【ピアノ】演奏を楽にする指間と手首のストレッチ方法
► はじめに
ピアノ演奏で悩みがちな「指が開かない」「手首が固い」という問題。適切なストレッチを行うことで、これらの課題を改善し、より楽に演奏できるようになります。
本記事では、ピアノ演奏に特化した効果的な指間と手首のストレッチ方法を解説します。リハビリの専門家にも確認した実践的な方法なので、初心者の方から上級者まで安全に取り入れていただけます。
► ストレッチの基本と実践
‣ 1. 指間ストレッチを取り入れるメリットと注意点
筆者自身、以前に数年間、「ミキモトメソッド フィンガートレーニング」というメソッドの指導を受けていました。
その中で、「トレーニングボード」というものを使って指間をストレッチし、より開くように訓練していく過程があったのです。
それを継続的に行なったことで、確かに「腱」も「皮」も伸びることを実感しました。
限度はありますが、今よりも指が開くようになることで特定の和音を「より楽に」押さえられるようになり、「手首への負担」が軽減します。
趣味でピアノを弾いている方も、関心のある方はストレッチを取り入れるのがおすすめです。ピアノをより楽に弾くために必要なのは、手が柔軟に開くかどうかです。限界はありますので、くれぐれもストレッチで痛めないように注意しましょう。
ちなみに、ヴァイオリンの場合、「ŠEVČÍK VIOLIN STUDIES」という教則本の中で、特定の指を押さえたまま他の指を開く課程があります。
一方、ピアノでは:
・ミキモトメソッド フィンガートレーニング
・コルトーのピアノメトード
これらの中で少し取り上げられているだけで、それほど重視した教育は行われていません。これは必要ないということではなく、自身で考えて取り入れていく必要があるということです。
人によって手の形は違いますし、ただ一つだけの正しいやり方はありません。必ずしもトレーニングボードを使わなくても、自身の手を使ってストレッチすることから始めるのがいいでしょう。
重要な注意点は以下の4つです:
・入浴中などの「血行が良いとき」に適度に行う
・できる限り左右の手を「対称」にストレッチしていく
・無理な力をかけずに、ゆっくりと行う
・ストレッチをしている時に「手首」をリラックスさせておく
特に、「ストレッチをしている時に「手首」をリラックスさせておく」というのは、気を抜くと忘れがちです。
不必要な箇所に力を入れずにストレッチを行う習慣をつけることで、実際の演奏でも手を広げた時に手首がリラックスした状態を保てるようになります。
2、3日で効果を求めず、継続的に行うことを心がけましょう。バレエダンサーの開脚も一朝一夕にできるようになったわけではありません。毎日の習慣として少しずつ行っていくことがポイントです。
‣ 2. 指間ストレッチの推奨する限界目標点
ストレッチは積極的に取り組んでよいものですが、手指に刺激を与えるものなので、目的を誤ると痛める可能性もあります。手指を開くストレッチの限度について、以下のように考えましょう:
推奨すべき限界目標: 今ギリギリ「届いている」音程を、もっと楽に押さえられるようになること
つまり、手を開くストレッチは原則として、今全く届いていない音程に到達するために行うものではありません。そのような目的では負荷が大き過ぎます。
生まれ持った以下の要素をある程度は尊重する必要があります:
・手の大きさ
・皮のつき具合
・柔軟性
これらの自然な限界を超えようとすると、怪我のリスクが高まります。
ロベルト・シューマンが訓練器具で手を痛めたエピソードは有名ですが、ストレッチでさえ同様の危険性を持っています。無理のない範囲で、長期的な視点を持って取り組みましょう。
‣ 3. 鍵盤上でできる手首のストレッチ
ピアノ演奏では、手首が必要以上に柔軟すぎるのは望ましくありません。一方で、表現力豊かな演奏のためには、必要な時に柔軟に動かせる手首の状態を保つことが重要です。
単純な手首の回転運動だけでは、ピアノ演奏に直接的な効果は期待できません。そこで、鍵盤上で実践できるストレッチが効果的です。
譜例(Sibeliusで作成)
以下の手順で行います:
1. 譜例の音を打鍵して鍵盤の底でキープする
2. 右手の手首を「反時計回り」に回すと同時に、左手の手首を「時計回り」に回す(この時に肘も一緒に回転させる)
3. 20回回したら、次は両手首とも逆回転で20回回す
これを1セットとし、1日に数セット行います。
注意点:
・回転時は上腕や肘をリラックスさせる
・ゆっくりと回転させ、急な動きは避ける
・打鍵している指は、必要以上に押さえつけない
このエクササイズは、実際のピアノ演奏と同じような感覚で行うことを意識してください。
打鍵をしたまま行うストレッチという点が重要です。初めは手首の動きが制限されて驚くかもしれませんが、継続的な練習により徐々に可動域が広がっていきます。
► 終わりに
この記事で紹介した方法を参考に、自身の手の特徴や演奏スタイルに合わせて、無理のない範囲で継続的に取り組んでみてください。
安全で効果的なストレッチを習慣にすることで、演奏が少し楽になることを実感するでしょう。
▼ 関連コンテンツ
著者の電子書籍シリーズ
・徹底分析シリーズ(楽曲構造・音楽理論)
Amazon著者ページはこちら
・SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら
コメント