【ピアノ】忙しい人でも実践できる練習時間の作り方
► はじめに
ピアノ練習や音楽学習は継続が鍵です。しかし、仕事、家事、育児など、日々の忙しさに追われ、練習時間を確保できない方も多いでしょう。
本記事では、限られた時間の中で効果的にピアノスキルを磨くための実践的なヒントを解説します。
音楽への熱意を、具体的な時間管理戦略に変換する方法をご紹介します。
► A. 時間管理戦略
‣ 1. 依存の排除
筆者がピアノの練習や音楽学習のための時間を少しでも増やすために最近取り組んだ内容は、依存しているものに距離を置くというもの。
筆者が依存しかけていたのは、ニュースです。
どうもニュースというのは、ネガティヴなネタや我々を脅すようなものが中心で不安にさせられていつまでも観入ったり聴き入ったりしてしまいそうになります。
ある意味、ニュースへの接触は、現実逃避の一種と言えるかもしれませんね。
とうぜん、最低限の情報は取り入れますし、災害や犯罪から身を守るための対策などもするわけですが、1日に何回も何回もチェックする必要はないことに気がつきました。
依存しかけていると、やめるのにもそれなりの苦労が伴います。
筆者がまずやってみたのは、とりあえずいったんやめてみるということでした。
その結果、どれくらい依存しているのかが分かりました。
少し経つと観たい聴きたい気持ちが多少戻ってきてしまったので、iPad上からニュースアプリを消し、PCのブックマークからもいちばんシンプルなひとつのみを残して、他はすべて削除しました。
スマホは元からほとんど触らないので、アプリは入っていませんでした。
依存がそれほど強固ではなかったこともあり、物理的に目の前から減らす手段を取ったところ、無事に距離を置くことに成功。
これをやってみて分かったのですが、驚くほど多くの音楽へ充てられる時間が奪われていました。
筆者の場合はニュースでしたが、各自、必要以上に時間を使ってしまっていることがあると思いますし、しかも、その内容には薄々気づいているはず。
それをいったん、やめてみてください。山ほどあるようでしたら、とりあえず、ひとつやめてみましょう。
「やめられないから依存なんだ」と思うかもしれませんが、接触する時間を減らす努力はしてみてください。
‣ 2. スキマ時間の活用①
「スキマ時間をかき集めると、膨大な時間になる」
これは、まぎれもない事実です。
小学生や中学生の頃、「朝読書」の時間が設けられていませんでしたか?
たった10分程度ですが、その積み重ねは大きな蓄積になったはず。
こういったスキマ時間、1日の中にはたくさん存在するはずです。
その時間を使って練習するのもいいですし、出先であれば、ピアノ関連の書籍を読んでもいいですね。
かき集めた時間をフル活用してください。
ちなみに筆者は、音楽学校へ出校する日は、電車の中でスマホを使って本Webメディアの記事を書いています。
帰りの時間帯なんて超満員ですが、片手さえ空いていれば、つり革につかまっていてもブログは書けます。
「座れなくて辛いな…」なんて思っていても、ブログを書いていればあっという間に最寄りの駅に到着。
「あらゆる条件や道具がそろわないと何もできない」と思わないでください。
どんな環境でも、少しの時間があれば学習したり執筆したりできます。
「職場のお手洗いの中で本を読みましょう」とまでは言いませんが、できる限り、日々の生活の中の眠っている時間をかき集めてください。
‣ 3. スキマ時間の活用②
日々さまざまなイヴェントが入りこんできて、30分ですら練習時間が取りにくく感じる時もあるかもしれません。
そんな時の解決策は、一気に30分の時間が見つからなくても5分のスキマ時間を6つ見つけることです。
集中するためにも、なるべくまとまった時間がとれたらそれに越したことはありません。
しかし、たとえ5分でも何かできるのが、毎日の楽器の組み立ても松脂塗りも不要な、ピアノという楽器の良いところ。
「ピアノの技法―楽しみつつマスターできる」著 : チャールス・クック 訳 : 堀内敬三 / 音楽之友社
という書籍に、初見練習に関する以下のような文章があります。
(以下、抜粋)
1日10分間は1年60時間、5年間に300時間、10年間には600時間になる。
私はこのやり方で初見を3年間(180時間)練習し、そのお陰で驚くべき大進歩をしたのである。
その進歩は練習によっても得られたし、新らしい譜を見た時の喜びによつても得られた。
(抜粋終わり)
これは長い単位における積み上げの話ですが、結局、1日単位で考えても短い時間の積み上げは有効。
