【ピアノ】モーツァルト 入門最適メヌエット19曲 選曲完全ガイド

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【ピアノ】モーツァルト 入門最適メヌエット19曲 選曲完全ガイド

► はじめに

 

モーツァルトの各種メヌエットは、初級〜初中級のピアノ学習者にとって、古典派音楽の入門として適した楽曲群です。技術的な難易度が適度でありながら、舞曲特有のリズムを体験できたり、音楽的な表現力を養うのに必要な要素が凝縮されています。

本記事では、ヘンレ版「モーツァルト ピアノ小品集」に収載された全メヌエットを解説し、レベルに応じた選曲指導を提供します。

 

► 本記事の執筆基準

 

メインコンセプト

「モーツァルト ピアノ小品集 ヘンレ版(抜粋版ではないほう)」に収載された全メヌエットを網羅的に紹介することで、初級〜初中級者の選曲に多様な選択肢を提供します。特に、一般的にはあまり知られていない作品にもスポットライトを当て、学習者の音楽的視野を広げることを目指しています。

 

対象範囲:

・上記楽譜に収載された全メヌエット
・関連作品3曲(Tempo di Minuetto)も紹介
・上記曲集に入っていないソナタ楽章のメヌエットなどはすべて除外

 

本記事の対象レベルと記載難易度設定:

本記事で紹介している作品の難易度には多少の開きがありますが、概ね「バイエル後半程度からブルグミュラー25の練習曲修了程度」の範囲に収まっています。

・最も取り組みやすい作品を★☆☆☆☆(バイエル後半程度)
・最高難度の作品を★★★★★(ブルグミュラー25の練習曲修了程度)

としたうえで、相対的な評価をしています。

 

その他:

・「曲名」や「3つの区分(A、B、ANHANG)」はヘンレ版の記載を採用
・小節数は「リピート無しの場合の数」を記載

 

► 入門最適メヌエット19曲の解説

 

入門最適メヌエットについて、ワンポイント楽曲解説を紹介します。一言解説は、事典的内容ではなく、技術面における筆者自身の印象を中心にしています。

 

‣ A. DIE WERKE DER JUGENDZEIT(若い頃の作品)

· Menuett G-dur KV 1(1e)

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★★☆☆
小節数:32小節

表現や技術的なポイント:

・両手で同じリズムで動く16分音符の処理
・17小節目以降の多声表現における差の認識

 

· Menuett F-dur KV 2

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★☆☆☆☆
小節数:24小節

表現や技術的なポイント:

・メロディにおける同音連打のニュアンス
・フェルマータから次の小節への移り方

 

· Menuett F-dur KV 4

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★★☆☆
小節数:24小節

表現や技術的なポイント:

・音域変化への音楽的・技術的対応
・多用されるトリルの処理

 

· Menuett F-dur KV 5

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★★☆☆
小節数:22小節

表現や技術的なポイント:

・両手の組み合わせで演奏するパッセージへの音楽的・技術的対応
・3連符と16分音符のチェンジにおけるテンポキープ

 

· Menuett C-dur KV 61g Ⅱ

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★☆☆☆
小節数:36小節

表現や技術的なポイント:

・左手における3度音程の連続の処理
・メロディにおける同音連打の音楽的な処理

 

· Menuett D-dur KV 94(73h)

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★☆☆☆
小節数:24小節

表現や技術的なポイント:

・多用される付点リズムの正確な演奏
・モーツァルトによるアーティキュレーション指示の徹底

 

‣ B. DIE WERKE DES MANNESALTERS(青年期の作品)

· Acht Menuette D-dur KV 315g

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1曲 曲頭)

KV 315gは8曲から構成される充実した内容で、演奏発表会での抜粋演奏にも適しています。

 

表現や技術的なポイント:

第1曲 小節数:32小節 難易度:★★★☆☆

・多用される装飾音符の入れ方
・重くなりやすい左手パートの処理

第2曲 小節数:32小節 難易度:★★★☆☆

・オクターヴのレガートへの肉薄
・トリオの音域変化への音楽的・技術的対応

第3曲 小節数:32小節 難易度:★★★☆☆

・右手における3度音程の連続の処理
・左手における2声的な伴奏部分(11小節目など)の音楽的な処理

第4曲 小節数:32小節 難易度:★★★☆☆

・オクターヴのレガートへの肉薄
・メロディの跳躍への音楽的・技術的対応

第5曲 小節数:32小節 難易度:★★★☆☆

・多様な装飾音の表情の差の認識
・9-16小節における多様な伴奏パターンのニュアンス差の認識

第6曲 小節数:32小節 難易度:★★★☆☆

・多用される装飾音符の入れ方
・重くなりやすい左手パートの処理

第7曲 小節数:32小節 難易度:★★★☆☆

・ムルキーバス(オクターヴの分散)の表情
・両手がハモる部分とオクターヴユニゾンの部分の表情差の認識

第8曲 小節数:42小節 難易度:★★★☆☆

・両手の組み合わせで演奏するパッセージへの音楽的・技術的対応
・付点リズムの正確な演奏

 

· Menuett D-dur KV 355(576b)

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★★★★
小節数:44小節

表現や技術的なポイント:

・ダイナミクスの対比
・3度音程の連続や両手で同リズムで動くパッセージの処理

 

‣ ANHANG(補遺)

· Menuett G-dur KV 15c

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★☆☆☆
小節数:20小節

表現や技術的なポイント:

・2声的なメロディ部分(2小節目など)の音楽的な処理
・メロディの跳躍部分への音楽的・技術的対応

 

· Tempo di Minuetto C-dur KV 15f

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★★☆☆
小節数:18小節

表現や技術的なポイント:

