【ピアノ】先生に聞けない素朴な疑問10選:真面目に答えるQ&A集 vol.30

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【ピアノ】先生に聞けない素朴な疑問10選:真面目に答えるQ&A集 vol.30

► はじめに

 

・「こんなこと、先生に聞いていいのかな…」
・「ググっても明確な答えが出てこない…」

こういった、聞きにくいけど実は気になるピアノ関連の疑問に、真面目に答えます。レッスンに通っている方はもちろん、スポット(単発)レッスンを受ける独学の方にも参考になる内容です。

 

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学習者の素朴な疑問 総合索引:先生に聞けない疑問を完全網羅

 

► 質問集

‣ Q1. 紙の楽譜とデジタル楽譜、どちらを使っている?

 

結論:どちらも使っているが、紙への愛着は変わらない

 

「紙の楽譜ってやっぱりいいなと思う瞬間 7選」を紹介します。

 

1. においを嗅いだとき

情報の取得方法として新聞紙にこだわっている知り合いがいて、理由をきいたところ、「においがいいから」と返ってきて笑ってしまいました。

iPadでの楽譜管理をはじめてから、楽譜のにおいの良さに気づき始めました。いくつかの出版社が出している楽譜は独特なにおいがして病みつきになります。

 

2. iPadが不調のとき 

筆者は本当に単純な人間で、使っている道具の調子悪くなると、管理の面倒くささに嫌気がさして、修理に出すことなくそれを捨ててしまいます。

さすがにiPadは捨てませんが、調子が悪くなったときに必ず「紙の楽譜があって良かった」と思い、完全に紙へ心移りする期間が続くのです。「ゼロイチ思考はやめよう」なんて記事を書いておきながら、とにかく単純ですね。

 

3. 書きごこちの良さを実感したとき

タブレットへ貼れる「ペンシルでの書きごこちを追求した画面保護フィルム」がたくさん売られているのでいくつか試してみたのですが、結局、紙への手書きの書きごこちには勝りませんでした。

紙の楽譜へ書き込みをして、特にきれいに書くつもりはなかったのに思いがけずきれいに書けてしまったときは少し幸せな気分になります。

紙への手書きというのは、何だか自分と対話しているみたいな感覚になるので不思議です。

 

4. 美しい表紙を見て感動したとき 

ときどき楽譜の表紙へチラリ目をやり、美しさに感動することがあります。

筆者が好きなのは、例えば:

・全音ピアノピースの、「旧」表紙デザイン
・ヘンレ版の、現行のシンプルな表紙デザイン
・サラベール版の、いくつかの作品で使われている真っ青な表紙デザイン

 

5. 腰を据えて譜読みをするとき 

ちょっと弾いてみるだけであればタブレットでもいいのですが、腰を据えて譜読みをする作品は、紙の楽譜があると助かります。

理由は単純で、のぞきこまなくていいから。

タブレットでも拡大すればのぞきこまなくても読めますが、やはり「腰を据えてじっくり読むなら紙」という結論です。ストレスのかかり方がまったく違います。

逆に言うと、どんなにテクノロジーが進化しても今のところ「画面の大きさ」というのは絶対的な価値と言えるでしょう。

 

6. 自作品の製本をしているとき

完成した自作品をプリントアウトして製本しているときというのは、もう、相当楽しい時間です。デジタルデータ管理ではこの感覚は味わえません。

 

7. 自作品の校正をするとき

作品の校正をするときにプリントアウトして「紙で」見渡すと、なぜか、PDFで見ていても気づかなかった誤りやレイアウトのズレなどがいくつも見つかるのです。作曲や編曲に取り組む多くの知人が同じことを話していました。

幸せを感じるというのとは少し異なりますが、紙の楽譜の良さを感じる瞬間です。

 


 

外出するときなど、紙の楽譜では不便することもあるので、自作品のスコアやパブリックドメインになっている作品のスコアをデータで管理できるのは大きいと言えるでしょう。

一方、いつまで経っても結局、紙の楽譜の中でもお気に入りのものは「枕元へ置いておきたい」気持ちです。

 

‣ Q2. 初心者の頃に知りたかったことは何かある?

 

結論:当時はあまり色々考えずに弾いていた

 

初心者の時期(ツェルニー30番に入門するくらいまでの段階)に何を知りたかったかというと、思い返しても、このWebメディアで発信しているような内容ではありませんでした。しかし、今考えてみて「当時知っておけば良かった」と思うことは、まさにそういった内容なのです。

知りたいことというのは、「そのときに余裕を持って考えられる内容」のみです。例えば「指が速く動くようになるためにはどうすればいいか」という疑問は、楽譜を読めるなどの基本事項が済んでいないと、そもそも到達しない「知りたいこと」でしょう。自分の弾いているテンポがゆっくりだとも思っていなかったし、先生はゆっくり弾いてもマルをくれていました。細かなことが気になるほど学習が進んでいないうちは、自分の弾いている内容で十分だと思っていたということです。

その後、先生が変わって「とっくに終わったはずの楽曲」に戻されました。「この楽曲は一生練習するんだよ」と言われ、楽曲を練習することの意味が分かりました。そして「弾くだけであれば容易な楽曲を音楽的に仕上げることの大変さ」を知り、それまでいかに音色などに対して無頓着でいたかを感じたのです。

初心者の時期は、ピアノを通して色々なことを知る時期だと思って取り組めばいいでしょう。ただし、本Webメディアの一つの記事からほんの少しでも何かを持って帰ってください。その積み重ねで、もっと高度な疑問を持てる自分になっていきます。そうなった頃には、気がつけばとっくに初心者を卒業しているはずです。

 

‣ Q3. 副科のレッスンは、専攻生へのレッスンと何が違う?