筆者は大学院生のとき、ゼミの間の移動時間に友人とアナリーゼをしたり、iPadを使って立ち時間に5分だけ資料を読み込んだり、ということをしていました。
今でもこういったやり方は続けていますし、本Webメディアの記事も時間を分けてちょこちょこ書くことは多いのです。
自宅にいる場合は、そういったスキマ時間の活用をピアノの練習にも使えるわけです。
学習者によってライフスタイルは様々なので、なかなか音楽のための時間を確保できない方がいるのも分かっています。
しかし、結局のところ、まったくのスキマがない人はほとんどいません。
ほんとうにスキマがないのであれば「音楽を続けるのか」という部分から再検討が必要なのでは、とさえ思います。
◉ ピアノの技法―楽しみつつマスターできる 著 : チャールス・クック 訳 : 堀内敬三 / 音楽之友社
‣ 4. 巨匠に学ぶ、朝時間の作り方
「もう少し、音楽のための時間が作れたら」
そう思っている方に、セザール・フランクの実践から学べることがあります。
多忙を極めた彼が選んだ方法は、呆れるほどシンプルでした。
「1時間早起きする」
日中の予定がぎっしり詰まっているとき、フランクは朝の1時間を作曲の時間に充てていました。
簡単に感じるこれだけのことを実行するのも、実は容易ではありません。
しかし、多忙なフランクが実践していただけに、我々が言い訳をすることはできませんね。
筆者も早朝の時間を活用することで、音楽との深い関わりを持ち続けています。具体的には:
「早起きして巨匠の作品を楽曲分析(アナリーゼ)する」
楽曲分析は、作曲や編曲はもちろん演奏する方にとっても有益です。
早起きして、30分でも1時間でもいいので、興味のある巨匠の作品や今取り組んでいる作品を徹底的に見てみましょう。
気付いたことを昼間にピアノで音にしてみることは重要ですが、
同時に、ピアノへ向かっているときには気付けない多くの発見を、机の上で見つける時間も必要不可欠です。
子育て真っ最中にもかかわらず、バリバリ作曲や演奏をこなすスーパー母ちゃんやスーパー父ちゃんは少なくありません。
周りが静かで電話もかかってこない極上の時間を使うことで、
昼間に用事が多い方でも、音楽との深い関わりを持ち続けることができます。
自身のライフスタイルにあわせて、良い時間を、良い音楽のために確保してください。
‣ 5. 練習時間の天引き
やり方自体はシンプルです。
例えば、初心者の方で「毎日、30分練習したい」というケースであれば、
「1日の中からあらかじめ30分抜いてしまって、23.5時間で生活する」
このようにしましょう。つまり「天引き」ということです。
23.5時間あれば、いくら何でも生活できると思いませんか。
「それでもどうしてもムリ」という方は、以下のどちらかまたは両方です:
・やることが多すぎる
・やることの効率が悪すぎる
ピアノの練習をするかどうかも含めて、今一度、自身の生活を見直してください。
どうして天引きしてまでも練習時間を確保すべきかというと、練習できないと実は健康に悪いからです。
・今日も練習できなさそうだ、ということにイライラする
・結局今日も練習できなかった、ということにイライラする
こうして、日常生活の他のクオリティまで下がってしまいます。
ピアノへの情熱の高い方ほど、ストレスは大きなものとなるでしょう。
時間が余ったらピアノ練習に充てようと思っても、絶対練習できません。
不要不急とまでは言いませんが、どうしてもピアノ練習は後回しになりがちなのです。
「子育て」「家事」「仕事」などもあるでしょうから、どこの時間をこじあけるべきかに唯一の答えはありません。
しかし、もし可能であれば「午前中」に練習しましょう。
夜にやろうと思うと色々なことが挟み込まれてきて就寝時間になります。
「午前中など、その日の早めの時間に練習をする」
これを原則としてください。あらかじめ天引きしてあるのですから、不可能ではありません。
► B. 練習メソッド
‣ 6. 練習方法も1in 1out
「一つモノを買ったら、一つ手放す」というのが、汚部屋にしないコツとして知られています。
練習方法も1in 1outがおすすめ。
何か新しい方法を取り入れたら、今までやっていてあまり効果を感じられないやり方を辞めてみましょう。
なかなか練習時間を増やせないのであれば、やることを適切に管理する必要があります。
‣ 7. 基礎練習の効率化
練習時間での悩みどころは「基礎練習の練習時間」だと思います。
結論から言うと、時間をかけ過ぎる必要はありません。
