【ピアノ】ホール・ニュー・ワールド(アラジン)/ ヤマハ出版・自編曲(中上級):楽譜・音源・演奏ポイント
► はじめに:本記事の趣旨
本記事では、筆者がヤマハ出版向けに編曲したピアノソロ楽譜「ホール・ニュー・ワールド(アラジン)」について、楽譜の紹介・参考音源の案内・演奏上のポイントをまとめています。
楽譜を手にされた方が練習をスムーズに進められるよう、各セクションごとに具体的な演奏上の注意点を解説します。
想定演奏レベル:ツェルニー30番修了程度
演奏時間:約3分40秒
►「ホール・ニュー・ワールド」について
「ホール・ニュー・ワールド(A Whole New World)」は、1992年公開のディズニーアニメーション映画「アラジン」の劇中歌です。アラン・メンケンが作曲し、ティム・ライスが作詞しました。映画の公開と同時にリリースされ、ピーボ・ブライソンとレジーナ・ベルのデュエットバージョンがビルボード・ホット100で1位を獲得。さらにグラミー賞「最優秀ポップ・デュオ / グループ・パフォーマンス賞」やアカデミー賞「主題歌賞」を受賞するなど、高い評価を得た楽曲です。
アラジンとジャスミンが魔法のじゅうたんに乗って夜空を飛ぶ名シーンとともに歌われるこの曲は、夢や希望、新たな世界への扉を開く高揚感を美しいメロディに乗せて表現しています。
► 楽譜と参考音源
‣ 楽譜
本編曲は以下の楽譜集に収録されています。
美しく響く ピアノソロ (上級) ディズニープリンセス名曲集 / ヤマハ
‣ 音源
上記楽譜に基づいた演奏音源です。強弱・テンポ・ペダリングなど表情付けの参考にしてください。
癒やしのピアノ|ホール・ニュー・ワールド (アラジン) / ヤマハ出版・自編曲 (中上級)
この音源は 3/14 20:00 に公開されます。
► この編曲の活用例
本編曲は以下のような場面での活用を想定しています。
中級者以上のレパートリーとして:
・発表会や演奏会での演奏曲として
・ツェルニー30番修了程度の技術があれば取り組むことができ、完成度を高めることで聴衆に印象を残せる編曲
編曲学習の教材として:
・原曲の雰囲気を活かしながらピアノソロとしてどのように成立させるか
・3手的書法・内声の扱い・転調後の処理など、編曲上のアイデアを学ぶ参考資料としても活用可能
※3手的書法:左手のみで伴奏・バス・メロディを同時に担い、そこに右手を加えた書法
BGMとして
・リラックスした雰囲気の鑑賞用音楽としても適している
► 演奏ポイント
‣ 1-6小節(序奏)
・曲中のメロディをもとに作った序奏
・アウフタクトでは、特に曲頭なので拍が分からなくならないように
・タイで結ばれた部分で体内の内的な拍感・合図をとる
・3小節3拍目から5小節目にかけて、メロディが連続して下行していく
・途中でコブ(不自然な強調)を作らず、滑らかに下りていくように心がける
・5-6小節の分散和音は、個々の音を粒立てて弾かず、バスの響きの中に溶け込ませるように柔らかく
・6小節目はテンポを落とし過ぎないよう注意する
・ここはあくまで次の小節からのメインメロディを導き出すための準備の小節
・「引き出してあげる」という役割を意識し、ゆるめるにしてもわずかに留める
‣ 7-14小節(練習番号A)
・7小節目からメインメロディが始まる
・カツンと入ってしまわないよう注意が必要
・「歌い始める」というイメージで、自然に音楽が生まれてくるような入り方を目指す
・10小節目の3連符は、あっさりと軽く流してしまわずに、やや表現を加えながら演奏する
譜例(Sibeliusで作成、12小節目の左手の変形例)

・12小節目の左手は、ペダリングがしにくいと感じる場合は、譜例のように音を変更しても構わない
・また、「タラン」というニュアンスのつくスラーが書かれているので意識する
・13小節目は、右手と左手が交互に入ることでリズムを補完し合う書法になっている
・こういった箇所では、音楽が縦割りになって「刻み」のように聴こえてしまいがち
・左右の音が有機的につながり、ひとつの流れを作るよう意識する
・2番カッコの最後、右手の3度音程は食い込んでくるタイミングで登場
・このような「食ってくる音」は音楽上の重要なポイントになるケースが多い
・自分の耳でしっかり響きを確認しながら演奏する
‣ 15-22小節(練習番号B)
・15小節目の入りは、ためずにサラリと次へ進む
・ここで過度に表情をつけてしまうと、練習番号Cの入りが映えなくなる
・後から来るクライマックスのために、あえて「表現を抑える」という演奏上の判断が重要
譜例(Sibeliusで作成、18小節目の左手の変形例)

・18小節目の左手も12小節目と同様に、ペダリングがしにくいと感じる場合は譜例のように音を変更して構わない
・19小節4拍目の右手は、難しく感じる場合はFis音を省略し、A音のみで演奏して構わない
