【ピアノ】J.S.バッハ シンフォニア 第3番 BWV789 全運指付き楽譜と練習のコツ
► はじめに
本記事では、J.S.バッハ「シンフォニア 第3番 BWV789」に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。
意外と弾きにくいことで知られるこの曲ですが、運指などのポイントを押さえればガンガン譜読みを進めていくことができるでしょう。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
推奨テンポ設定:
練習開始時:♩= 54-64(正確性と安定性重視)
中間段階:♩= 64-74(表現力の向上期)
目標テンポ:♩= 76(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが適切なのか:
ヘルマン・ケラーが提案する♩= 76 は、以下の特徴があります:
・楽曲の活き活きとした性格を損なわない
・聴き手にとって音楽の流れが自然に感じられる
・大きく手を開く運指が必要なこの楽曲でも無理なく演奏できる
‣ 演奏上の重要なポイント
· 弾き直し音符の適切な処理
基本的な考え方
同じ音が連続して現れる場合、音楽的文脈に応じて音価を調整する必要があります。
譜例(6-7小節)
6小節1拍目のレッド音符D音のように、4分音符で伸びている音の直後に同音を弾く場合:
・本来であれば、弾き直した音を適切な長さまでで伸ばしたい
・しかしこの例では、D音周辺での2度音程の動きが続くため、美しく響かないうえ、ギクシャクしてしまう
・ここでは、レッド音符D音を16分音符で演奏
・ブルー音符D音も、記譜通り16分音符で演奏
同様の処理が必要な箇所:
・17小節3拍目
・19小節1拍目
例外的処理
譜例(16-17小節)
17小節目では、レッド音符からタイが伸びているため、ブルー音符を「タイが付いている8分音符」として弾きましょう。
上記の例とは異なりブルー音符を伸ばしていい理由は、直後にG音が出てきて不協和の2度音程が生じても、すぐにFis音へ動くこと協和の3度音程へ開くからです。
· 3声の譜読みをはかどらせる、説明的な書き込み
特に3声のシンフォニアに入ってからは、2声に比べて譜読みのハードルが大きく上がったように感じている方は多いでしょう。2声を2手で表現するのとは異なり、3声を2手で表現することで、同時に処理しなければいけないことが一気に増えるからです。
譜例(16-17小節)
例えば、17小節2拍目頭のCis音は上段にありながらも左手でとることになりますが、これを運指で示しただけでは、慣れていない譜読みの時に、一瞬右手で弾こうとしてしまうこともあるでしょう。また、左手でとったはいいものの、8分音符のように長く伸ばしてしまうこともあるかもしれません。他のことに気を取られて、「あっちを立てればこっちが立たず」の状態になってしまうのです。
そこでおすすめするのは、「説明的な書き込み」です。「ここはこうなっていますよ」と自分に分からせるための書き込みのことです。
例えば、上記譜例で補足したように、カギマークを書き入れて「絶対に左手でとってね」というのを自分へ説明するのです。また、レッドのラインで示したように、「16分音符だからここで切ってね、ついでに、ノンレガートで弾く8分音符も丁度半分の音価だからここで一緒に切ってね」というのを自分へ説明するのです。
他のことに意識が行っていても確実に視界へ入れるために、もっと目立つように書いてもいいでしょう。
これは何も、機械的な譜読みを目指しているわけではありません。書いておかないとすぐに弾き間違えたりしてしまうので、「譜読みの段階から良くないクセをつけないためのガイド」を書こうとしているのです。
邪道と思われるかもしれませんが、「日本語で説明を書いてしまう」のも一案です。例えば:
・「ここから2拍かけて右手を手前へ動かさないと次が弾けない」
・「この音は弾いたらすぐに離す」
などといった感じで、文字書き込みで自分へのガイドを出してあげてもいいでしょう。
► 終わりに
技術的な困難さを一つずつ解決しつつ、譜読みを丁寧に進めていきましょう。
この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。
・園田高弘 校訂版 J.S.バッハ シンフォニア BWV787−801
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