【ピアノ】レパートリーの選び方で見えてくる演奏者の個性と音楽観

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【ピアノ】レパートリーの選び方で見えてくる演奏者の個性と音楽観

► はじめに

 

日頃、どのような作品を好んで演奏し、どのような作品を避けているでしょうか?このレパートリーの選択には、実は演奏者の音楽性や芸術観が如実に表れています。

本記事では、レパートリー選びの重要性と、それが演奏者の個性をどのように映し出すのかについて掘り下げていきたいと思います。

 

► レパートリー選択が語るもの

 

「音楽的アイデンティティ」は、技術力や表現力だけでなく、レパートリーの選択にも強く反映されます。例えば、ある演奏家が常にロマン派の作品を中心に演奏するのか、それとも現代音楽に重きを置くのか。また、オリジナル作品のみを演奏するのか、編曲作品も積極的に取り入れるのか。これらの選択には、その演奏家の音楽観が色濃く反映されているのです。

 

► 巨匠たちのレパートリー選択から学ぶ

 

中には、アルバムを出すにあたって第三者からの要請で選曲している楽曲もあるのかもしれません。しかし、基本的に、巨匠のようなエスタブリッシュされた人物が自分のこだわりがないものをレパートリーに持つとは考えられません。

 

‣ アンドラーシュ・シフの場合

 

シフの興味深いオール・シューマンプログラムを見てみましょう:

・「暁の歌 Op.133」
・「4つの夜曲 Op.23」
・「クライスレリアーナ Op.16」
・「主題と変奏 変ホ長調」

このプログラミングで特筆すべきは、広く知られている「クライスレリアーナ」と比較的マイナーな作品を組み合わせている点です。これは単なる偶然ではありません。シフは、シューマンの作品の中でも、特に内面的で詩的な作品を選んでいると考えられます。これは彼の音楽的な価値観や芸術観を強く反映しています。

 

‣ スヴャトスラフ・リヒテルの特徴的な選択

 

リヒテルの興味深い傾向として:

・J.S.バッハのオリジナル作品を数多く演奏
・J.S.バッハ作品の編曲(特にリスト編)にはほとんど取り組まず
J.S.バッハ以外の作曲家が原曲の編曲ものには多く取り組んでいる

この選択からは、リヒテルのJ.S.バッハ音楽に対する深い敬意と、原典への真摯な姿勢が読み取れます。他の作曲家の編曲作品については柔軟な姿勢を示していることから、バッハに対する特別な思いが垣間見えます。

 

‣ クリスティアン・ツィメルマンの選択

 

ツィメルマンの例も興味深いものです:

・バッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」は演奏せず
・バッハ=ブラームスの左手のための「シャコンヌ」は演奏

この選択には、編曲作品に対する彼独自の価値基準が反映されていると考えられます。

 

► 自身のレパートリー構築に向けて

 

実践的なアプローチ:

1. 現在のレパートリーを整理する

・好んで演奏する作品のリストアップ
・避けている作品の傾向分析
・その理由の明確化

2. 取り組む内容を絞り込む前に、一度視野を広げてみる

・普段触れない時代や様式の作品にも挑戦
・新しい発見を大切にする
・ただし、全てを演奏する必要はない

3. 自分らしさの確立

・得意分野や積極的な気持ちを持てる分野の特定
・独自の解釈や表現方法の確立
・個性的なプログラミングの追求

 

► まとめ:レパートリー選択の重要性

 

レパートリーの選択は、演奏者としての芸術観や音楽観を表明する重要な手段となります。現代では、技術的な完成度を持つピアノ弾きは数多く存在します。その中で、独自の視点でレパートリーを構築し、そこに自分なりの解釈や表現を加えていくことが、取り組みとして重要になってくると言えるでしょう。

歴史上の巨匠たちの選択から学びながらも、現代の文脈の中で自分なりのアプローチを見つけていきましょう。

レパートリーの選択は、「自己宣言」でもあります。何を演奏することで、どのような表現をしていきたいのでしょうか。その問いかけから、自身のレパートリー構築を始めてみてください。

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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