・右手における3度音程の連続の処理
・多用される付点リズムの正確な演奏

 

· Minuetto mit Minore A-dur KV 15i/k

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★★★☆
小節数:34小節

表現や技術的なポイント:

・右手における数多い跳躍部分への音楽的・技術的対応
・メロディにおける同音連打のニュアンス

 

· Minuetto F-dur KV Anh.109b Nr.4(15m)

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★★★☆
小節数:20小節

表現や技術的なポイント:

・3連符とロングトリルと16分音符のチェンジにおけるテンポキープ
・上下広く使われた音域における表現の差の認識

 

· Minuetto G-dur KV 15y

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★★☆☆
小節数:20小節

表現や技術的なポイント:

・様々な音価による装飾的なパッセージへの対応
・伴奏部分における同音連打のニュアンス

 

· Tempo di Minuetto Es-dur KV 15cc

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★★★★
小節数:61小節

表現や技術的なポイント:

以下のような様々な課題への音楽的・技術的対応:

・和音演奏
・跳躍演奏
・装飾的表現
・多声的表現
・両手の組み合わせ演奏
・左手部分で演奏するメロディ

本記事で取り上げている作品の中で最も、音楽的・技術的に充実した作品です。

 

· Minuetto Es-dur KV 15ee

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★☆☆☆
小節数:16小節

表現や技術的なポイント:

・9小節目以降の跳躍的な動きへの対応
・3連符や16分音符などのチェンジにおけるテンポキープ

 

· Minuetto As-dur KV Anh.109b Nr.8(15ff)

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★☆☆☆☆
小節数:16小節

表現や技術的なポイント:

・左右の手の対話表現
・付点リズムの正確な演奏

 

· Tempo di Minuetto F-dur KV 15oo

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★☆☆☆
小節数:18小節

表現や技術的なポイント:

・右手における3度音程の連続の処理
・特にメロディの跳躍部分への音楽的・技術的対応

 

· Minuetto B-dur KV 15pp

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★☆☆☆☆
小節数:20小節

表現や技術的なポイント:

・2音1組のアーティキュレーションのニュアンス
・多用される同音連打のニュアンス

 

· Minuetto Es-dur KV 15qq

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

難易度:★★☆☆☆
小節数:16小節

表現や技術的なポイント:

・多用される同音連打のニュアンス
・右手における単音部分と和音部分の差の認識

 

► 条件別選曲ガイド

‣ 最初の一歩として最適な作品

 

以下の3曲は、バイエル後半程度から取り組める、本記事紹介楽曲の中でも最も技術的ハードルが低い作品です:

・Menuett F-dur KV 2
・Minuetto As-dur KV Anh.109b Nr.8(15ff)
・Minuetto B-dur KV 15pp

いずれも、トリオ(中間部分)を含まないシンプルなメヌエットです。特に「Menuett F-dur KV 2」は広く知られている楽曲であり、参考音源も多く手に入るので、初めの一曲に適していると言えるでしょう。

 

‣ 発表会向け:演奏効果の高い推奨曲

 

以下の3曲は、どれもブルグミュラー25の練習曲中盤〜修了程度の作品ですが、本記事紹介楽曲の中で演奏効果の高いものとなっています:

・Acht Menuette D-dur KV 315g – 全8曲の充実作品 / 数曲の抜粋を推奨
・Menuett D-dur KV 355(576b) – テンポは緩やかで、深い表現を持つ有名作
・Tempo di Minuetto Es-dur KV 15cc – ファンファーレ風の華やかな開始が印象的

 

リピートを省略した場合、各作品とも1〜2分の演奏時間に収まるため、単独演奏はもちろん、複数曲の組み合わせにも適しています。

 

‣ プログラム構成例:効果的な組み合わせ案

 

パターン1:KV 15ccをメインにした華やかな選曲

・Menuett D-dur KV 355(576b)
・Tempo di Minuetto Es-dur KV 15cc

パターン2:両曲共にメインに聴かせるバランス選曲

・Menuett D-dur KV 355(576b)
・Acht Menuette D-dur KV 315g より第4曲など

パターン3:同時代の2人の巨匠のメヌエットの並置選曲

・上記推奨曲より1曲選択(モーツァルト)
・ハイドンの初期メヌエット「Hob.XVI:7 第2楽章」など

参考記事:【ピアノ】ハイドン 入門最適ソナタ9曲 選曲完全ガイド

 

► 推奨楽譜:紹介曲完全収録版

 

モーツァルト ピアノ小品集 ヘンレ版(抜粋版ではないほう)

特徴:

・本記事で紹介した全曲を完全収録
・原典版として最も信頼性が高い
・メヌエット以外にも多くの重要作品を収載し、長期的な学習計画にも対応

 

 

 

 

 

► 発展学習

 

本記事の内容を基盤として、以下のような学習の深化・展開が可能です:

 

楽曲分析のシンプルな教材にする
シンプルな構造のメヌエットは、基本的な楽式を理解する最適な教材となります。

同時代の初級用メヌエットとのセット学習
ハイドン、ベートーヴェンなどの同難易度メヌエットと併せて学習することで、古典派様式の理解を深められます。

より高度なレパートリーへの橋渡し
本記事の作品に習熟した後は、モーツァルトのピアノソナタに含まれるより高度なメヌエット楽章に挑戦することで、継続的な音楽性の向上やレパートリーの拡大ができます。

 

► 終わりに

 

本記事で紹介したモーツァルトのメヌエットは、古典派音楽の美しさを比較的手軽に体験できる貴重なレパートリーです。まずは一曲だけでも挑戦してみてください。

 


 

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