【ピアノ】J.S.バッハ シンフォニア 第9番 BWV795 全運指付き楽譜と練習のコツ
► はじめに
J.S.バッハ「シンフォニア 第9番 BWV795」は、「ため息動機」と呼ばれる特徴的な音型で始まり、内省的で深い表現力が要求されます。
本記事では、この楽曲に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
推奨テンポ設定:
練習開始時:♩= 32-38(正確性と安定性重視)
中間段階:♩= 38-44(表現力の向上期)
目標テンポ:♩= 46(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが適切なのか:
ヘルマン・ケラーが提案する♩= 46 は、以下の特徴があります:
・楽曲の性格を活かす:この楽曲の深さや重々しさを表現できる
・音楽的な流れ:各声部の対話が自然に聴こえ、半音階的な和声も丁寧に表現できる
‣ 演奏上の重要なポイント
·「ため息」音型の処理
譜例(曲頭)
曲頭から出てくる3音による「ため息」音型では、3つ目の音(レッド音符)が大きく飛び出てしまわないように気をつける必要があります。
反対に、ブルー音符で示した部分は、拍の強部を先取りする効果があるので:
・明確な打鍵で:弱い音になってしまうと、アクセント部分がズレている意味が薄れる
・意識的に:この音がリズムの変化を生むことを理解して弾く
この音型は楽曲全体に頻出するため、弾き方を最初にしっかりと理解することが重要です。
·「タンタタ」リズムの安定化
譜例(曲頭)
カギマークで示した「タンタタ」のリズムも楽曲全体に渡って出てくる特徴です。
よくある問題:
・16分音符が短くなりがち
・32分音符が早く入ってしまう
・結果として「転んだ」ような印象になってしまう
常に意識しながら演奏することと、録音&チェックする時に着眼点とすることで、改善することができます。
· カタマリでの演奏を意識する
譜例(曲頭)
本楽曲では、つぶやくような断片的な素材が特徴的です。それぞれの表情を丁寧に作ることは必要ですが、カギマークで示したように、それらが合わさって長いフレーズを形成していることを忘れないようにしましょう。
重要な考え方:
・断片的な素材が組み合わさって長いフレーズを形成
・各部分の表情を作りつつ、全体の流れを意識
・音楽を「横へ引っ張っていく」意識を持ち、小さな区切りで音楽を止めない
実践方法:
・大きなフレーズの頂点を見極める
・そこに向かって音楽を導く
► 終わりに
沈痛な表現を持ったこの一作に、技術的な習得以上の価値を見出して学習するようにしましょう。
この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。
・園田高弘 校訂版 J.S.バッハ シンフォニア BWV787−801
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