【ピアノ】本番での楽譜の使い方:モーツァルトに学ぶ理想の演奏スタイル

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【ピアノ】本番での楽譜の使い方:モーツァルトに学ぶ理想の演奏スタイル

► はじめに

 

本番で楽譜を見るのであれば、せめて19世紀までのスタイルでいきましょう。それは、形式的に楽譜を置きつつ、実質暗譜で演奏するスタイルです。

 

► 19世紀の演奏スタイルとその現代的応用

‣ 19世紀までの演奏スタイルとその歴史

 

ピアノソロ演奏における「暗譜」というパフォーマンスが始まったのは、19世紀末のことです。それまでは、楽譜を置かずに演奏することは趣味の悪いこと、あるいは不適切な行為だと見なされていました。

しかし、当時の演奏家たちは全く暗譜をしていなかったのかというと、必ずしもそうではありません。多くの演奏家は、実際には暗譜していたにも関わらず、当時のモラルや慣習として譜面を置いて演奏していたのです。

 

‣ モーツァルトの白紙楽譜エピソード

 

この慣習を象徴する有名なエピソードとして、モーツァルトが「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第40番 変ロ長調 K.454」を初演した際のことが広く知られています。

彼は白紙を譜面台へ置いておいて、実際には完全に暗譜で演奏していたといいます。前夜に完成した作品だったために、ヴァイオリンパートの楽譜しか書き写しが出来上がっていなかったのが理由とのこと。

これは、当時の慣習に従いつつも、卓越した記憶力と音楽的能力を示した方法だったと言えるでしょう。

 

‣ 現代への応用:19世紀スタイルの実践

 

現代では、上記のような厳格なモラルは存在しませんが、もし本番で楽譜を見る必要がある場合でも、できる限り、この19世紀までのスタイルを目指すことをおすすめします。

つまり、形式的に楽譜は置いておくものの、実質的には暗譜しているレベルまで練習を積んでおくのです。

 

‣ 実質暗譜演奏の5つのメリット

 

このアプローチには、いくつかの大きなメリットがあります:

 

深い学習状態
暗譜するほど練習することで、楽曲の構造や細部をより深く理解した状態で本番を迎えられます。

心理的余裕
暗譜をしているけれども一応楽譜を置いている状態と楽譜に頼りきっている状態では、演奏者の心理的状況が大きく異なります。前者のほうが、不必要な緊張感を軽減しより自信を持って演奏に臨めます。

舞台上の見栄え
楽譜を見る回数が減ることで、より堂々とした印象を与えられます。また、音楽により没頭している様子を伝えることができます。

突発的な状況への対応力
万が一、ページがめくれないなどのトラブルが起きても、暗譜していれば慌てずに演奏を続けられます。

音楽的表現の向上
楽譜から目を離す時間が増えることで自身の演奏をより客観的に聴く余裕が生まれ、その場の雰囲気や響きに応じた柔軟な表現が可能になります。

 

もちろん、本番までの準備期間が十分でないケースもあるでしょう。しかし、可能な限り暗譜で演奏する、あるいは、暗譜をしたうえで楽譜を置いて演奏するという状態を目指してみてください。

モーツァルトのように白紙ではなく本物の楽譜を置いて演奏できるのであれば、それほど難しいことではないと感じられませんか。

 

► 暗譜の方法

 

暗譜の方法についても簡潔に触れておきましょう。

一番オーソドックスかつ効果的なやり方は、やはり、区切って暗譜することです:

・曲を小さなセクションに分けて、一つずつ丁寧に暗譜していく
・楽譜を見ずに弾けるようになった後も定期的に楽譜を確認し、細かいニュアンスや作曲家の意図を再確認する

これにより、暗譜の正確性を保ちつつ、より深い音楽的理解を得ることができます。

 

暗譜についてさらに深く学びたい方は、以下の記事を参考にしてください:

【ピアノ】暗譜の攻略テクニック大全:確実な記憶から本番対策まで
【ピアノ】暗譜との向き合い方:理解を深めるための考察

 

► 終わりに

 

楽譜を置いて演奏することは決して悪いことではありません。しかし、モーツァルトが示したように、「形式的に楽譜を置きつつ、実質的には暗譜で演奏する」というスタイルは、演奏者にとって多くの恩恵をもたらします。

このアプローチは、楽曲への深い理解と演奏の質向上につながる実践的な方法です。完璧な暗譜を目指す必要はありませんが、可能な限りこの理想に近づくことで、より充実した演奏体験を得ることができるでしょう。

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ情報メディア「Piano Hack | 大人のための独学用Webピアノ教室」の運営をしたり、音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。ピアノ音楽の作曲や編曲もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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