【ピアノ】「ピアノ奏法 音楽を表現する喜び」(井上直幸 著)レビュー
► はじめに
「ピアノ奏法 音楽を表現する喜び」は、著名なピアニスト井上直幸氏による、ピアノ演奏の本質に迫る教本。1998年の初版から、多くのピアノ弾きに愛され続けている一冊です。
本書の特徴は、「音楽をどう理解し、表現するか」という本質的な問題に焦点を当てている点であり、対談形式で進められる内容は、著者の温かい人柄と深い音楽観が伝わってくる親しみやすいものとなっています。
・出版社:春秋社
・初版:1998年
・ページ数:176ページ
・対象レベル:初中級~上級者
・ピアノ奏法 音楽を表現する喜び 著:井上 直幸 / 春秋社
► 内容について
‣ 本書の構成
全5章で構成され、以下のような内容が含まれています:
第1章 良い演奏とは?
第2章 練習はどんなふうに?
第3章 表現のためのテクニック
第4章 ペダルの使いかた
第5章 演奏の基本感覚
‣ 本書の魅力
1. 実践的な演奏テクニックと哲学の融合
本書は、具体的な演奏テクニックと音楽哲学的な考察を見事に融合させています。例えば、ダンパーペダルについては9種類の具体的な奏法を詳しく解説する一方で、「ペダルは耳で踏む」という本質的な考え方も示されています。
2. 独学者のための明確な指針
著者は「自分なりの方法、自分なりの手続きで音楽を作っていける」ようになることを重視しています。これは独学で学ぶ方々にとって、特に価値のある視点です。
3. 音楽への深い敬意
本書の特筆すべき点として、音楽や作品に対する深い敬意が挙げられます。著者は「作品を敬う」という姿勢の重要性を説き、優れた作品に近づこうとする謙虚な姿勢の大切さを強調しています。
4. 具体的な実践方法
本書では以下のような実践的なアドバイスが豊富に含まれています:
・楽譜の効果的な読み方
・原典版の使用のヒント
・様々なタッチの種類とその使い方
・テンポ設定のコツ
・ハーモニーの捉え方
‣ 特に印象的な教え
著者の「知識として勉強するというよりは、自分の中に直感的な判断の枠を作っていく」という考え方は、ただの技術習得を超えた、音楽家としての成長を方向づけてくれる重要な指針となっています。
類似の教則本と比較した際の本書の独自性については、特にこの部分にあると言えるでしょう。
► まとめ
本書は特に、独学で学ばれている方々にとって、「先生」のような存在となり得るでしょう。ピアノ演奏の技術的側面だけでなく、音楽への向き合い方や作品への敬意など、音楽家としての本質的な成長に必要な要素が凝縮されています。
特定の問題の解決を希望している方というよりは、音楽との向き合い方を見直しながら総合的に演奏力もアップさせたい方に最適な一冊です。
・ピアノ奏法 音楽を表現する喜び 著:井上 直幸 / 春秋社
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