年代順:ピアノ関連映画ライブラリー
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本ライブラリーでは、数多く存在するピアノ関連映画の中から、音楽的演出や表現技法の観点で特に興味深い作品を厳選して紹介しています。網羅的なリストではなく、音楽と映像の関係性に焦点を当てた選択的なコレクションです。
ほとんどの映画には別記事による詳細レビューリンクがついているので、必要に応じて参考にしてください。
この記事は随時更新されていく予定です。
► ライブラリー
‣ 1930-1970年代
· 楽聖ベートーヴェン
・公開年:1936年(フランス)
・監督:アベル・ガンス
・ピアノ関連度:★★★☆☆
ベートーヴェンの生涯を描いた112分の伝記映画であり、彼の人間的な苦悩と音楽の関係性が、フィクションを交えながらも情感豊かに描かれています。ベートーヴェンの心情とリアルタイムにリンクしたピアノ曲の表現変化など、注目すべき音楽演出が多い一作です。
· 楽聖ショパン
・公開年:1945年(アメリカ)/ 1949年(日本)
・監督:チャールズ・ヴィダー
・ピアノ関連度:★★★★★
ショパンの楽曲が、原曲はもちろん、オーケストラアレンジもされて、物語の進行とともに効果的に配置されています。有力なショパンの音楽史と異なる部分もありますが、ジョルジュ・サンドとの恋愛関係や、エルスナー教授との師弟愛も描かれており、音楽だけでなく人間ドラマとしても見応えがあるでしょう。
· 愛の調べ
・公開年:1947年(アメリカ)/ 1949年(日本)
・監督:クラレンス・ブラウン
・ピアノ関連度:★★★★★
ロベルト・シューマン、クララ・シューマン、ブラームスという音楽史上の偉人たちの愛と音楽の交錯を描いた感動作です。外的に付けられた音楽は一切登場せず、全曲を状況内音楽で構成するという手法により、音楽と映像が真に一体となった表現を実現しています。
· 愛情物語
・公開年:1956年(アメリカ)/ 1956年(日本)
・監督:ジョージ・シドニー
・ピアノ関連度:★★★★★
状況内音楽と状況外音楽の巧妙な使い分け、感動的なラストシーンの音楽演出など、ピアノ音楽の効果的な使われ方がされています。実在のピアニスト「エディ・デューチン」の波乱に満ちた人生を描いた、人生の喜怒哀楽と家族愛を深く描き出した名作。
· チャイコフスキー
・公開年:1970年(ソビエト連邦)/ 1970年(日本)
・監督:イーゴリ・タランキン
・ピアノ関連度:★★☆☆☆
第一部と第二部に分かれた157分の大作であり、音楽的にも注目すべき点が多数。特に第一部にピアノ関連のシーンが多く見られます。音楽の充実度とともに見応えがあり、過度な脚色もないため、価値ある一作としておすすめできます。
‣ 1980-1990年代
· アマデウス
・公開年:1984年(アメリカ)/ 1985年(日本)
・監督:ミロス・フォアマン
・ピアノ関連度:★★☆☆☆
音楽映画ならではの、状況内音楽と状況外音楽の巧妙な使い分け、楽曲の有機的な反復、音響による伏線など、様々な音楽や音声演出技法が効果的に使われています。鍵盤音楽の登場は限定的ですが、鍵盤楽器を通じてモーツァルトの天才性を表現する場面や、楽しげに演奏活動をする場面は印象的で、ピアノ学習者にとってもおすすめできる一作です。
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· 恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ
・公開年:1989年(アメリカ)/ 1990年(日本)
・監督:スティーヴ・クローヴス
・ピアノ関連度:★★★★★
ただピアノが登場する映画というだけなく、音楽そのものが物語を語る映画です。状況内音楽と状況外音楽を絶妙に使い分け、登場人物の心情や関係性の変化を音で表現する手法など、面白い音楽演出が豊富に確認できます。ラウンジで長年ピアノデュオとして活動してきたベイカー兄弟の物語。
· 不滅の恋 ベートーヴェン
・公開年:1994年(アメリカ)/ 1995年(日本)
・監督:バーナード・ローズ
・ピアノ関連度:★★★☆☆
物語構造と呼応している音楽の使い方、ベートーヴェンの難聴を表現する音響効果など、音楽や音声面での工夫も見られます。ベートーヴェンの死後に発見された「不滅の恋人」宛ての謎の手紙をめぐり、親友のアントン・シンドラーが宛先の女性を探し出す旅を描いた作品です。
· 海の上のピアニスト
・公開年:1998年(イタリア)/ 1999年(日本)
・監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
・ピアノ関連度:★★★★★
エンニオ・モリコーネによる美しい音楽と、ティム・ロスが演じる1900の繊細な演技が見事に調和しています。音楽を通じて人と人とがつながるさまを美しく描いており、ピアノに親しんでいる我々に深い感動と気づきを与えてくれる映画です。
‣ 2000年以降
· ピアニスト(La Pianiste)
・公開年:2001年(フランス)/ 2002年(日本)
・監督: ミヒャエル・ハネケ
・ピアノ関連度:★★★☆☆
音楽と人間心理の複雑な関係を描く作品です。音楽の使用と不使用を対比させることで、主人公の内面の分裂を表現する手法は見事であり、音楽が持つ力と、それを失った時の空虚さを再認識させてくれるでしょう。
· ショパン 愛と哀しみの旋律
・公開年:2002年(ポーランド)/ 2011年(日本)
・監督:イェジ・アントチャク
・ピアノ関連度:★★★★★
ショパンの生涯を描いた本作は、ピアノ曲の使い方において興味深い工夫がなされています。特に、エチュードを場面転換に挿入する手法や、特定の曲をキャラクターのテーマとして一貫して使う手法は、音楽と物語を効果的に結びつけています。
· 敬愛なるベートーヴェン
・製作国:イギリス、ハンガリー
・公開年:2006年(カナダ)/ 2006年(日本)
・監督:アニエスカ・ホランド
・ピアノ関連度:★★☆☆☆
ベートーヴェンの晩年に焦点を当て、架空のコピスト(写譜師:作曲家が書いた楽譜を浄書する)であるアンナとの交流を通して、天才作曲家の内面世界と第九交響曲誕生の裏側を描いた作品です。ベートーヴェンの楽曲がどのように物語と融合しているのか、また映画全体の音楽的構造について掘り下げていきます。
· ラフマニノフ ある愛の調べ
・公開年:2007年(ロシア)/ 2008年(日本)
・監督:パーヴェル・ルンギン
・ピアノ関連度:★★★★★
ラストシーンへつながる音楽使用の仕掛けが大きな特徴を持つ一作。また、演奏シーンが単に「美しい音楽を聴かせる場面」ではなく、具体的な作品を通じて、ラフマニノフの内面や人間関係、創作の苦悩を映し出す重要な役割を果たしている点も特徴的です。
· パリに見出されたピアニスト
・公開年:2018年(フランス)/ 2019年(日本)
・監督:ルドヴィク・バーナード
・ピアノ関連度:★★★★★
特に状況内音楽と状況外音楽の絶妙な使い分けの多様さは、数ある音楽映画の中でもバラエティに富んだものです。音楽演出面はもちろん、原題:Au bout des doigts(この指で未来を拓く)というタイトルが示すように、ピアノという楽器と向き合うことで開かれる未来の可能性を、この映画は美しく描き出しています。
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