 

結論:副科のほうが「テクニック寄り」の指導になる

 

音楽大学と音楽専門学校での指導経験から言うと、本科の学生と副科の学生では教え方の傾向を変えることになります。

副科の学生というのは多くが未経験なので、「とりあえず何かできるようになること」を目標として習いにくることがほとんど。したがって、場合によっては手取り足取り教えたり、「こうやったらとりあえずいい感じになる」というテクニック寄りの内容を伝えて、当面のモチベーションを保ってもらいます。一緒に考えながらも、結局は決めてあげる感じです。「すぐに反映される内容を優先的に教える」と考えると分かりやすいかもしれません。

一方、本科の学生の多くは基本的なことは踏まえているという前提なので、指導はどうしても「音楽論」など「抽象的な内容」になってくる傾向があります

 

ロシアのピアノ教育者リーベルマンは、書籍「現代ピアノ演奏テクニック」のなかで、以下のように述べています。

(以下、引用)
生徒の勉強は音楽的な部分とテクニック的な部分に分けられる。 もっともこれは、主として学習の初期の段階にのみ有用な図式である。 後になればなるほど、 すべての音楽的な学習はほとんどテクニック的なものとなり、 すべてのテクニック的な学習は音楽的なものとなる。
(引用終わり)

「後になればなるほど、すべての音楽的な学習はほとんどテクニック的なものとなり、すべてのテクニック的な学習は音楽的なものとなる」。習いに行っているのであれば、先生の指導の内容が具体的ではない方向へ変わってくるタイミングがあるでしょう。それは多くの場合、自身がレベルアップしたということです。先生がサボっていると思う前に、現状をよく眺めてみることが重要です。

 

・現代ピアノ演奏テクニック 著 : エフゲーニ・ヤコブレヴィッチ・リーベルマン  訳 : 林万里子 / 音楽之友社

 

‣ Q4. 作曲家にまつわる「実はこうだった」という話が知りたい

 

結論:音楽史では「思い込み」がかなりの比重を占めている

 

いくつか紹介します。

まず、ソナチネアルバムで知られるクレメンティは、日本ではソナチネ以外ほとんど知られていませんが、イギリスでは「ピアノの父」などと呼ばれ、とても有名な作曲家です。どの国でも日本程度の知名度だと思い込んでいませんでしたか?

また、「トランペット・ヴォランタリー(デンマーク王子の行進曲)」はもともとヘンリー・パーセルの作曲とされていましたが、何十年か前にジェレマイア・クラークの作品に変わりました。パーセルは編曲して曲集に載せていたのです。「おもちゃの交響曲」もかつてはハイドンの作と言われていましたが、紆余曲折を経て、エトムント・アンゲラーの作曲作品に変わりました

 

歴史というのはある意味で「一定の答えが出ている」わけですが、たまにこういったくつがえしの話題を耳にすると、改めて面白い分野だと感じさせられることでしょう。演奏解釈も時間経過とともに主流が移り変わっていきますし、「音楽史」「歴史」という部分にもっと興味を持つ価値があると考えています。

 

‣ Q5. 超絶技巧の演奏についてどう思う?

 

結論:ショーとして素晴らしいと思うが、「絶叫マシン的な感動」と「また聴きたくなる演奏」は別物

 

超絶技巧のピアニストのコンサートを聴くとショーとして純粋にすごいと思いますし、客席も大喝采大盛り上がりになります。しかし、帰宅した後に思い出してみると「もう一度聴きにいきたいな」とは思わない方も多いのではないでしょうか。

このような演奏を、ドイツの著名な現代音楽の作曲家が「絶叫マシン的な感動」と称しました。「感動がドワァ〜っとくるけれど、すぐにスーっと去っていってしまう」ということです。

一方、「味のある、人生が見えるような演奏」はまた聴きたくなります。故 フジ子・ヘミングさんの演奏は、いわゆる説明的な演奏ではないので専門家は好まない方も多いようですが、一般的にはとても人気がありますね。

この二つが同居した演奏をするピアニストとしては、ユジャ・ワンが挙げられます。技巧的な演奏が話題になりがちな彼女ですが、その中に素晴らしい音楽もあります。

「一聴衆」として、二項対立的な視点を忘れて音楽に触れられたら、きっともっと素晴らしい体験ができるでしょう。

 

‣ Q6. 力のあるピアノの先生を見分けるには?

