【ピアノ】ピアノ学習における二項対立思考との付き合い方

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【ピアノ】ピアノ学習における二項対立思考との付き合い方

► はじめに

 

ピアノを学んでいると、「量か質か」「表現かテクニックか」といった選択を迫られる場面に出会うことがあります。このような二者択一的な考え方は、一見すると物事を整理しやすくしてくれますが、実際には学習の可能性を狭めてしまう場合があります。

本記事では、ピアノ学習でよく見られる二項対立思考の例を挙げながら、より豊かな学習につながる統合的なアプローチについて考えてみましょう。

 

► よく見られる二項対立思考

‣「量か質か」という偽の選択

 

練習について最もよく議論されるのが「量か質か」という問題です。

 

よくある思考パターン:

「たくさん練習すれば上手くなる」vs「短時間でも集中すれば十分」
「量をこなすと雑になる」vs「質ばかり考えると上達が遅い」

 

「量ばかりを目まぐるしくこなすことによって質が落ちている」という状況は問題ですが、これは単にやり方が良くないだけです。実際にピアノが上達している人を観察してみると、多くの場合「質の高い練習を継続して行っている」ことが分かります。つまり、量と質は対立するものではなく、両方を追求することで相乗効果が生まれるのです。

 

具体的なアプローチ:

・質を確保して、徐々に量を増やしていく
・量をこなしながら、できる限り質も上げていく

どちらのアプローチが合うかは人によって異なりますが、重要なのは「意識的に」両方を追求する姿勢です。

 

‣「表現かテクニックか」という誤解

 

もう一つの典型的な二項対立が「表現かテクニックか」という議論。

しかし、これも本質的には偽の選択です。表現したいことがあった時に、それを実現するためのテクニックが必要になるからです。「一方を手に入れるためには、もう一方の力も借りなければならない」のが実情です。

「ものすごいテンポで弾いているけれど、音楽が空っぽ」といった、一見テクニックへ偏った演奏に出会うことがありますが、こうした演奏は「表現かテクニックか」の問題ではなく、「表現もテクニックもまだ不十分な演奏」と捉える方が建設的でしょう。

 

‣「簡単な答え」を求めたがる傾向

 

「上手い演奏とは何ですか?」「良い解釈とは何ですか?」など、複雑な問題に対して単純明快な答えを求める傾向も、二項対立思考の一つの現れです。

何でもかんでも0か100の単純な一言でまとめたがる方がいます。しかし、こうした思考を持つ方の多くは、日頃から「答えを教えてくれ」という受動的な考えで生きているのでしょう。自分で考える習慣がある方は、そんなものにたった一つの答えはないことをとっくに理解しています。

 

音楽は多面的で主観的な要素も含む芸術です。状況や個人の価値観によって「良い」の基準は変わります。一つの正解を求めるよりも、多様な観点から考察していく過程こそが重要なのではないでしょうか。

 

► なぜ、二項対立思考が生まれるのか

 

複雑さを避けたい心理

ピアノ学習は多くの要素が絡み合う複雑なプロセスです。リズム、指の動き、ペダリング、音楽理論など、同時に考慮すべき要素が山ほどあります。このような複雑さに直面したとき、人は自然と「どれか一つに集中しよう」と考えがちです。これは脳の負担を軽減するための自然な反応とも言えるでしょう。

 

短期的な成果を求める傾向

現代社会では即効性のある解決策が重視される傾向があるので、「これさえやれば上達する」という単純な答えを求めてしまうのは、ある意味で自然な反応です。

しかし、ピアノ学習は長期的なプロセスであり、複数の要素を段階的に統合していくことで上達が実現されます。せめて「”今は” これだけを集中してやる」という視点に切り替えてみましょう。

 

自分の弱点への不安

時として、自分が苦手とする分野に対する不安から、その重要性を過小評価したりすることがあります。例えば、指の敏捷性に不安がある学習者が「表現が一番大切」と強調したり、その逆のパターンも見られます。

 

► よくある質問と回答

 

Q:「量と質の両立」と言われても、練習時間に限りがある

A:限られた時間の中でも、練習の質を意識することで両立は可能です。例えば、長時間のぶっ続け練習を避け、短い休憩を挟みながら集中度の高い練習を重ねる方法があります。これは練習時間を減らすのではなく、「集中した練習時間を増やす」アプローチと言えるでしょう。

 

Q:「テクニック」重視の情報を見ると、そちらに気が向いてしまう

A:それは自然なことです。本記事で言っているのは、「表現かテクニックか」というように二項対立にしてどちらか「だけ」を選ぼうとする逃げの態度を改めようということです。テクニック的な観点が際立った発信を見て触発されても、それ以外の要素を追求しようとする姿勢を忘れなければ問題ありません。

 

► 終わりに

 

ピアノ学習における二項対立思考は、複雑な現実をシンプルに理解したいという自然な欲求から生まれます。しかし、上達は複数の要素を統合することで実現されます。

重要なポイント:

・様々な要素が関わり合う複雑さを増していく学習プロセスを受け入れる
・他の学習者や指導者の多様なアプローチから学ぶ
・自分なりの統合的な練習方法を見つける

 

二項対立的な枠組みに縛られることなく、様々な要素を統合しながら、自分の学習方法を追求していきましょう。

 


 

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