【ピアノ】モーツァルト ピアノソナタ 勝手にランキング5:全曲学習した独断と偏見による
► はじめに
モーツァルトのピアノソナタは全18曲(K.547aやソナタの断片は除く)。筆者はそのすべてを学習してきましたが、どの曲にも固有の魅力があり、単純に優劣をつけられるものではありません。
それでも「どれか一曲選ぶなら?」「次に何を弾けばいい?」と問われれば、やはり答えを持っておきたいところです。そこで今回は、完全に独断と偏見による筆者個人のランキング5を公開します。
選曲の基準は、難易度でも知名度でもなく、純粋に「筆者がモーツァルトのソナタを弾いてきた中で、心に残り続けている作品」です。選曲や演奏の参考に、気軽にお読みください。
► 独断と偏見によるランキング5
‣ 第5位 ピアノソナタ イ長調 K.331
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

作曲年:1783年
第1楽章が中規模な変奏曲、第2楽章がメヌエット、第3楽章がトルコ行進曲という、第1楽章に比重が置かれたソナタ。
気に入っているポイント
特に好きなのは、第1楽章の曲頭の主題(テーマ)です。モーツァルトのピアノソナタ全集をランダム再生にしておいて、ふとこの温かい子守唄のような主題が流れてくると、幸せな気持ちになります。
こんな人におすすめ
第3楽章のトルコ行進曲は学習者全員に弾いてほしい名曲です。また、モーツァルトの全ソナタ中で、緩徐楽章でとられた変奏形式を除けば、純粋な変奏曲は「ピアノソナタ ニ長調 K.284 第3楽章」「ピアノソナタ イ長調 K.331 第1楽章」の2つのみです。「K.331 第1楽章」のほうはより取り組みやすいので、初中級者もぜひ挑戦してみましょう。
演奏ポイント解説記事:【ピアノ】モーツァルト作品の演奏ポイント解説集:譜例付き実践ガイド
‣ 第4位 ピアノソナタ ハ長調 K.545
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

作曲年:1788年
ソナチネアルバム1・ソナタアルバム1に収録の代表的作品。モーツァルト・ソナタ入門に最適。
気に入っているポイント
特に第1楽章は、シンプルでありながら、学習用古典ソナチネとは一線を画す極めて音楽的な傑作です。C-dur(ハ長調)で表現できる世界の広さに驚かされます。この第1楽章があるからこそ、他の名作を押しのけて第4位に入れました。
こんな人におすすめ
モーツァルト・ソナタ入門はもちろん、中級者以上のやり直し教材にも最適です。学習が進んでからこのシンプルながら深く美しい世界を再体験すると、初学時とは異なる発見が山のようにあることでしょう。
この曲は初中級から挑戦できる難易度なので、楽譜は「ヘンレ版」もしくは「原典版準拠の全音版 ソナタアルバム1」を使うのがおすすめです。
→ 楽譜を見る(本記事内の楽譜紹介セクションへ)
演奏ポイント解説記事:【ピアノ】モーツァルト「ピアノソナタ ハ長調 K.545 全楽章」演奏完全ガイド
‣ 第3位 ピアノソナタ ハ短調 K.457
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

作曲年:1784年
「幻想曲 ハ短調 K.475」とセットで演奏されることが多く、ロマン派を感じさせるモーツァルト円熟期の傑作。全ソナタ中2作しかない短調ソナタの一つ。
気に入っているポイント
2005年に放送された「スーパーピアノレッスン モーツァルト編」の中で、講師のフィリップ・アントルモンが「この世のものとは思えない美しさ」と表現していましたが、まさにその言葉通りの傑作です。筆者が特に気に入っているのは、変奏形式による子守唄のような緩徐楽章である第2楽章の美しさで、特に34-37小節には心を奪われます。ここを聴くたびに、音楽があることの幸せを感じ、音楽を続けていて良かったとさえ思わされます。
こんな人におすすめ
このソナタはピアノを弾く全員におすすめしたい作品です。モーツァルトのピアノソナタの最高傑作と言われることもあるこの作品は、中級以降の学習段階になったら必ず学習しましょう。「幻想曲 ハ短調 K.475」とセットで演奏するのもいいですが、まずはこのソナタ単体で学習すると、演奏時間的にも幅広い演奏会での披露が可能になります。
この楽曲は、モーツァルトのピアノソナタの中でも高度な部類に属するので、信頼度の高いヘンレ版を使って学習しましょう。
→ 楽譜を見る(本記事内の楽譜紹介セクションへ)
演奏ポイント解説記事:【ピアノ】モーツァルト「ピアノソナタ ハ短調 K.457 全楽章」演奏完全ガイド
‣ 第2位 ピアノソナタ イ短調 K.310
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

作曲年:1778年 パリ
上記、K.457とともに、全ソナタ中2作しかない短調ソナタの一つ。モーツァルトにしては珍しく ff や pp が出てくるソナタ。
気に入っているポイント
第1楽章のメロディックさと劇的な表現が気に入っています。モーツァルトのピアノソナタではK.576が最高難易度と言われることが多いのですが、個人的にはK.310のほうが苦労しました。
ちなみに、Trio Elogioというギタートリオが、このソナタの全楽章を3本のギターで演奏している動画を公式で公開しています。楽曲の哀愁が滲み出ていて心打たれます。
こんな人におすすめ
メロディックな作品が好きな方に特におすすめです。第1楽章は、モーツァルトの長調作品とは一味異なる哀愁を帯びており、一度聴いたら忘れられない作品になるでしょう。
この楽曲は、モーツァルトのピアノソナタの中でも高度な部類に属するので、やはり信頼度の高いヘンレ版を使って学習しましょう。第1楽章は比較的ゆったりとしたレイアウトがとられていて、譜読みもしやすくなっています。
→ 楽譜を見る(本記事内の楽譜紹介セクションへ)
演奏ポイント解説記事:【ピアノ】モーツァルト「ピアノソナタ イ短調 K.310 全楽章」演奏完全ガイド
‣ 第1位 ピアノソナタ ニ長調 K.311
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