 

結論:テクニック面も指導できるかどうかで見分ける

 

「力のある先生」というのは解釈の幅が広い言葉ですが、ここでは「純粋に専門性で生徒の弾く能力を引き上げられる力」という前提でお話しします。

筆者が思う「力のある先生」とは、「解釈面だけでなく、テクニック面も指導できる先生」のことです。ここで言う「テクニック面の指導」とは、入門用教材で運指を教えることではなく、もっと高度な段階での指先の使い方、身体の使い方、呼吸なども含めた総合的なテクニックのことです。

テクニック面は、指導者自身が身をもってそのテクニックと対峙した経験がないと教えられません。テクニック面を指導できない先生は、テクニックが無いのです。「こういった音型は、肘を少しだけ回転させると速く弾ける」「フォルテの音がすぐに発音されてしまう理由は、あなたの場合、打鍵の角度にある」などといった細かなテクニックは、言葉にすればシンプルですが、実際に教えられる先生は本当にわずかです。

生徒側も学びを重ねることで「力のある先生」を判断できるようになる必要があります。

 

‣ Q7. 文章でも学ぶほうがいいと言われるのはなぜ?

 

結論:文章を読む行為は能動的で、得られる恩恵も大きい

 

文字ベースの情報から学ぼうとするのは、能動的な行為です。一方、音声や動画を視聴するのはどちらかと言うと受動的な行為です。音声も重要なツールですが、力を抜いていても勝手に進んでくれるため、深くは聴いていないことが多いのです。文章を読む場合は、それはできません。

だからこそ、感じ方によっては、読むことには一種の辛さがあります。その代わり、能動的に動いてまで情報を得ようとしている方へ返ってくる恩恵も大きなものとなるでしょう。

 

‣ Q8. 本番前に気をつけるべきヒヤリハットはある?

 

結論:会場の楽器チェックを必ず事前に行うこと

 

実際にあった話をシェアします。

数十年前、地方のとあるラジオ音楽番組に呼んでいただいたときのことです。当日はトークだけでなく、収録会場のピアノで演奏をすることにもなっていました。しかし当日会場に入った途端、驚きのあまり声が出そうになりました。事前打ち合わせで「ピアノ」と言われていたものは「25鍵のみのキーボード」だったのです。もちろんペダルもついていません。

加えて「ラジオ局の社長の私物を借りてきた」とのことで、「社長が聴く可能性もあるので放送で使って欲しい」とまで言われてしまいました。そこで、キーボードを使って楽曲の断片を片手で弾きながら「楽曲の解説」をし、演奏自体はノートPCに入っていた録音データを流していただいて乗り切りました。

以来、初めて伺う会場の楽器チェックを徹底するようになりました。「クラシックコンサートホール」ではあまり心配は要りませんが、「小さなサロン」「放送局」「ホームコンサート」などでは念には念を入れたチェックが必要です。鍵盤がついている楽器はすべて「ピアノ」だと思っている方が一定数いらっしゃるからです。先方がピアノに詳しくない場合は、せめて「鍵盤の数」だけでも確認してもらいましょう。

 

‣ Q9. レッスンで生徒を傷つけないために、言葉の使い方で何に気をつけている?

 

結論:変えられないことには触れないようにしている。また、マイナスの単語を避け、プラスの言葉を文で否定するようにしている

 

レッスンのときなどに生徒の「手の大きさ」のことには触れるべきではありません。頑張っても変えることができない部分だからです。仮に何かの説明のために話題にする必要があるケースでも、「手が小さい人は〜」ではなく「手が大きくない場合は〜」としたほうがベターです。単語自体がマイナスの響きを持つものを使うよりも、単語はプラスでそれを文で否定するほうが響きは柔らかくなります。「そこが悪い、そこがダメだからもう一度」ではなく「そこが良くないから改善しよう」などといったように。

ささいなことのように感じるかもしれませんが、ちょっとした一言が生徒の中にずっと残る可能性があります。

 

‣ Q10. 選曲に、きちんとした理由は必要?

 

結論:自分主体の理由があれば、それが最高の理由

 

筆者が常日頃考えるのは、「なぜ、この人物がこれをやるのだろう」という部分です。例えば、特定の作曲家の作品ばかりを演奏する奏者がいますが、どういう理由で、どういったこれまでの経験からそのようなことをやっているのかが知りたくなります。

他の方の演奏を聴くときも、「なぜこの人物がこれをやるのだろう」という部分が見える場合は、どんなに表現などが上手くいっていなくても興味深く聴けます。それが見えない場合は、どんなにまとまっていても全く興味を持てません。

「好きだから」「やったことないから」というレベルの理由ではなく、その人物の深い部分と結びついている理由に興味があります

現在自身が取り組んでいる作品について、なぜその作品に向かっているのかを改めて考えてみてください。他者と比較したり見栄で選曲したりといった部分がなく、きちんと自分主体の理由があれば最高です。

 

► 終わりに

 

先生に聞けないこと、ググってもあまり出てこないこと、たくさんあります。そんな小さな疑問を一つずつ解決していくことでピアノ学習を楽しくしていきましょう。

 

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