特にハノンなどの基礎練習をはじから全部こなそうとしてしまうと、毎日たくさん弾くことに注力してしまい、ただの作業になってしまいます。
基本的には「最低限の基礎練習」のみを行い、むしろ楽曲に取り組んでいくことへ意識を向けてください。
そして、楽曲の中で表現したい内容のために必要なテクニックが出てきたら、そこで逆引き辞書的に基礎練習に戻る、というのが順序としては効果的です。
‣ 8. 好きな部分だけ弾くことの問題
すでによく弾ける好きな場所 “だけ” 気持ちよく弾くクセを直してやめると、まだ出来ていない部分に使える新たな練習時間を作ることができます。
結局、昔の筆者も含めて結構の学習者は、弾けるところを気持ち良く弾くことに時間を使い過ぎです。
楽しんで弾くことが大切なのは分かりますが、上手く弾けないところが弾けるようになって楽曲全体のことが分かるようになると、もっと大きな楽しさが待っています。
練習割合の配分を、よく弾けるところからまだまだのところへと移動させてみてください。
筆者は昔、ヴァイオリンの個人レッスンを受けていたことがあり、同時に学生オケにも入っていました。
オーケストラのヴァイオリンパートは、ファーストヴァイオリン、セカンドヴァイオリン問わず脇役に回ることもあります。ソロ演奏ではないので当然ですね。
その当時、個人練習のときにメロディが出てくるところばかり気持ちよく弾いて練習を終わりにしていました。
とうぜん大して上達せず、学生オケ、そして、個人レッスンを受けるのも辞めてしまいました。
► C. マインドセット
‣ 9. なぜ、ちっとも練習時間がとれないのか
その理由はシンプルで、時間がないフリをしているからです。
筆者の知り合いに、子育て真っ最中にも関わらず、バリバリ作曲や演奏をこなすスーパー母ちゃんやスーパー父ちゃんが何人もいます。
全員に共通していることはただ一つで、非常にタイムコンシャス(時間に対する意識が高い)ということ。
明らかな空き時間を上手く使うだけでなく、すでに入っている外せない予定の周辺も上手く管理して時間を作り出しているようです。
筆者自身は、自分の家でないと作曲しないタイプなので、このWebメディアの記事などは主に移動中や外出中に書いています。
その他、あらゆることを管理して、自宅にいるときはなるべく五線紙へ向かえる時間を増やすように心がけています。
「数分すら確保できなくて、メールを1週間返せませんでした」
などと言い訳しているのと変わらないような状態を自分で作らないでください。
やりたいのであれば「そこに優先順位をもつ」という決意が大切だと考えています。
‣ 10. 練習時間はこじあけられる
結局のところ、本当にピアノが好きだったら練習時間はこじあけられます。
斎藤工さんという有名な俳優がいますよね。
忙しい時でも毎日映画を2〜3本観るのだそう。ブレイクしてからも継続しているそうです。
普通に考えたらたいへんですよね。
しかし、自身の仕事に直結する勉強であるということと、超がつくほどの映画好きだということで、本人にとっては当然のように毎日の生活に組み込まれているのでしょう。
もし本当にピアノが好きであれば、たとえ30分であっても、毎日の中に練習時間をこじあけてみてください。
好きでしたら「こじあける」という言葉さえ不要かもしれませんね。
‣ 11. 優先順位の設定
前述のように、練習時間を増やしたいのであれば、何かをやめる必要があります。
日常の中で、何かやめられることはありますか?
もちろん子育てはやめられませんが、筆者の友人は小さな子供を抱えながら、片手のためのピアノ曲を弾いていました。それもできなければ、別の案をどうにか考える。
それでもどうしてもピアノへ向かえない場合は、「ピアノに向かわずにできること」を見つけておきます:
・膝の上で楽譜を読むことはできるかもしれません
・優れた音楽家のCDを聴く時間は作れるかもしれません
・昨日の練習の反省を頭の中で整理することはできるかもしれません
さらに:
・同じような境遇の友人に、どのように時間を確保しているかきいてみた事はありますか?
・練習の質自体を上げて解決できる内容はありませんか?
・多めに時間をとれる曜日があったら、比重を変える事はできませんか?
何でも工夫次第です。
► 終わりに
大切なのは小さな一歩を毎日積み重ねること。
たとえ5分でも、10分でも、積み重ねることで確実に成長につながります。
楽しみながら前へ進んでいってください。
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