【ピアノ】J.S.バッハ シンフォニア 第8番 BWV794 全運指付き楽譜と練習のコツ
► はじめに
J.S.バッハ「シンフォニア 第8番 BWV794」は、技術的にも音楽的にも多くの学習要素を含んでおり、学習教材でありながらも、演奏者にとって重要なレパートリーの一つになっています。
本記事では、この楽曲に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
推奨テンポ設定:
練習開始時:♩ = 52-60(正確性と安定性重視)
中間段階:♩ = 60-68(表現力の向上期)
目標テンポ:♩= 70
なぜ、このテンポが適切なのか:
♩= 70 は、以下の特徴があります:
・本楽曲で頻繁に求められる「替え指」が自然に実行できる速度
・楽曲の快活な性格を活かせる、重く聴こえにくい速度
なお、ヘルマン・ケラーは本楽曲についてテンポ指示を残していません。
‣ 演奏上の重要なポイント
· 黒鍵から白鍵へ滑り下ろす運指の活用
譜例(11-12小節)
レッド音符で示した箇所では、運指の都合上、1の指を黒鍵から白鍵へ滑り下ろすテクニックが有効です。この「同じ指による連続」は、「黒鍵→白鍵」の組み合わせで自然に実行できます。
応用範囲:
・レガート奏法、ノンレガート奏法の両方で使用可能
・この楽曲程度の快活なテンポ(♩= 70 程度)でも問題なく使用可能
・他のJ.S.バッハ作品でも他場面で使用できる重要テクニック
· 弾き直し音符の適切な処理
基本的な考え方
同じ音が連続して現れる場合、音楽的文脈に応じて音価を調整する必要があります。
譜例(3-6小節)
4小節3拍目のレッド音符で示したH音のケース:
状況:4分音符で伸びている音の途中で同音(ブルー音符)を弾き直す場面
理想:弾き直すギリギリまで前の音を保持したい
現実:実際にはギクシャクして演奏が困難
解決策:カッコで示した8分休符を補い、そこでレッド音符を切る
このようにどこで指上げをするかを決めておくことで、毎回再現性を保った積み重なる練習をすることができます。
同様の処理が必要な箇所:5小節目、6小節目、17小節目
例外的処理について
譜例の6小節目では、レッド音符D音から伸びているタイの解釈が問題となります。ここでは以下のように処理します:
・ブルー音符からタイが出ていると解釈
・弾き直した音符を指で保持
このような判断には、楽曲構造の理論的理解と実際の演奏経験の両方が必要です。
► 終わりに
本記事で提示した運指や演奏方法を参考に、段階的かつ継続的な練習を心がけてください。
特に重要なのは:
・適切なテンポでの段階的練習
・運指の一貫性
・弾き直し音符の計画的処理
これらのポイントを意識することで、技術的に安定し、音楽的にも説得力のある演奏を目指すことができるでしょう。
この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。
・園田高弘 校訂版 J.S.バッハ シンフォニア BWV787−801
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