・音楽的な流れを妨げない範囲で、自身の技術に合わせて対応する
・20-21小節の左手「A D Cis H」はメロディックな動きをしている
・少し浮かび上がらせて、聴こえるように弾く
・ただし前景のメロディを圧迫しない程度に
・21-22小節の「Gis G」の連結は、音量と音色のコントロールが必要な箇所
・半音下がるこの動きで、どちらか一方が不自然に大きく飛び出してしまわないように
・均一なタッチで丁寧につなぐ
・22小節目は3拍目でもペダルを踏み替える
‣ 23-32小節(練習番号C)
・練習番号Cは「突然大きくする」のではない
・「その前のクレッシェンドの結果として大きくなる」という計画的なダイナミクス設計を意識する
・25小節2拍目裏は全声部が同時に食ってくる、音楽上の重要なポイント
・重みを入れて演奏するが、縦にスコンと当たるように打鍵してしまうと音楽の流れが止まってしまう
・「深く押し込む」ようなイメージで打鍵する
・27-28小節は技術的にやや難しい箇所
・まず左手だけを暗譜してしまい、手元を見なくても弾けるようにしてから両手を合わせる
・そうすると、演奏のハードルが大きく下がる
・29-30小節はゆっくりしたくなる箇所だが、やり過ぎは禁物
・30小節目の最後でわずかにテンポをゆるめるだけに留める
・そうすることで、続くブリッジ(31-32小節)が自然につながる
・31小節目では「バス音・1拍目裏のFis音・3拍目裏のE音」の3つのみを左手で取るのを推奨
・32小節目のスケールは、「ゆっくりから始めて速めていき(Slow→Fast)最後にわずかにゆるめる(→Slow)」
・このような自然な加減速の原理に則って演奏すると、機械的にならず音楽的な動き方になる
‣ 33-40小節(練習番号D)、41-48小節(練習番号E)
ここからは転調しますが、前半の解説と共通する演奏上の考え方が多く通用するセクションです。前半の解説を参考にしながら、以下の要所に注意して取り組んでください。
・33-34小節は、左手だけで弾く完結した書法の上に右手で装飾を加える「3手的書法」が用いられている
・左手のアクセント記号付きで演奏する音はメロディを担っており、それを響かせることが重要
・ただし、このアクセントは「メロディ」だということを視覚的にも示すためのもの
・「強く叩く」という硬い意味ではなく、「mf の音量でしっかり歌う」という意味
・メロディとして歌える範囲を超えた過剰な強調は避ける
・33小節目以降は、細かい音価(音符の長さ)が混在するため、テンポが走ってしまいがち
・テンポが不安定にならないよう、常にテンポを意識して演奏する
‣ 49-56小節(練習番号F)
・50小節目は楽譜のまま弾いても問題ない
・ただし、筆者自身は現在、右手の全音符のA音を省略し「G C」の4度音程のみで演奏している
・直後にA音が同音連打される動きがあるため、それを避けることで滑らかな流れを作る意図から
‣ 57-64小節(練習番号G)
・練習番号Gからは「A B D C」という断片的な音型が、問いかけと応答を繰り返すかのように連続する
・男女が互いに歌い合うようなデュエットのイメージで
・これらのメロディの断片を前景に浮かび上がらせ、伴奏音は控えめに保つ
・同じメロディが繰り返されるように見えて、それを支える和声は変化し続けている
・響きの変化を積極的に感じ取りながら演奏する
・64小節目には大きなルバートが待っている
・そこで十分なルバートを効果的に用いるためにも、練習番号Gの入りではまだゆっくりし過ぎないように
‣ 65-70小節(練習番号H エンディング)
・65小節目は右手が2声に分かれており、どちらも重要なパート
・小指で演奏する上声は「直前の流れから続くメロディ」、下声は「エンディングへと向かう新たなメロディ」
・上声を聴き続けながら下声を演奏するという、声部の独立した意識が求められる
・66小節目は、手が届くようであれば、左手の「F C G」の3つの音をフィンガーペダルで残す
・そのうえで、3拍目と4拍目の両方でペダルを踏み替える
・そうすることで、響きの持続と明瞭さを両立させることができる
・67小節目はカウントを機械的にし過ぎず、2-3拍目を巻くようなイメージで演奏すると自然な流れが生まれる
・68-69小節は、低音域に深いバスの響きがあり、その中をハープが上行していくようなイメージ
・最後のC音は消し過ぎずに、別の場所で鳴っている1音かのようにやや抽出する
► 終わりに
本記事の解説が、演奏をするうえでの参考になれば幸いです。また、ピアノ編曲を学ぶ方は、楽譜を分析学習する教材としてもぜひご活用いただけたらと思います。
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