【ピアノ】「バッハ 平均律の研究」(共著)全2巻 レビュー

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【ピアノ】「バッハ 平均律の研究」(共著)全2巻 レビュー

► はじめに

 

J.S.バッハの「平均律クラヴィーア曲集」を学ぶとき、どんな参考書を選びますか。

「演奏に活かせる実践的な解説が欲しい」という方には、本書「バッハ 平均律の研究(全2巻)」をおすすめします。本記事では、全2巻の内容をレビューし、他の著名研究書との比較、そして本書をどう活用すべきかを紹介します。

 

・第1巻(ムジカノーヴァ叢書2):矢代秋雄・小林仁 共著(初版:1982年、235ページ)
・第2巻(ムジカノーヴァ叢書19):伊達純・小林仁 共著(初版:1993年、288ページ)
・出版社:音楽之友社
・対象レベル:中級〜上級者

 

・第1巻(ムジカノーヴァ叢書2)

 

 

 

 

 

 

・第2巻(ムジカノーヴァ叢書19)

 

 

 

 

 

 

► 内容について

‣ 本書の特徴:対話形式のアプローチ

 

本書は著名な音楽家同士の対話形式で進行するという構成を採用しています。小林仁氏が「学問的な見地からというよりも実際の勉強、演奏に役立つという観点で話をしてみたい」と述べているように、理論と実践の架け橋となる、演奏者のための参考書です。

各執筆者が独自の音楽観をもとに意見を交わす対話形式は、一方的な解釈の押し付けではなく、読者自身が多角的な視点から作品を捉え直す機会を提供してくれます。親しみやすい語り口で進むため、難解になりがちな分析書を敬遠していた演奏者にも手に取りやすい一冊と言えるでしょう。

 

‣ 各巻の構成と内容

 

第1巻は平均律第1巻の全24曲、第2巻は平均律第2巻の全24曲扱っています。それぞれ導入部で重要な基礎知識を提供しています。

平均律の第2巻を勉強するのであれば、当然本書も2巻が必要です。一方、第1巻の導入部は特に有益なので、いずれにしても第1巻は必ず手に取ってみましょう。

 

「第1巻」導入部の3章(必読)

「はじめに」

「その成り立ちとエディションについて」
・作品の歴史的背景、想定されていた鍵盤楽器、そして実践的な版選びのポイントを解説
・ブゾーニ版、ツェルニー版など様々な版についての率直な意見が展開

「フーガについて」
・フーガの基本構造の解説や、J.S.バッハがその基本構造からどう逸脱し独自の世界を築いたかを解説
・フーガの暗譜のコツや、主題を単に強く弾くのではなく音楽的に表現する方法など、実践的なアドバイスも

 

注意点

「フーガについて」の章は譜例がありません。基本用語を未習得の方は「楽式論 著:石桁真礼生 / 音楽之友社」などの併読を推奨します。→ 詳しいレビューを読む

 

各曲解説の特徴

各番号につきプレリュードとフーガを合わせて10ページ弱の分量で、従来の分析書よりもはるかに演奏寄りの解説が展開されます。ペダリング、和声を捉えた音楽的な演奏のコツなど、譜面を前にすぐ実践できる内容が、対談形式で親しみやすく語られます。

 

‣ 他の著名研究書との比較

 

平均律研究の分野では、以下の2冊が特に著名です。

項目 ケラー「バッハの平均律クラヴィーア曲集」 市田儀一郎「平均律クラヴィーア 解釈と演奏法」 本書
一曲あたりの情報量 少なめ 最も多い 中程度
文章の情緒性 豊か やや豊か かなり豊か
特化度 バッハ論中心に、分析+演奏法も 分析+演奏法 分析を踏まえたうえで、話の中心は演奏法

 

本書の立ち位置

分析自体は市田版ほど詳細ではないものの、演奏法は充実。ケラー版より実践的。そして何より、対話形式による人間味あふれる情緒性が最大の特徴です。演奏法に重点を置きながらも、分析をしっかり踏まえているバランスの良さが際立ちます。

 

► こんな人におすすめ

 

・平均律を学習するすべての方
・硬い分析書に挫折した経験のある方
・詳細分析よりも、版の選び方や実践的な演奏法を知りたい方
・J.S.バッハをピアノで弾くことの意味を考えたい方

 

► 終わりに

 

「バッハ 平均律の研究(全2巻)」は、学術的専門性と演奏実践の間の理想的なバランスを実現した研究書です。対話形式という親しみやすさの中に、著名音楽家たちの深い洞察が凝縮されています。

平均律という不朽の名作に向き合うすべての学習者にとって一読の価値がある、「演奏者のための研究書」です。

 

・第1巻(ムジカノーヴァ叢書2)

 

 

 

 

 

 

・第2巻(ムジカノーヴァ叢書19)

 

 

 

 

 

 


 

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