【ピアノ】ドキュメンタリー映画「グレン・グールド エクスタシス」レビュー:グールドの全貌に迫る映像記録

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【ピアノ】ドキュメンタリー映画「グレン・グールド エクスタシス」レビュー:グールドの全貌に迫る映像記録

► はじめに

 

1995年にカナダで公開されたドキュメンタリー映画「グレン・グールド エクスタシス(Glenn Gould extasis)」は、20世紀を代表するピアニスト、グレン・グールドの芸術と人生に多角的に迫った貴重な映像記録です。

本作の特徴は、グールド自身の演奏映像だけでなく、彼を取り巻いた様々な立場の人々——演奏家、作曲家、批評家、マネージャー、秘書、編集者——による多面的な証言が収録されている点にあります。これにより、一人の芸術家の複雑な人物像が立体的に浮かび上がる構成となっています。

 

・公開年:1995年(カナダ)
・監督:ジョスリン・バルナベ
・ピアノ関連度:★★★★★

 

 

 

 

 

 

► 内容について

‣ 演奏記録としての価値

 

本作には、グールドの代表作として知られるJ.S.バッハの「ゴールドベルク変奏曲」をはじめとする貴重な演奏映像が収録されています。特に注目すべきは、死の直前に録音された最後の「ゴールドベルク変奏曲」の映像です。グールドは1955年のデビュー盤でもこの作品を取り上げており、彼の音楽人生の始まりと終わりを象徴する作品となりました。本作では、なぜグールドがこの作品を特別に愛したのかという問いにも踏み込んでいます

若い頃の演奏から晩年に至るまで、全時代のエピソードが網羅されているため、グールドの演奏スタイルや解釈の変遷を追うことができます。録音スタジオでの仕事の様子だけでなく、練習風景まで含まれている点も、彼の音楽を理解するうえで重要です。

 

‣ 音楽家としての多面性

 

本作は、グールドが多様な音楽的関心を持った芸術家であったことを明らかにしています。彼自身が手がけた編曲作品、例えばラヴェルの「ラ・ヴァルス」なども取り上げられており、グールドの創造的な側面が垣間見えます。

さらに注目すべきは、ベートーヴェンの「交響曲 リスト編曲版」の録音風景です。このような規模の大きい編曲作品への取り組みは、グールドが果たした重要な仕事の一つであり、本作はそれを見逃していません。また、現代音楽への関心も深く、映画公開当時存命だった作曲家「ジャック・エテュ(1938-2010)」とのエピソードも紹介されています。これらの記録は、グールドが古典的なレパートリーだけでなく、同時代の音楽にも関わっていた事実を示しています。

 

‣ 独自の奏法と音楽哲学

 

作中では、グールドの特異な奏法や音楽に対する考え方が、様々な角度から分析されています。あるヴァイオリニストの言葉として「グールドが暗譜できるというのは、作品を理解しているから」という発言が紹介されており、グールドの徹底した楽曲理解と記憶力の良さも伝わってきます。

また、グールド自身が語るレコーディング演奏の難しさについての映像も含まれています。彼は録音技術を芸術の一部として捉え、スタジオでの完璧な演奏を追求した先駆者でした。

 

‣ 孤独な天才の人間関係

 

グールドは孤独を好む人物として知られていましたが、本作では彼にも親友がいたことが明かされており、別の側面を知ることができます。偏った私生活を送っていたと言われる彼ですが、限られた人々との交流があったことが分かります。

 

‣ 30歳でのコンサート活動引退宣言

 

本作が深く掘り下げているテーマの一つが、グールドが30歳でコンサート活動からの引退を宣言し、32歳で実際に演奏会を完全に辞めた理由です。知人の証言を通じて、この決断に至った背景も語られています

グールドは、毎回状況が変わるコンサート形式に疑問を持ち、録音という媒体を音楽の理想的な伝達手段だと考えるようになりました。

 

► 終わりに

 

グールドの演奏が好きな方はもちろん、一人の芸術家がどのように自らの道を切り開いていったのかを知りたい方にとって、必見の作品と言えるでしょう。本作を通じて、グールドがなぜ20世紀の音楽史に不滅の足跡を残したのかが見えてきます。

 

 

 

 

 

 

 


 

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