【ピアノ】ブルグミュラー25の練習曲程度で弾ける古典派変奏曲3曲:3分以内
► はじめに
変奏曲は主題と複数の変奏から構成される音楽形式で、特に古典派時代に大きく発展しました。同一の主題が様々な装飾や変化を施されながら展開される様子を楽しむことができ、演奏者にとっても聴衆にとっても魅力的なジャンルです。
しかし、多くの変奏曲は演奏時間も長く、初級レベルの学習者には取り組みにくいのが現状です。そこで本記事では、ブルグミュラー25の練習曲程度の技術で演奏でき、かつ3分以内に収まる古典派の変奏曲を厳選して紹介します。
► 厳選した3つの変奏曲
選曲基準:
以下の3つの観点から慎重に選曲しました:
1. 演奏しやすさ:技術的負担が適切で、楽曲が3分以内に収まること
2. 楽譜の入手性:信頼できる楽譜が容易に入手できること
3. 音楽的価値:レパートリーとして価値のある作品であること
本記事では、明確に「主題と変奏」の形をとっている作品のみを選曲し、「変奏形式(明確な主題と変奏の形式はとっていないけれども、変奏展開していくもの)」は除外しました。
‣ ハイドン「ソナタ ニ長調 Hob.XVII:D1 第1楽章」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1750年代後半-1760年代初頭
演奏時間:第1楽章 – 約2分30秒
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度
作品概要
主題と3つの変奏による小さな変奏曲。各変奏ともに難易度にほとんど差はなく、明るい表情のコロコロした曲想が印象的です。
この楽章単独で演奏するのにも適したバランスの取れた構成ですが、余裕があれば第2-3楽章にも取り組むことで、ハイドンの特徴をより深く知ることができるでしょう。
推奨楽譜
この作品は初級用作品ですが、ハイドンは重要な作曲家なので、今後の長期的な学習計画にも対応できるように多くのソナタが収録された原典版を選ぶのがおすすめです。
ハイドン ソナタ全集 第1巻 ヘンレ版
特徴:
・原典版として最も信頼性が高い
・運指付きで学習に適している
‣ ベートーヴェン「スイスの歌による6つのやさしい変奏曲 WoO 64」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1790年
演奏時間:約3分
難易度:ブルグミュラー25の練習曲後半程度
作品概要
主題と6つの変奏による小さな変奏曲。各変奏ごとの表情の差やダイナミクスの対比が印象的です。内容的にはシンプルな作りですが、オクターヴ演奏が比較的多く出てくる点には注意しましょう。
推奨楽譜
ベートーヴェンも重要な作曲家なので、本来であれば多くの作品が収録された原典版を選ぶのが理想的です。一方、次項目で紹介するクーラウの作品と同一の教育用教材に収載されているので、まずはこちらの楽譜を手に取るといいでしょう。コンクール指定楽譜になることもある、信頼性の高い教材です。
古典派をひこう ソナチネアルバムのまえに 編:武田宏子 / 音楽之友社
‣ クーラウ「6つの小さな変奏曲 Op.42-1」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1821年
演奏時間:約2分
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度
作品概要
主題と6つの変奏による小さな変奏曲。広い音域を駆け回ったり、左手にメロディが移ったりと、短い作品の中で様々な要素を聴かせてくれます。軽さが前面に出た可愛らしくやさしい変奏曲として、初期学習の定番曲となっています。
推奨楽譜
前項目で紹介したベートーヴェンの作品と両曲とも、以下の楽譜に収載されています。
古典派をひこう ソナチネアルバムのまえに 編:武田宏子 / 音楽之友社
► 作品比較表
曲名 | テン ポ |
主な学習効果 | 重点練習ポイント |
---|---|---|---|
ハイドン Hob.XVII:D1 第1楽章 | 中程度 | ソナタ楽章としての変奏曲の経験 | 装飾音演奏の安定性を上げる |
ベートーベン WoO 64 | 中程度 | 付点リズム、性格対比 | セクション毎の性格の違いを明確に弾き分ける |
クーラウ Op.42-1 | 中程度 | 多様な伴奏型への対応 | どんな伴奏型でも軽さを保ったまま弾く |
► 学習順序の提案と練習のヒント
全曲に取り組む場合の推奨順序:
1. クーラウ Op.42-1 – 最も取り組みやすく、変奏曲の基本を学べる
2. ハイドン Hob.XVII:D1 第1楽章 – 変奏曲としてはもちろん、古典派ソナタの入門としても適している
3. ベートーヴェン WoO 64 – ソナチネアルバムに入る前段階として、より表現力豊かな演奏を目指す
学習のヒント
変奏曲の学習ヒントについては、以下の記事で解説しています。
【ピアノ】変奏曲を音楽的に仕上げるための3つのポイントと実践的アプローチ
► まとめ
本記事で紹介した3つの変奏曲は、いずれもブルグミュラー25の練習曲レベルで取り組める貴重な古典派レパートリーです。変奏曲という形式の魅力を味わいながら、各作曲家の個性も学ぶことができます。
短時間で演奏できるこれらの作品は、演奏発表会にも適しており、古典派音楽への理解を深める第一歩として最適です。ぜひチャレンジしてみてください。
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