【ピアノ】リチャード・クレイダーマン おすすめ曲 完全ガイド:難易度別に徹底解説
► はじめに
リチャード・クレイダーマンは、世界中で愛されるフランスのピアニストです。彼の作品は、誰にでも親しみやすいメロディと優雅な雰囲気が特徴で、ピアノ学習者にとって魅力的なレパートリーとなっています。
本記事では、クレイダーマンの代表曲を難易度別に紹介し、それぞれの楽曲の特徴、演奏のコツ、楽譜選びまで詳しく解説します。
► クレイダーマン作品の特徴
‣ クラシック畑のピアノ弾きにも最適
リチャード・クレイダーマン自身がクラシック出身のピアニストということもあり、彼の楽曲には以下の特徴があります:
・クラシックピアノの技法が存分に活かせる
・ロマン派のピアノ曲を思わせる音遣い
・ピアノという楽器の特性を活かした音遣い
・ポピュラー音楽への挑戦の第一歩として最適
具体的には楽曲ごとの解説で紹介しますが、作曲者には別の音楽家をたてており、クレイダーマン自身が作曲しているわけではありません。
‣ 楽譜選びの注意点
クレイダーマン作品には、クラシック作品のような「決定版楽譜」は存在しません。
・クレイダーマン自身が演奏ごとに細部を変え、表現を柔軟に調整するから
・市販の楽譜は特定の録音を基にした「採譜版」がほとんど
・原曲(その楽曲初期の代表的な録音)に忠実な楽譜を選ぶのがおすすめ
► おすすめ曲:難易度別一覧表
| 曲名 | 原題 | 難易度 | 演奏時間 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 渚のアデリーヌ | Ballade pour Adeline | ★★☆☆☆ | 約2分30秒 | ・最も知られている代表曲 ・同音連打が印象的なメロディ |
| 星のセレナーデ | Coup de Cœur | ★★★☆☆ | 約3分 | ・とにかく覚えやすいメロディが特徴 ・6度音程とオクターヴの連続の処理が課題 |
| レディ・ディ | Lady Di | ★★★☆☆ | 約2分30秒 | ・テンポが速めのバラード ・リズミカルなエンディングが印象的 |
| 愛しのクリスティーヌ | Souvenirs d’Enfance | ★★★☆☆ | 約3分 | ・華麗なパッセージと素朴なメロディの対比 ・「渚のアデリーヌ」に次ぐ有名曲 |
難易度の目安:
★★☆☆☆:ブルグミュラー25の練習曲 中盤程度〜
★★★☆☆:ブルグミュラー25の練習曲 修了程度〜
► 各曲の詳細解説
1. 渚のアデリーヌ(Ballade pour Adeline)
基本情報:
・作曲者:ポール・ドゥ・センヌヴィル
・発表年:1976年
・難易度:ブルグミュラー中盤程度〜(全音ピアノピース:Aに近いB相当)
楽曲の特徴
クレイダーマンの代表作であり、世界的なヒット曲です。作曲家センヌヴィルが自身の娘アデリーヌのために書いた愛情溢れる作品で、イージーリスニング音楽の代表格となりました。
・- 叙情的で覚えやすいメロディ
・右手の連打混じりの味のある表現
・左手の広い音域を使った分散和音
・ロマン派ピアノ曲を思わせる響き
技術的ポイント:
・左手の音域の広い分散和音の処理
・両手を組み合わせた装飾的パッセージ
・様々な音価が出てくる中でのテンポコントロール
演奏のコツ
譜読みの負担は比較的軽く、基本的な分散和音パターンが中心です。演奏時間も約2分半とコンパクトで、ハ長調で書かれているため取り組みやすい作品です。
こんな方におすすめ:
・クラシックピアノの学習者がポピュラー曲に初めて挑戦する
・発表会でクラシックプログラムに組み込みたい
・レストランやブライダルでの演奏レパートリーとして
この楽曲についてさらに知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
【ピアノ】クラシック畑のピアノ弾きに贈る「渚のアデリーヌ」解説:演奏効果と難易度
2. 星のセレナーデ(Coup de Cœur)
基本情報:
・作曲者:ポール・ド・センヌヴィル、オリヴィエ・トゥッサン
・発表年:1981年
・難易度:ブルグミュラー25番修了程度(全音ピアノピース:B相当)
楽曲の特徴
1980年代から日本で人気を誇る作品。テレビCMやアニメ映画「地球物語」のテーマ曲として使用され、多くの人々の記憶に残る楽曲です。
