【ピアノ】「ピアノの技法―楽しみつつマスターできる」レビュー:実践的で身近なピアノ学習法

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【ピアノ】「ピアノの技法―楽しみつつマスターできる」レビュー:実践的で身近なピアノ学習法

► 概要

 

・出版社:音楽之友社
・邦訳初版:1954年
・ページ数:256ページ
・対象レベル:初級~中級者

 

・ピアノの技法―楽しみつつマスターできる 著 : チャールス・クック  訳 : 堀内敬三 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 

► 本書の特徴と魅力

‣ ユニークな著者の視点

 

本書の著者チャールス・クックは、プロの音楽家ではなく、ピアノに精通した記者という異色の経歴の持ち主です。この「アマチュアの視点」が本書の大きな特徴となっており、生涯学習者としての深い洞察と実践的なアドバイスが随所に散りばめられています。

 

‣ 実践的な練習方法の提案

 

著者は具体的な練習方法を数多く提示しています。特に印象的なのは、一曲の練習における「5回法」です:

・最初の2回:ゆっくりとしたテンポで
・3回目:正しいテンポで
・残りの2回:再度ゆっくりと

この「ゆっくり」を重視しつつも、「速く」をゼロにしない方法は、曲の確実な習得と技術の定着を目指す上で、理にかなったアプローチと言えます。

 

‣ 効率的な練習時間の配分

 

著者は1日の練習時間を以下のように3分割することを提案しています:

・楽曲練習(最も多くの時間を割く)
・テクニック練習
・初見練習

特に初見練習については、「1日10分」という具体的な時間設定と、その積み重ねの効果(3年で180時間)を示し、長期的な上達の道筋を明確に示しています。

 

‣ 音楽的な洞察の深さ

 

本書には、技術的なアドバイスだけでなく、音楽への深い理解と愛情が表れています:

・「一つの曲が他のどの曲とも異なっているのは、一人の人間が他のどの人とも異なっているのと同じ」
 → この表現は、各曲の個性を理解することの重要性を説いている

・「ピアノが上達するに従って友達のサークルが大きくなる」
 → この指摘は、ピアノを通じた人間関係の広がりに音楽の喜びを見出すことを説いている

 

► 評価できる点

 

・技術面と音楽性のバランスの取れた内容
・具体的な練習方法の提示
・マインドセットも含めた、長期的な上達を見据えた指導内容
・名手たち(バックハウスなど)の言葉を効果的に引用

 

► 気になる点

 

・1954年の邦訳ということもあり、現代の読者にとっては言葉遣いが古く感じられる箇所がある
・引用されている演奏家の一部が現代の読者にはなじみが薄い可能性がある

 

► 結論

 

本書は、テクニック指南書の域を超えて、音楽を楽しみながら上達するための本質的な指針を提供しています。古い訳という特徴はありますが、その内容の本質は現代でも十分に通用する普遍的な価値を持っています。

技術的な向上だけでなく、音楽を通じたピアノライフの豊かさを実感できる貴重な一冊と言えるでしょう。練習方法や時間配分など、具体的なアドバイスも実践的で、独学での学習にも大いに役立つ内容となっています。

 

・ピアノの技法―楽しみつつマスターできる 著 : チャールス・クック  訳 : 堀内敬三 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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