用いると、パッセージが和音化されてしまいます。
あるパッセージで「ダンパーペダルを使うかどうか」を判断する基準は:
・「濁ってしまうかどうか」というのは第一段階
・「パッセージが和音化されてしまっていいのか」というのが第二段階
この第二段階目まできちんと考えることが重要です。
‣ 10月 秋の歌
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、20-21小節)
フェルマータ(この楽曲いちばんのヤマ)へ向かって、少しだけ rit. をかけてテンポを広げるのが慣例。
一方、rit. をやり過ぎるとフェルマータの表現が活きなくなってしまい、書かれている意味がなくなってしまいます。
フェルマータというのは、「一時停止」という意味がありますが、その直前のテンポが広がり過ぎると「一時停止感」は生まれません。
あらゆる作品で、こういったメロディの頂点についているフェルマータが登場しますが、「フェルマータを活かしたいのであれば rit. のかけ過ぎに注意する」ということを頭の隅に置いておきましょう。
音楽表現というのは単独で把握するものではなく、全てつながっているのです。
‣ 11月 トロイカ
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、58-59小節)
58小節目までは左手にメロディがありましたが、59小節目からは右手にメロディが戻ってきます。そこで、戻ってきたことをしっかりと聴衆に伝えるために、丸印をつけた音をややはっきり目に演奏するのが得策。
「メロディの入りを強調する」と聴衆の耳がそこにいくので、その後は全ての音をゴリゴリ弾かなくても聴衆はそのラインを追ってくれます。「カクテルパーティ効果」と言います。
「パーティ会場などの騒がしい場所でも、自分が聞こうと意識すれば対象人物の声を聞き取れる」というところからきている用語。
この聴覚上の錯覚は、ピアノ演奏でも大いに応用できます。
► 終わりに
チャイコフスキーの作品には、独特の音楽語法と表現技法が詰まっています。
本記事では、実践的な演奏アプローチを紹介していますが、これらはあくまでも一つの解釈として捉えていただければと思います。
今後も新しい作品や演奏のヒントを追加していく予定ですので、定期的にご確認いただければ幸いです。
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