作曲年:1777年 マンハイム
第1楽章がソナタ形式、第2楽章が変奏形式(正式な変奏曲ではない)のロマンス、第3楽章がカデンツァ付きロンド。全楽章にわたって音楽性と華やかさのバランスが取れた、演奏発表会に最適なソナタ。
気に入っているポイント
特に第2楽章のロマンスが気に入っています。モーツァルト全ソナタの全楽章の中で最も気に入っており、本サイトでも度々取り上げてきました。ハイドンの緩徐楽章は美しさの中に驚きを秘めた作品が多いのですが、モーツァルトの緩徐楽章はただただ美しく、その極め付けがこの「K.311 第2楽章」です。
また、K.311は受験やコンクールで弾いた作品でもあり、そういった意味でも思い出深い一曲です。
実際に受験で使っていた楽譜(ヘンレ版)はこちら
→ 楽譜を見る(本記事内の楽譜紹介セクションへ)
こんな人におすすめ
第3楽章は演奏時間約6分で、カデンツァ付きのため、単独で演奏発表会に臨む方に特におすすめです。まるでピアノ協奏曲を聴いているような印象を与え、ソリストとしての存在感を演出できます。本番の時間に余裕があれば、第2楽章とセットで演奏するとなお理想的と言えるでしょう。
演奏ポイント解説記事:【ピアノ】モーツァルト「ピアノソナタ ニ長調 K.311 全楽章」演奏完全ガイド
►【番外編】ランキングには入らなかったが…
‣ ランク外:個人的に「萌える」瞬間がある曲
「ピアノソナタ 変ロ長調 K.333 第2楽章」
32小節目からの展開部の入りが、少しクセのある書法です。f-moll(ヘ短調)のⅤから始まるだけなのですが、冒頭から長く伸びる非和声音が一度に2音鳴らされるため、初めて聴いたときはギョッとさせられました。提示部の終わりの部分から間を置かずに展開部へ入ることも、その驚きを一層引き立てています。
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、30-33小節)

‣ ランク外:弾くと癒やされる曲
「ピアノソナタ 変ホ長調 K.282 第1楽章」
Adagioから始まる変則的な作品で、4楽章制ソナタから第1楽章(Allegro)が省略された構成と考えると分かりやすいでしょう。Adagioでありながら、このソナタの中で最も比重が置かれているのがこの第1楽章です。
非常にカンタービレなメロディがシンプルな伴奏に乗って歌われます。ピアニストが単独でアンコールに弾くこともある、弾くと癒やされる隠れた名曲と言えます。
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

‣ ランク外:お掃除がはかどる曲
「ピアノソナタ 変ロ長調 K.570 第3楽章」
この軽快さと伴奏部分のノリの良さを聴くと、思わずお掃除がしたくなるのは筆者だけでしょうか。ベートーヴェン「ピアノソナタ 第18番 変ホ長調 Op.31-3 第4楽章」にも同じような性質があると思うのですが……。
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

► 失敗しない、モーツァルトのソナタ学習におけるおすすめ楽譜
結論:
・初中級者(ソナタ入門者)→ 原典版準拠の全音版 or ヘンレ版
・中級〜上級者 → ヘンレ版
注意:
・第1巻には「K.279〜K.311」、第2巻には「K.330〜K.576」+「幻想曲 K.475」が収載
・「K.547a Anh.135」は「モーツァルト ピアノ小品集 ヘンレ版(抜粋版ではないほう)」に収載
モーツァルト ピアノソナタ集 第1巻 ヘンレ社
モーツァルト ピアノソナタ集 第2巻 ヘンレ社
モーツァルト ピアノ小品集 ヘンレ版(抜粋版ではないほう)
モーツァルトのソナタ入門者向けの選択肢
モーツァルトのソナタに初めて取り組む初中級者で、まずは手軽に始めたい場合は、全音楽譜出版社による以下の比較的リーズナブルな楽譜を使ってみるのもいいでしょう。
モーツァルトは、「K.545、K.547a(Anh.135)、K.332、K.283、K.331」が収載されています。「原典版準拠」というのがおすすめポイントです。
► 終わりに
以上、独断と偏見による「モーツァルト ピアノソナタ 勝手にランキング5」でした。
全曲を通じて感じるのは、モーツァルトのソナタには「学習教材」という枠に収まりきらない音楽的深みがあるということです。入門曲として弾いた一曲が、数年後に全く異なる表情で聴こえてくる——そういう体験が、モーツァルト学習の醍醐味だと思います。
ランキングに入らなかった曲にも、それぞれ忘れがたい瞬間があります。気になる曲があれば、ぜひ【ピアノ】モーツァルト ピアノソナタ全曲 難易度別選曲完全ガイド もあわせてご活用ください。
以下の記事では、モーツァルトのピアノ作品に関する記事を一覧にまとめました。ピアノソナタの選曲ガイド・難易度解説・演奏ポイント・参考音源レビュー・書籍レビューまで幅広くカバーしており、初級者から上級者まで、学習の目的に応じた記事をすぐに見つけられます。
【ピアノ】モーツァルト ピアノ作品 関連記事まとめ:選曲・演奏解釈・音源・書籍レビュー
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