【ピアノ】ひたすら弾き直しをしてしまう思考停止癖への対処法

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【ピアノ】ひたすら弾き直しをしてしまう思考停止癖への対処法

► はじめに

 

ピアノの練習において、「度重なる同箇所の弾き直し」は多くの人が陥りがちな良くないクセ。無意識のうちに同じミスを繰り返し、練習の質を下げてしまうことがあります。

本記事では、効果的な練習方法と思考停止を避けるためのアプローチを詳しく解説します。

 

► 過度の弾き直し対策と練習のヒント

‣ 1. 弾き直してまた弾き間違えるパニック状態を抜け出す

 

「弾き間違いをしたら、すぐ弾き直さず、少しでも間(ま)をとる」

これを意識してください。

 

練習の中で弾き間違いをすると、正しいポジションを確認しようと弾き直しをしますね。ここまでは大きな問題はありません。

しかし、弾き直してまた弾き間違えるとムキになって再度弾き直しがちですが、この繰り返しが危険なのです。変なクセがつくだけです。

 

「とりあえず弾き間違えない」という結果を得て安心しようと、全てのことを忘れて弾き直しに終始してしまう。負のスパイラルであり、一種のパニック状態。

特に、大きな跳躍などのミスタッチが発生しやすい箇所で、このようになってしまうケースが多いようです。

 

改善方法としては、繰り返しますが「弾き間違いをしたら、すぐ弾き直さず、少しでも間(ま)をとる」ということが重要。

すぐに安心したい心を押さえて一度立ち止まりましょう。正しい音に当たるまで無闇に弾き続けるのは、本当に意味のないことです。

 

‣ 2. 塩塗り療法的アプローチの危険性

 

「ピアノの技法―楽しみつつマスターできる」著 : チャールス・クック  訳 : 堀内敬三 / 音楽之友社

という書籍に、以下のような文章があります。

(以下、抜粋)
「同じ部分を二度弾いてはいけない。」(レシェティツキー)
(中略)
この大家は、今の言葉の意味を明らかにする為に、なお次の様に語つている。
「一つの部分を弾いたら今度は音を出さずに心の中でそれを鳴らして聞いてみるがよい。それからもう一度弾くのである。」
(抜粋終わり)

 

これは練習全般に対しても言えますが、一番は、弾き間違いをしたときに当てはまることでしょう。

つまり、練習に塩塗り療法的な解決を求めてはいけないということです。

 

本来の塩塗り療法自体は意味のあることかもしれませんが、少なくともピアノ練習においてはマイナス。

「弾き間違い」という傷口に、何度も「ムキになった弾き直し」という塩を塗って治そうと思っても一向に治りません。

たまにうまくいってもそれは次につながらないですし、悪化する可能性の方が高い。

 

だからこそ、レシェティツキーが言うように「一つの部分を弾いたら今度は音を出さずに心の中でそれを鳴らして聞いてみて、それからもう一度弾く」ようにすべきなのです。

 

◉ ピアノの技法―楽しみつつマスターできる  著 : チャールス・クック 訳 : 堀内敬三 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 

‣ 3. 思考停止でさらいまくらないためのヒント

 

ずっと前のことになりますが、巨匠ピレシュがテレビ番組の中で「マシンガンのように弾き直し弾き直し弾き直しさらう練習の無意味さ」を指摘していました。

そのような練習では、楽曲が変わるとすぐに使えなくなってしまうという理由で。

 

例えば英単語でも、単語だけで暗記していくと忘れる上に応用が利きません。しかし、カタマリとして覚えておくと、「必要だから使った単語」ということで単語としての定着が良くなり、応用も利く。このことを、伝説の名教師、伊藤和夫先生が指摘しています。

抜き出した同箇所を思考停止でマシンガンのように弾き直すのは、英語で言う、単語だけで暗記しようとしている行為。使われる状況とセットで頭を柔軟にしながら練習しなくては身につきません。

 

弾き直しの練習に関して必ず意識すべきなのは:

・音楽を表現するためにそのパッセージがある、という意識を持ってさらう
・英単語の例のように文脈から切り離して練習せず、フレーズの頭から弾き直す

ということです。

 

‣ 4. フレーズの文脈を意識した弾き直し

 

特定のところがうまく弾けなかったとします。

部分練習をするために弾き直しをするかと思いますが、この時にどこから弾き直すのかがポイントになってきます。

 

よく見受けられるのが、「まさにその場所から弾き直す」というもの。

しかし、音楽には「流れ」というものがあるので、これでは音楽が分からないですし、うまく弾けなかった原因を見つけることもできません。

 

どうすればいいかというと、「うまく弾けなかったところが含まれているフレーズの最初」に戻ればOK。

文脈を意識した弾き直しをすることを心がけてください。

フレーズの最初でつまづいたのであれば、当然すぐ直前であるフレーズの頭から弾き直して構いません。

 

‣ 5.「練習のための練習」を避ける方法

 

練習のための練習とは、「練習そのものを目的にしてしまっていること」を指します。

思考停止した弾き直しの連続は、もちろん、練習のための練習。

他にも例えば:

「毎日2時間練習しよう」と決め、「2時間を越えないと」ということで頭がいっぱいになる
・集中力が切れても、ただ指先だけを動かして時間が過ぎるのを待つ

などといったようなケースが当てはまります。

 

これらのような無意味な練習を避ける方法として有効なのは、一度立ち止まって、今取り組んでいる楽曲における以下の3点を紙へ書き出してみることです:

・理解ができていないと気付いていたのに放っておいたところ
・しっくりきていないと感じていたのに放っておいたところ
・テクニック的に補強すべき部分が分かっていたのに放っておいたところ

 

こういったことを放っておいたままの練習というのは、言ってみれば:

・やった感を感じることで、上達を祈っているだけ
・うまく弾けるところを気持ちよく弾いているだけ

ということになります。

この書き出しをやらないと、「とにかく時間を達成すること」に追われ続けることになってしまうでしょう。

 

ぜひ紙への書き出しを行なってください。

言葉にすることで、書き出す過程で自分の頭が整理されます。それに加えて「視覚化 & 一覧化」するので、一層整理の効果が高まります。

良い練習をするポイントは「言葉の有効活用」です。

 

► 終わりに

 

本記事で紹介したテクニックは、機械的な練習から創造的な学びへの転換を促すものです。

自分のクセに気づき、意識的に改善することで、より深い音楽理解と表現力を手に入れることができるでしょう。

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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