・メロディの覚えやすさは群を抜いている
・美しいメロディを聴かせることが最重要
・伴奏部分にはあまり主張はなく、「支える」役割に徹している
技術的ポイント
右手のメロディ処理が最大の課題
1. 6度音程の連続
・メロディに対して下にぶら下がる6度音程
・トップラインを骨太で弾く
・下側よりもトップノートのつながりを優先
2. 高音域でのオクターヴ連続
・後半のC-dur転調直後に登場
・手首を柔らかく保ち、腕の重さを利用
・「カンカン」という耳障りな音にならないよう注意
3. 32分音符パッセージ
・転調前の細かいパッセージ
・同時に出てくる左手の8分音符の刻みがテンポキープの要
4. 16分音符の挿入
・メロディに頻繁に出てくる16分音符で「コブ」ができないように
・音価が短いだけで音量が大きくなるわけではない
・「通り過ぎるだけ」というイメージで軽やかに
演奏のコツ
・常にメロディが主役であることを意識し、伴奏は決して前に出過ぎないように
・とにかくメロディを美しく歌わせることが問われる楽曲
この楽曲についてさらに知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
【ピアノ】リチャード・クレイダーマン「星のセレナーデ」解説:難易度・楽譜・演奏のコツ
3. レディ・ディ(Lady Di)
基本情報:
・作曲者:ポール・ド・センヌヴィル、ジャン・ボドロ
・発表年:1982年
・難易度:ブルグミュラー25番修了程度(全音ピアノピース:B相当)
楽曲の特徴
イギリスのダイアナ妃をイメージして作曲されたとされる作品。当時の「ダイアナ・フィーバー」を反映した、優雅でロマンティックなメロディが印象的です。
・テンポが速めのバラード
・印象的でリズミカルなエンディング
・マイナー調の中間部で情熱的に変化
技術的ポイント:
1. 左手のアルペジオパターン
・比較的広い音域にわたる音遣い
・確実に音をつかみつつ美しい響きを作る
2. 右手の音色への配慮
・高音域で単音で力強くメロディを弾く箇所がある
・こういった箇所で力任せに音を出すと「カンカン」になるので注意
3. エンディングの正確なリズム
・この曲の演奏を成功させる最大の鍵
・リズミカルで明確な終止をバチっと決める
・最終和音の直前でテンポをゆるめない
演奏のコツ:
テンポ設定が重要:
・楽譜を見るとゆったりしたスローバラードに見えるが、実は前向きなテンポの活き活きとしたバラード
・少なくとも♩=100以上での演奏を目指す
・中間部でテンポが変わってしまわないよう注意
エンディングでキメる:
・ノンストップで最終和音に入る
・テンポを落としたり、ためらいがちに演奏しない
・クレイダーマン自身の演奏を参考に研究する
この楽曲についてさらに知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
【ピアノ】リチャード・クレイダーマン「レディ・ディ」解説:難易度・楽譜・演奏のコツ
4. 愛しのクリスティーヌ(Souvenirs d’Enfance)
基本情報:
・作曲者:ポール・ドゥ・センヌヴィル
・発表年:1979年
・難易度:ブルグミュラー25番修了程度(全音ピアノピース:B相当)
・原題の意味:「子どもの思い出」
楽曲の特徴
「渚のアデリーヌ」に次ぐ人気を誇る名曲。素朴で親しみやすいメロディと、華麗で細かなパッセージの対比が魅力です。
・シンプルで覚えやすい旋律
・3和音の分散和音が中心
・素朴なメロディと細かなパッセージが交互に登場
・「渚のアデリーヌ」よりも少しだけ難易度が高い
技術的ポイント
華麗なパッセージは実は弾きやすい:
・3和音の密集和音の分散和音が中心
・和音の形が規則的で手に馴染みやすい
・パターンの反復が多く、慣れると自然に手にハマる
習得のコツ:
・ゆっくりとしたテンポで分散和音のパターンを反復練習
・和音の形を手に覚え込ませる
演奏のコツ:
・和声は単純な3和音が中心で暗譜しやすい
・構造が明快で、パターンの反復が多い
・クラシカルな書法で書かれているため、ブルグミュラー25の練習曲までの練習内容を活かせる
この楽曲についてさらに知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
【ピアノ】リチャード・クレイダーマン「愛しのクリスティーヌ」解説:難易度・楽譜・演奏のコツ
