【ピアノ】二つの素材で作られた曲の分析方法:ベーム「メヌエット ト長調」を例に

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【ピアノ】二つの素材で作られた曲の分析方法:ベーム「メヌエット ト長調」を例に

► はじめに

 

「素材の反復」に着目することで、音楽作品の構造を理解するヒントになります。

本記事では、ベーム作曲の「メヌエット ト長調」を例に、限られた素材がどのように組み合わされ、一つの楽曲として成立しているかを詳しく分析していきます。

 

► 楽曲概要

 

作品情報:

・曲名:メヌエット ト長調
・作曲者:ベーム
・形式:メヌエット(3拍子の舞曲)
・調性:ト長調
・全体の長さ:28小節
・プレ・インベンション 第41番

基本的な特徴:

・テンポ:原典版には記載なし Moderato程度だと考えられる
・拍子:3/4拍子
・演奏時間:約1分30秒程度

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)  ※素材aとbの境目は小節線を太線にしています

 

► 詳細分析

‣ 素材の特定

 

本楽曲は主に2つの基本素材から構成されています:

素材a(4小節)

特徴:跳躍進行を基調とした動き
リズム:4分音符を中心とした動き

素材b(4小節)

・特徴:順次進行を基調とした対照的な動き
・リズム:8分音符を含む、より変化に富んだ動き

 

‣ 構造分析

 

楽曲の全体構造は以下のように整理できます:

第1部(1-8小節)

・a(1-4小節):ドミナント終結
・b(5-8小節):ドミナント終結

第2部(9-16小節)

・a(9-12小節):ドミナント終結
・a(13-16小節):トニック終結

第3部(17-28小節)

・b(17-20小節):ドミナント終結
・a(21-24小節):ドミナント終結
・b(25-28小節):トニック終結

 

2種類の素材の繰り返しばかりなので、全体構成を把握する際に迷うかもしれません。しかし、反復小節線の位置やトニックの位置に着目すると、このように分析することができます。

クライマックスへ向かっていくような大きな展開があるわけではなく、似ているところをグルグルしているメリーゴーランドやオルゴールのような楽曲です。

 

‣ 反復技法の分析

 

本楽曲で使用されている主な反復技法:

単純反復:

・素材をそのまま繰り返す箇所
・例:5-8小節と17-20小節 など

変奏的反復:

・装飾音や和声の変化を加えた反復
・例:5-8小節と25-28小節 など

 

► 教育的観点からの考察

‣ 学習のポイント

 

形式理解:

・限られた素材の反復による形式

演奏への応用:

・同じ素材の反復時の表現の工夫
・変奏箇所における変化の整理を徹底し、暗譜に備える

作曲や編曲の学習への応用:

・限られた素材での展開方法
・効果的な反復の使い方

 

‣ 実践的な活用法

 

分析手順の確立:

1. 基本素材の特定
2. 反復パターンの把握
3. 変奏方法の理解

他の楽曲への応用:

・バロック期の舞曲
・古典的なソナチネやソナタの分析
・現代の反復音楽の理解

 

► まとめ

 

本分析を通じて、以下の点が明らかになりました:

・限られた素材(aとb)の巧みな使用
・反復と変奏による楽曲の発展
・明確な構造による聴き手への分かりやすさ

これらの知見は、他の楽曲分析や演奏表現の参考となるでしょう。

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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