【ピアノ】ベートーヴェン初級用おすすめ5曲:ブルグミュラー25の練習曲程度で弾ける名曲
► はじめに
ベートーヴェンのピアノ曲と言えば32曲のピアノソナタが有名ですが、実は初級者でも演奏できる美しい小品も数多く残していることはご存知でしょうか。これらの作品は、古典派の様式美を学びながら、ベートーヴェンの音楽性に触れることができる貴重な教材です。
本記事では、ブルグミュラー25の練習曲程度の技術で演奏可能な5曲を厳選して紹介します。
► 厳選した小品
選曲基準:
以下の三つの観点から選曲しました:
1. 演奏しやすさ:ブルグミュラー25の練習曲程度の技術で演奏可能で、楽曲が2分以内に収まること
2. 楽譜の入手性:信頼できる楽譜が容易に入手でき、紹介する全楽曲が一冊にまとまっている実用性を重視
3. 音楽的価値:レパートリーとして長く愛される作品で、古典派の様式を学べる楽曲
また、「エリーゼのために」などの、どのサイトを見ても書かれているような作品は避け、もう少しマイナーでありながらも注目すべき作品を選びました。
‣ エコセーズ ト長調 WoO.23
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1810年頃
演奏時間:約20秒
難易度:ブルグミュラー25の練習曲入門程度
作品概要
前半と後半の対比が印象的な明るい一曲で、比較的良く演奏されます。全24小節のコンパクトな小品です。
表現や技術的なポイント:
・後半部のオクターヴの分散和音の安定性
・アクセントにおける強調の表情
・セクション毎の性格の違いの弾き分け
‣ エコセーズ 変ホ長調 WoO.86
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1825年
演奏時間:約40秒
難易度:ブルグミュラー25の練習曲入門程度
作品概要
特徴的な「♩ ♫」(タンタタ)のリズムが基本となり、sf と組み合わされて、ダンスとしての力強い性格を感じさせます。
表現や技術的なポイント:
・「♩ ♫」(タンタタ)のリズムパターンの正確な表現
・1小節を二つではなく一つでとる感覚
・アーティキュレーションと強調表現
‣ 6つのドイツ舞曲 WoO.42 より 第4曲
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1796年
演奏時間:約30秒
難易度:ブルグミュラー25の練習曲入門程度
作品概要
原曲はヴァイオリンとピアノのデュオ作品ですが、ヴァイオリンパートは省略可能な補足的な書き方がされており、ピアノ単独での演奏が広く行われています。全24小節。
表現や技術的なポイント:
・後半部の右手パートの2音1組によるアーティキュレーション
・後半部の両手パートのハモリとそのバランス
・アーティキュレーションと多声表現
‣ 6つのドイツ舞曲 WoO.42 より 第6曲
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1796年
演奏時間:約1分20秒
難易度:ブルグミュラー25の練習曲入門程度
作品概要
上記の第4曲と同様、原曲はヴァイオリンとピアノのデュオ作品です。広い音域が使われた中間部のトリオを持ちます。
表現や技術的なポイント:
・広い音域を使って動く右手パート
・左手に度々挟み込まれる休符をきちんと守る
・メロディの4分音符部分と8分音符部分の表情の差
‣ 6つのメヌエット WoO.10 より 第2番(ト調のメヌエット)
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1795年
演奏時間:約1分40秒
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度
作品概要
「ト調のメヌエット」の愛称で親しまれています。本記事で紹介している楽曲の中では最も難易度が高いのですが、それでもソナチネアルバムに入るよりも前に演奏できる可愛らしい小品です。
表現や技術的なポイント:
・3度音程や6度音程の連続
・中間部のトリオに出てくる多声的な表現
・付点リズムの正確な表現
► 作品比較表
曲名 | 作曲年 | 演奏時間 | テンポ | 重点練習ポイント |
---|---|---|---|---|
エコセーズ ト長調 WoO.23 | 1810年頃 | 約20秒 | 速め | セクション毎の性格の違いの弾き分け |
エコセーズ 変ホ長調 WoO.86 | 1825年 | 約40秒 | 速め | アーティキュレーションと強調表現 |
6つのドイツ舞曲 より 第4曲 | 1796年 | 約30秒 | 速め | アーティキュレーションと多声表現 |
6つのドイツ舞曲 より 第6曲 | 1796年 | 約1分20秒 | 速め | 広い音域を使った音楽表現 |
ト調のメヌエット | 1795年 | 約1分40秒 | 中程度 | 付点リズム、多声表現 |
► 推奨楽譜
推奨楽譜
ベートーヴェンは重要な作曲家なので、本来であれば多くの作品が収録された原典版を選ぶのが理想的です。一方、実用性を考えると以下の楽譜を手に取るのがいいでしょう。本記事で紹介した作品が「すべて」収載されているうえ、フレージングや装飾音の弾き方なども補足されている実用版です。コンクール指定楽譜になることもある信頼性の高い教材です。
古典派をひこう ソナチネアルバムのまえに 編:武田宏子 / 音楽之友社
► 学習順序の提案
複数曲を練習する場合の推奨学習順序:
・エコセーズより、どちらか1曲
・6つのドイツ舞曲より、どちらか1曲
・6つのメヌエット WoO.10 より 第2番(ト調のメヌエット)
難易度としては、「ト調のメヌエット」がブルグミュラー25の練習曲中盤程度で、他の4曲は、ブルグミュラー25の練習曲入門程度です。したがって、複数曲を練習する場合は、以上のように抜粋選曲をして、最後に「ト調のメヌエット」を学習する順序で取り組むといいでしょう。
► 終わりに
これらの小品は、初級者でもベートーヴェンの音楽に触れることができる貴重な作品です。各楽曲の持つ独特な魅力を理解し、丁寧に練習を積み重ねることで、より高度なベートーヴェンの世界への扉も開かれるでしょう。
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