【ピアノ】ノーマン=デマス「フランス・ピアノ音楽史」レビュー

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【ピアノ】ノーマン=デマス「フランス・ピアノ音楽史」レビュー

► はじめに

 

「フランス・ピアノ音楽史」というタイトルから、一般的な音楽史の教科書を想像される方も多いかもしれません。しかし、本書は歴史的事実の羅列ではなく、ピアノ音楽史、演奏解釈、楽曲分析を総合的に取り入れながら、著者ノーマン=デマス(1898-1968)の深い音楽観が語られる一冊です。

原題は「フランス・ピアノ音楽:その演奏に関する注釈付きの概論」であり、この原題のほうが本書の内容をより正確に表現していると言えるでしょう。

 

・訳 : 徳永隆男
・出版社:音楽之友社

・初版:1964年
・ページ数:214ページ
・対象レベル:中級~上級者

 

フランス・ピアノ音楽史 著:ノーマン=デマス 訳:徳永隆男 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

► 内容について

‣ 著者の視点と特色

 

著者のノーマン=デマスは元英国王立音楽院の作曲教授であり、その専門性が本書の随所に表れています。楽曲の成り立ちという作曲家ならではの視点からの解説が印象的で、例えばラヴェルの作品におけるリストからの影響や、ラヴェルのソナチネにおける理解に困る記譜の理由などについて、鋭い意見を提供しています。

 

‣ 構成と内容

 

本書はフランスという地域に限定している代わりに、時代的な広がりは非常に広範です。クープランなどのバロック時代から、メシアンやジョリヴェなどの20世紀の作曲家まで、歴史順に記述されています。

また、フランス作曲家同士の特徴の比較なども織り交ぜられており、フランス音楽の流れを立体的に理解することができます。

 

‣ 目次構成

 

・序文、緒論 解釈について
・I~II章:先駆者たち・創設者たち
・III~IV章:フランクの流儀(第I期、第II期)
・V章:偉大なる流儀の頂点
・VI章:フォーレの流儀
・VII章:ロマン主義と印象主義
・VIII~IX章:20世紀(第I期、第II期)
・X章:偉大なる流儀の復興

「挿話 サロンなるもの」という章で、あまり知られていないながらも重要な女流作曲家・ピアニスト「シャミナード」について解説されている点も興味深いところです。

 

‣ 注目すべき章:「緒論 解釈について」

 

本書を読むうえで特に重要なのが「緒論 解釈について」の章です。ここでは、ルバートについて、解釈について、分析の必要性についてなどが語られており、ノーマン=デマスの音楽観が明確に示されています。この章を理解したうえで主要本編を読むことで、内容の理解がより深まるでしょう。

 

► 終わりに

 

「フランス・ピアノ音楽史」は、コンパクトなページ数ながらもタイトル以上に豊かな内容を持つ書籍です。歴史的知識と演奏・分析実践を結びつける著者の視点は、フランス・ピアノ音楽を学習する方にとって学ぶことが多いでしょう。

 

フランス・ピアノ音楽史 著:ノーマン=デマス 訳:徳永隆男 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 


 

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