【ピアノ】追っかけの楽曲分析:J.S.バッハとドヴォルザークの例
► はじめに
楽曲分析において、メロディの模倣技法は重要な要素の一つ。模倣技法には、厳格な形式から、本記事で扱うような部分的な追っかけまで、様々なレベルのものが存在します。
本記事では、特に初期の分析学習に適した、シンプルな形での「追っかけ」という技法に焦点を当て、その特徴と分析手法について解説します。この技法は、特にバロック期から古典派、ロマン派の作品に頻出し、楽曲の構造を理解するうえで重要な視点となります。
► 基礎講義と演習
‣ 分析基礎:J.S.バッハの例
J.S.バッハの作品には、教育的観点からも分析しやすい追っかけの例が多く見られます。ここでは、初心者向けの教材としても広く使われている作品を例に分析を行います。
J.S.バッハ「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳 第2巻 メヌエット BWV Anh.121」
譜例1(PD楽曲、Sibeliusで作成、1-8小節)
分析のポイント:
1. メロディの部分的引用
・3小節2拍目までの限定的な模倣
・原型からの変形パターン
2. 構造的特徴
・メロディと重なって出てくるので、対位法的模倣手法の一種とも言えるが
・さりげなく追っかけているだけのシンプルな作り
・メロディとの重なり方に注目
‣ 分析演習:ドヴォルザークの例
ドヴォルザーク「8つのユーモレスク 第7番 Op.101-7 変ト長調」
譜例2(PD楽曲、Sibeliusで作成、25-28小節)
譜例の中の2箇所に追っかけが含まれます。見つけ出してみましょう。
分析の着眼点:
・メロディが伸びている時の伴奏部の動き
・短い音型での模倣関係
・声部間の関係性
解答
譜例3(25-28小節)
模倣箇所の分析:
1. カギマークa:「Do Mi」の模倣
・音程関係の保持
・リズム型の一致
2. カギマークb:「Mi Do Ra」の模倣
・音型の変形
・音価の縮小
・調性における機能的役割
この例に関しても:
・メロディと重なって出てくるので、対位法的模倣手法の一種とも言えるが
・さりげなく追っかけているだけのシンプルな作り
► まとめ:分析手法の応用
効果的な分析のためのステップ:
1. メロディラインの特定
2. 伴奏部における似た素材の有無の確認
3. リズム型の比較
4. 全体構造における位置づけの確認
部分的な追っかけの分析は、作品の構造理解を深める重要な手段です。この分析手法は、特に:
・声部間の関係性の理解
・作曲技法の研究
・楽曲構造の把握
に効果的です。
本記事では、メロディの部分的な追っかけという、比較的シンプルな模倣技法に焦点を当てて分析を行いました。この技法は、厳格な対位法やカノンのような本格的な模倣技法の入門として位置づけられ、初期の楽曲分析学習において重要な観察ポイントとなります。
より発展的な模倣技法(カノンなど)に興味がある方は、以下の記事を参考にしてください:
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