具体例で見てみましょう。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、38-44小節)
H音のオルゲルプンクトの上に
不吉な響きをもった不協和な和音が乗ってきて
非常に混沌とした響きが続きますが、
42小節目からハイドン(HAYDN)のテーマが顔を見せて
まもなく協和の世界へ戻ります。
不協和の中からハイドンのテーマが
グラデーションされてくる
浄化されていくような音楽となっています。
(再掲)
こういった音楽表現って、ピアノならではのもの。
多数の楽器がいるアンサンブルであれば
管弦打楽器を使っても表現できますが
ソロでこのような表現を出せる楽器は他にはいません。
同じ鍵盤楽器でも
オルガンのような
音が減衰していかない楽器では
このようなグラデーション効果は表現できない。
強いていえば、
ペダルを使ったヴィヴラフォンが
似たような効果を出せなくはありませんが…。
しかし、
ピアノでは
譜例のように幅広い音域を使えて
チェンバロのような弦をはじく楽器とも異なる減衰効果を出せて、
かつ、ペダル効果も表現できる。
これらのような特徴がそろっているからこそ、
譜例の箇所のような美しさが出てくるのです。
「ピアノが上手になる人、ならない人」(著 : 小林 仁 / 春秋社)
という書籍では、
シューマン自身が「予言の鳥」の中で書き残した、濁りが生じてしまうペダリング
について話題とし、
以下のような記述がされています。
これは作曲家が意図した不協和音、
シューマン流の表現を借りるならば、
「いろいろな響きが響き合い、
そのなかからほんとうに耳をすませて聴こうとする人にだけ、
この響きが聴こえる」という、
ピアノにしかできない特殊な表現なのです。
(抜粋終わり)
今回取り上げたラヴェルの例も
この文章の内容と一部共通点を感じますね。
◉ ピアノが上手になる人、ならない人(著 : 小林 仁 / 春秋社)
Amazon著者ページ
https://www.amazon.co.jp/~/e/B0CCSDF4GV
X(Twitter)
https://twitter.com/notekind_piano
YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCBeXKaDXKd3_oIdvlUi9Czg
筆者が執筆しているピアノ関連書籍に加え、
数多くの電子書籍が読み放題になるサービスです。
コメント