【ピアノ】音楽生活を最適化する6つの「減らす」テクニック
► はじめに
音楽学習において、「増やす」ことばかりに注目しがちですが、実は「減らす」ことこそが、より質の高い音楽環境づくりのコツです。
本記事では、ピアノ音楽生活をより豊かにするための、直感に反するかもしれない「減らす」アプローチを6つご紹介します。
► A. 学習環境の整理
‣ 1. 音楽書籍の「取って置く」と「手放す」の基準
本棚に音楽書籍が雑多に増えすぎた状態で放置している場合は、減らしてスッキリさせてみるのもアリ。「厳選する」と言ってもいいですね。
筆者が取り入れている整理法は、大きく2段階です:
① 最初に、電子書籍では手に入らないものを残す
② その中でも、辞書的な使い方ができるものと、お気に入りのものを残す
①についてはOKだと思うので、②について解説します。
紙でしか読めない書籍のみを残したら、まず、残った書籍をずらっと並べて、辞書的な使い方ができるものと、お気に入りのものを仕分けしてください。
「辞書的な使い方ができるもの」というのは例えば:
・楽式や和声などの教本
・ピアノの構造について書かれた書籍
・ピアノ音楽史、鍵盤音楽史について書かれた書籍
これらをはじめとした、気になったときにちょくちょく開き直して辞書を引くかのように調べ物で活用する書籍。
こういったものは一度読んだらもう読まないタイプの資料ではないので、積極的に残しましょう。
「読み直すもの」というよりも、「開き直すもの」ですね。
一方、辞書のような使い方をしない書籍、例えば、一度読むと満足する読み物的な色が前面に出ているようなものなどは手放して減らしてみてください。
このようなタイプの書籍は、読んでいて楽しかったりためになることも多いですし、読まない方がいいと言っているわけではありません。
本棚をスッキリさせたいのであれば、あえてずっと残しておくタイプのものではない、ということなのです。
‣ 2. ピアノ周りの不要アイテムを一掃する5分メソッド
ピアノの周りをスッキリさせるためにいくつかの方法を試したうえで、有効に感じた簡単なやり方を解説します。
ほんとうに簡単です。
ピアノの上にある二つ以上ある同じものを手放して、一つにしてください。
同じ役割のものが複数放置されている散らかり方、どこのピアノ見てもよくあるのです。
例えば:
・シャーペンがふたつある
・割れた消しゴムがいくつもある
・アナログとデジタルのメトロノームが両方ある
・クリップがいくつもある
・使い終わった月の月謝袋まである
こういった、一つで済むのにも関わらず複数置いてあるものは、必要な一つを残して全て整理してしまいましょう。
加えて、ピアノの上への楽譜の平積みを辞めることですね。いつも使っている楽譜だけは出したままにしておき、それ以外は片付けてください。
このように整理すると、ピアノの周りがスッキリするだけでなく、唯一出したままにしている楽譜が使いやすくなります。
モノが多いというのは、モノが汚れを隠しているということ。加えて、そのモノの上にさらにホコリが被ります。想像しただけで整理したくなるはずです。
毎日使いやすくするために出したままにする楽譜のみを例外とし、他は思い切って整理してみましょう。新しいスッキリした環境で良い学習ができることでしょう。
► B. 音楽学習の効率化
‣ 3. 残したい作品を見極め、手放す作品を決める
音大生の頃、それまで取り組んできた作品を改めてリスト化してみたのですが、忘れてしまっていただけで:
・レパートリーとして残せそうな作品
・レパートリーとして残したいと思い直した作品
が意外とあり、驚いたものでした。
例えば、フォーレなどの短い小品はやりっぱなしになってしまっていましたが、当時、小さな空間で演奏する機会が続いていたため、いくつかレパートリーに戻しました。
他にも、その時の自分自身の状況と照らし合わせると必要になってくる作品というものがあったのです。
次に取り組み始めた作品に夢中になるあまり一旦楽曲を寝かせてしまうと、意外と忘れてしまうものなのだと感じました。そして、それが積み重なっていく。
取り組んだ作品全てをレパートリーにするというよりは:
・その中でも残していきたいものを選んでおき
・「演奏するときになったら、少しさらえば戻せる」という状況で意識下へ置いておく
このようにするといいでしょう。
我々にはキャパシティがあるので、いっそのこと「この作品は残さない」と決断することも必要です。
「決断」とは、漢字の通り「手放すと決めること」。
手放すと言っても「今現在は」のことであり、必要な時期になったら戻せばいいので、深刻に考える必要はありません。「忘れていた作品」と「手放すと決めた作品」は全くの別物です。
いったん、楽曲を整理してみましょう。
‣ 4. 効率的な音楽用語の覚え方は、情報源を減らすこと
音楽用語は必ずしも覚えておかなくても出てきたら調べればいいのですが、本当の基本的なものだけは把握しておいた方がいいでしょう。
