【ピアノ】「ピアニストの毎日の基礎練習帳」(岩崎淑 著)レビュー
► はじめに
本書は、ピアニストの岩崎淑氏によるピアノ練習の指南書です。その内容は、練習メニューの紹介に留まらず、著者の豊富な演奏経験から来る知見と、世界的な音楽家たちの名言の紹介が凝縮された一冊となっています。
・出版社:春秋社
・初版:2011年
・ページ数:210ページ
・対象レベル:中級~上級者
・ピアニストの毎日の基礎練習帳 著 : 岩崎淑 / 春秋社
► 内容について
‣ 本書の特徴
1. 実践的な練習アプローチ
本書の核となるのは、著者が留学時代に学んだ練習メニューです。ただのテクニック集ではなく、「なぜその練習が必要か」という本質的な理解を促す内容となっています。また、印象的な一節に「家で一人でピアノに向かうときの練習が、本当に上手になるかどうかのカギをにぎっている」という言葉があります。
2. アンサンブルに関する独自の視点
著者のアンサンブル演奏家としての経験が活かされた章は特に注目に値します。例えば、ブレンゴラー氏から学んだ「クレッシェンドの際はソロ楽器より少し遅めにかけ、ディミヌエンドは少し早めに落とす」という具体的なアドバイスは、実践的で貴重なヒントです。
3. 豊富な引用と裏付け
ギレリスやツェルニーをはじめとする著名音楽家の言葉を効果的に引用することで、内容に説得力を持たせています。
4. 包括的な学習アプローチ
技術面だけでなく、演奏家としての心構えや本番への準備、さらにはコンクールに関する実践的なアドバイスまで、幅広い内容を扱っています。また、選曲に関する「同じ作曲家の曲は最低2曲続けて選ぶ」という具体的なアドバイスは、作曲家の特徴を理解するうえで有用です。
‣ 内容構成の特徴
本書は5つの主要セクションで構成されています:
1. 基礎技術の確立(指のフォームや基礎練習)
2. 効果的な練習方法
3. 舞台演奏に向けた準備
4. コンクールへの取り組み方
5. 著名な教師や演奏家からの学び
► 効果的な活用方法
本書は一度通読して終わりにするのではなく、以下のようなタイミングで読み返すことで、より深い学びが得られます:
日々の練習に活かす:
・「I ピアノを弾ける指をつくる」の章は、基礎練習の質を高める具体的なヒントの宝庫
・練習の行き詰まりを感じたときは、「II 毎日の練習とレッスンを効果的に、楽しくする」を参考に
演奏機会に応じた活用:
・本番前には「III 舞台で演奏する」の章を読み返す
・アンサンブルの練習を始める前に、関連するアドヴァイスを振り返る
成長の節目での活用:
・壁を感じた時は、「Ⅴ 名教師、名演奏家の教え」を読み返す
・長期の練習計画を立てる際は、様々な練習メニューを見直して取り入れる
モチベーション維持のために:
・「Ⅴ 名教師、名演奏家の教え」で著名な音楽家の言葉に触れることで、音楽への向き合い方を改める
・練習が単調に感じてきた時は、新しい練習アプローチを探す参考に
このように目的に応じて必要な箇所を読み返すことで、本書は成長のヒントとして長く活用できるでしょう。特に、実践と振り返りを繰り返すことで、より深い理解と技術の定着が期待できます。
► おすすめの読者層
・中級~上級レベルの学習者
・今一度、基礎練習の練習方法を見直したい方
・アンサンブル演奏に取り組む方
► 総評
特に著者のアンサンブル経験に基づく記述は、他の演奏指南書には中々見られない独自の価値を持っています。書籍の方向性的に、技術面での説明は必ずしも網羅的ではありませんが、それを補って余りある音楽家としての深い視点が込められています。
・ピアニストの毎日の基礎練習帳 著 : 岩崎 淑 / 春秋社
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