【ピアノ】ドキュメンタリー映画「ピアノマニア」レビュー:世界的調律師の職人技
► はじめに
本作は、実在のピアノ調律師、シュテファン・クニュップファーの仕事ぶりを1年間にわたって追いかけたドキュメンタリーです。ただの調律作業の記録ではなく、音楽芸術の完成に不可欠な「見えない職人技」を描いた作品として、音楽ファンのみならず、あらゆる創造的な仕事に携わる人々の心を打つ内容となっています。
・公開年:2009年(オーストリア、ドイツ)/ 2012年(日本)
・監督:リリアン・フランク、ロベルト・シビス
・ピアノ関連度:★★★★★
※DVDは現在購入しにくい状態となっていますが、TSUTAYA DISCASなどでは手軽にレンタルできます。
► 見どころ
‣ 職人の日常と苦悩
調律、整調、整音といった専門的な作業はもちろん、「弦が切れる夢を見て心配になる」といった職業ならではのエピソードが散りばめられています。この人間味あふれる描写が、技術者としての真摯な姿勢をより際立たせています。
‣ 世界的ピアニストたちとの対話
ピエール=ローラン・エマールを中心に、アルフレート・ブレンデル、ラン・ランなど、世界的なピアニストたちの細かな要求に応える様子が克明に記録されています。「ブレンデルは照明が暗いほうが好き」などといった、関わっているピアニストに関する興味深いエピソードも随所に登場します。
‣ 緊張感あふれる録音現場
特に圧巻なのは、ブレンデルのバッハ録音の各種場面。直前に発生したピアノ交換への対応シーンや、録音開始後も次々と寄せられる要求に応え、録音スタッフと綿密にやり取りしながら会場を走り回る姿からは、プロフェッショナルの気迫が伝わってきます。録音直前の部品トラブルへの対処など、まさに「ライブ感」あふれる緊迫した場面が続きます。
‣ 活発な議論と芸術的探求
著名なピアニストとこだわりの強い調律師による、見応えのある活発な議論が本作の大きな魅力です。芸術家特有の抽象的な表現を、楽器の音として具現化するため、部品を解体したり、時にはピアノそのものを入れ替えたりする様子は、まさに音楽創造の現場そのものです。
► 誰におすすめか
ピアノを弾く方には必見の作品です。普段何気なく弾いている楽器が、どれほどの情熱と技術によって支えられているかを知ることができます。また、音楽愛好家にとっては、コンサートや録音がいかに多くの人々の献身によって成り立っているかを実感できる貴重な機会となるでしょう。
► 終わりに
調律師のシュテファン・クニュップファーが弾くピアノバラードをBGMにエンディングへと流れていく余韻も美しく、「ピアノマニア」というタイトルに偽りなし。音楽の舞台裏に秘められた情熱と献身を描いた、心に残るドキュメンタリー映画です。
※DVDは現在購入しにくい状態となっていますが、TSUTAYA DISCASなどでは手軽にレンタルできます。
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