毎回全部の用語を調べると時間がかかり過ぎます。また、本当の基本的な用語は、音楽をやっている人物と話すときの会話の中で当然のように使われるからです。
「効率的な音楽用語の覚え方」についてですが、「できるだけ情報源を絞って減らしておく」のがポイント。つまり、いろいろな参考書から情報をバラバラにとってくるのではなく、一冊の参考書からとってくるということ。
載っていない用語は別のもので調べるとしても、2〜3冊を限度としておく。
そうすれば、情報の出どころが整理されて「整合性を保った学習」をしていくことができます。
よくありがちなのが、 以下のような例:
・楽曲の中に「agitato」という用語が出てきた
・ネットで調べたら「いら立って」と書かれていたので納得した
・後日、別の楽曲の中にまた「agitato」が出てきた
・忘れてしまっていたのでネットで調べたら、そのサイトには「激しく」と書かれていた
こんなやり方では統一感がないので記憶に定着せず、このようなグルグルした作業をずっと繰り返すことになります。
効率が悪い学習方法の代表例。
忘れてしまって調べても、毎回「激しく」などといつも同じ意味で出てきてくれるように「自分が決めた同じ参考書を参照する」ということを徹底しておけばいいのです。
その都度調べて、その都度「検索エンジン上位任せの異なるサイト」を参照してしまう学習法だけは今すぐに辞めましょう。
そういった学習法が有効なのは、とにかく幅広く概略のみをつかむような場合です。音楽用語をしっかりと身に付けていく場合には適しません。
筆者自身は「ニューグローブ世界音楽大事典」をバイブルにしていますが、自身が使いやすいと思うものであれば基本的にどの参考書や辞典でも構いません。
黄色い楽典と言われる有名な参考書である、「楽典―理論と実習 著 : 石桁真礼生 他 / 音楽之友社」は、音楽用語の掲載量自体はかなり少ないのですが、本当によく出てくる定番どころは押さえられているので、入門者や初心者の方にはおすすめできる一冊です。
・楽典―理論と実習 著 : 石桁真礼生 他 / 音楽之友社
‣ 5. 演奏でも創作でも、一つ入れたら一つ減らす
日頃の練習で新しい練習方法などを取り入れることもあると思いますが、原則、新しい要素を一つ入れたら既存のものを一つ減らしてください。
そうしないと、あらゆることが中途半端になってしまいます。
ピアノ音楽の作曲や編曲でも同様。
ある程度出来上がってきた後に新しい要素をさらに一つ入れるのであれば、同時に一つ何かの要素を取り除かないと、色々な内容が存在し過ぎてどこを聴いていいのか分からなくなっていきます。
よく、整理の達人の方々が「1個買ったら1個捨てないと、モノが増えていく」などと発言していますが、これは楽器練習や音楽創作にも言えること。足したら引かないと、やることが増え過ぎたりやたら複雑になったりしてろくなことありません。
ありとあらゆる場面において、「減らし過ぎ」から恩恵を受けることはあっても、「増やし過ぎ」で良い方向へ向かうことは滅多にありません。
自身の音楽周辺のことを見直して、「増やしたら減らす」の視点を持って一度整理してみましょう。
‣ 6. 辞めたい習慣の辞め方
音楽学習において辞めたい習慣の一つや二つ、あると思います。
例えば、「ちょっと譜読みしては曲を変えて…」を繰り返してしまうことなんかは典型的なもの。
多くの作品へ触れることで、譜読みのスピードが上がったり知っている作品が増えたりと、あらゆる恩恵を受けることができます。
一方、新しく腰を据えて取り組む作品を前に浮気ばかりしていては、一向に先へ進めません。
このような辞めたい習慣を結構あっさりと辞められる方法があります。
辞めたい習慣の原因となっているものは、ものすごくアクセスが面倒臭いところへ片付けてしまってください。
一旦選曲をして「これでいく」と決めたのであれば、浮気しそうになる楽曲の楽譜を:
・段ボールへ入れて押し入れの奥へしまうか
・実家へ送ってしまう
ものすごくアクセスが面倒臭いところへ片付けてしまうと、よほどマメな人でない限り、取りに行かなくなります。
人間、物件のロフトへすら面倒でのぼらなくなるというくらいなので、段ボールの下の方に入っていて、それも押し入れの奥などの取り出しにくいところに置いてあったら、十中八九いじらなくなります。ロフトへあげてしまうのもいいですね。
こういった片付けてしまうやり方は、選曲以外にもあらゆる時に使えます。
例えば、本番を前に集中して取り組まなくてはいけない作品があるのにポピュラーピアノの曲集ばかりいじってしまうのであれば、本番が終わるまでその曲集をアクセスが面倒臭いところへ片付けてしまえばOK。
人間は基本的に面倒臭がりだということを利用して、辞めたい習慣を上手く辞めてしまいましょう。
► 終わりに
本質的な音楽学習と創造性を妨げる不要な要素を取り除くことで、音楽生活はより充実し、クリエイティブになるでしょう。
これらの方法を少しずつ実践し、自分に合った音楽学習スタイルを見つけてください。
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