► 楽譜選びと参考音源選びのガイド
‣ デジタル楽譜(おすすめ)
ぷりんと楽譜が便利でおすすめです:
・原曲の内容にかなり近い採譜
・すぐにダウンロード可能
・印刷して書き込みながら練習できる
「ぷりんと楽譜」リンク:
» 渚のアデリーヌ
» 星のセレナーデ
» レディ・ディ
» 愛しのクリスティーヌ
‣ 紙の楽譜集(おすすめ)
『リチャード・クレイダーマン名曲集「愛しのクリスティーヌ」』(リットーミュージック)
本記事で扱っている楽曲では、「星のセレナーデ」「レディ・ディ」「愛しのクリスティーヌ」が収載。他にもクレイダーマンの名作が多く含まれています。
『リチャード・クレイダーマン名曲集「渚のアデリーヌ」』(リットーミュージック)
本記事で扱っている楽曲では、「渚のアデリーヌ」が収載。他にもクレイダーマンの名作が多く含まれています。
これらの楽譜集の特徴:
・前書きに「易しく編曲し直すことはしていません」と明記
・原曲にかなり近い採譜を重視
・複数の名曲が収録されており、効率的にレパートリーを広げられる
・クレイダーマンの演奏ニュアンスを再現できる質の高い採譜
‣ 参考音源の重要性
おすすめCD:「プラチナム・ベスト リチャード・クレイダーマン」
本記事で扱っている楽曲の全曲が収録されています。
楽譜だけでなく、クレイダーマン本人の録音を繰り返し聴くことが重要です。
聴くべきポイント:
・譜面からは読み取れない繊細な表現
・間の取り方
・ペダルの使い方
・音色のニュアンス
・メロディの歌わせ方、フレージング
・テンポの揺らぎの自然さ
・全体の雰囲気作りとバランス感覚
► 演奏シーンと効果
演奏シーン例:
・発表会での演奏
・レストラン・ブライダルでの演奏
・ポピュラーピアノへの挑戦の第一歩
それぞれの楽曲の特徴:
・クラシックプログラムの中に組み込んでも違和感がない
・聴衆受けが良く、幅広い年齢層に受け入れられる知名度
・華やかな印象を与えながら、技術的に極端に弾きにくい箇所がない
・レパートリー維持のハードルが高くない
・楽譜通りに演奏することも、アレンジを加えることも可能
選曲のヒント:
・ロマン派の小品と組み合わせて統一感を出す
・クレイダーマンの複数の作品で「クレイダーマン・プログラム」を構成
・「レディ・ディ」のようなテンポが速めのバラードと、他のスローバラードを組み合わせる
► よくある質問(Q&A)
Q1. クラシックしか弾いたことがないけど大丈夫?
A1. むしろクラシック経験者に最適です。クレイダーマン自身がクラシック出身で、多くの作品でもクラシックのロマン派作品で良く出てくる書法が含まれています。
Q2. 楽譜はどれを選べばいい?
A2. 原曲重視の場合は「ぷりんと楽譜」のうち上記の版か『リチャード・クレイダーマン名曲集「愛しのクリスティーヌ」』『リチャード・クレイダーマン名曲集「渚のアデリーヌ」』(リットーミュージック)がおすすめです。初級者の方で、簡易版での演奏を望む方は、「ぷりんと楽譜」の各種難易度別アレンジをお試しください。
Q3. 最初に挑戦する場合は、どの曲がおすすめ?
A3. 「渚のアデリーヌ」が最も取り組みやすくおすすめです。「星のセレナーデ」「レディ・ディ」「愛しのクリスティーヌ」の難易度は概ね同程度です。ただし、「星のセレナーデ」はオクターヴの連続使用が他の楽曲よりも多く出てくるので、手の大きさによってはやや難しく感じるかもしれません。
Q4. 練習の際、特に注意すべき点は?
A4. ポピュラーピアノの分野では、同じ楽曲でも多種類の楽譜が出回っているので、まずは「楽譜選び」が重要です。上記のポイントを参考に選んでみてください。演奏面に関しては、特にポピュラーピアノに初めて挑戦する方は、とにかくクレイダーマン本人の演奏を繰り返し聴くことで独自のニュアンスを研究することをおすすめします。
► 終わりに
リチャード・クレイダーマンの楽曲は、多くの人に愛される親しみやすさを兼ね備えた魅力的なレパートリーです。
本記事で紹介した4曲は、いずれも初級〜初中級の学習段階で取り組める作品ばかり。原曲に近い楽譜を選び、クレイダーマン本人の演奏を参考にしながら、挑戦してみてください。
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