【ピアノ】ショパン「小犬のワルツ」演奏完全ガイド

スポンサーリンク
スポンサーリンク

【ピアノ】ショパン「小犬のワルツ」演奏完全ガイド

► はじめに

 

曲の背景

1846年から47年にかけて作曲された作品です。ショパンが最後に作曲した作品が、この小犬のワルツを含む「Op.64」だと言われています。晩年には「幻想ポロネーズ Op.61」や「ピアノソナタ 第3番 Op.58」など内容が深く重い作品を書いていただけに、この華やかなワルツの存在は少し意外に感じられます。Op.64の中でもこの「Op.64-1」は、デルフィーネ・ポトッカ伯爵夫人に献呈されました。

 

演奏難易度と推奨レベル

この楽曲は「ツェルニー30番中盤程度」から挑戦できます。

 

本記事の使い方

この楽曲を、演奏のポイントとともに解説していきます。パブリックドメインの楽曲なので譜例も作成して掲載していますが、最小限なので、ご自身の楽譜を用意して読み進めてください。

各セクションごとに具体的な音楽的解釈を示していますので、練習の際に該当箇所を参照しながら進めることをおすすめします。

 

► 演奏のヒント

‣ 序奏:1-4小節

 

譜例(PD作品、Sibeliusで作成、曲頭)

ショパン「小犬のワルツ」1-4小節の楽譜。

最初のトリルについて

多くの版では最初のAs音にトリルがついていますが、なぜ多くの方がこの音にフェルマータをつけるのでしょうか。ショパン自身はフェルマータを要求していません。「どうしてそのフェルマータをつけたのか」をきちんと説明できない限りは、まず楽譜通り学んでおくのが得策でしょう。

こういったトリルは一種の「持続音」です:

・音が減衰するピアノの特性を補うために、持続させたい音にトリルをつけている
・それと同時に、装飾的にAs音を彩っている

この楽曲のメロディは全体的に「非和声音を多く使用した装飾的なメロディ」なので、まるで最初にそれを予言しているかのようです。

 

トリルの運指

譜例(1小節目)

ショパン「小犬のワルツ」1小節目のトリルの運指を示した楽譜。

最初のトリルでは、通常は「La Si La」というように行って返ってくるだけの3音で演奏することが主流ですが、日頃、どのような運指を使っているでしょうか:

・一見問題無さそうな「232」で弾くと、音の抜けが発生しやすい
・どちらの指も強い指ではあるが、隣り合った指を交互に高速で使うのは意外と難しい
・このトリルは「132」で弾くのがおすすめ
・音が欠けてしまう可能性を減らすことができる

 

leggiero(軽やかに)の実現

この小節にさりげなくleggieroと書いてありますが、これが楽曲全体における大事な要素です。そのためには:

・タッチ面の注意
・テンポ面の注意

「Molto vivace」と書いてあります。楽曲は何でもかんでも速いテンポで弾けばいいというわけではありませんが、「速いテンポで弾いたほうが上手に聴こえる楽曲もある」ということを覚えておいてください。

 

拍子感の維持

(再掲)

ショパン「小犬のワルツ」1-4小節の楽譜。

1小節目に「実線カギマーク」をつけましたが、これが一つの素材です:

・2小節目はそれが少し拡大していて、バリエーションになっている
・3-4小節目には、1小節目の素材が3回繰り返されて2小節に渡っている
・つまり、3-4小節目では「拍子を変えずに拍子の感覚が変わるような効果」が出ている

 

拍子感について

テンポが速いと、どうしても音を弾くことに必死になってしまい、拍子感が薄れてしまいがちです。譜例の序奏部分は拍子感に注意が必要な代表例です。なぜなら:

・左手のリズムが不在だから
・右手のパッセージの構造がズレていくから

この2つの条件がそろってしまっているからです。常に3拍子の意識を忘れずにこの4小節を仕上げましょう。4小節目から5小節目へ入る際は明らかに音楽の方向性が前へ進んでいるので、テンポをゆるめずにノンストップで入るといいでしょう。

 

‣ Aのa:5-20小節

 

譜例(5-8小節)

ショパン「小犬のワルツ」5-8小節の楽譜。

左手の重要性

ショパンのワルツをはじめ、あらゆるワルツでは右手が目まぐるしく動き回るため、どうしてもそちらばかりに意識がいってしまいがちです。しかし、左手は右手と同じくらい比重を与えて練習しましょう。なぜなら:

・テンポキープの要は左手の3拍子
・音楽の軽さや重さのコントロールも左手にかかっている

 

左手の跳躍伴奏を確実に弾くコツ

バスと和音を弾いていく左手の跳躍伴奏は、テンポが急速であることなどから、音が欠けたり外したりしやすいものとなっています。外さずに弾くコツとして、以下の点を意識しましょう:

・バスを弾く前に、直後に弾く和音の形や距離をイメージしておく
・バスを弾いたとき、手の形を直後に弾く和音の形へ近づけておく
・和音からバスへ戻るときには、やはり、距離をイメージする

これらを「ゆっくり練習(拡大練習)」の段階から行なってください。意識せず、むやみに跳躍しているだけでは、テンポが上がったときに対応できなくなってしまうでしょう。

 

「音の欠け」という致命的なミス

何よりも左手で一番問題となるのは、「音が欠けたり鳴り損なったりしているのに、意識せずにいる」部分です。
各小節の左手で2-3拍目は和音です。この和音の音が一音鳴り損なったりしても、右手ばかりに一生懸命になっていると気がつきません。

重要な心得:

・こういった不注意は意識しないとずっと直らない
・「もう譜読みが終わって、おおむね弾けるようになった」と思っても、必ずチェック
・左手だけで練習し、和音をバランスよくつかむ練習を十分に行ってから両手でも練習
・「音の欠け」というのは「音の間違い」と同じくらいもったいないもの

 

ペダリングの工夫

多くの版には5小節目からダンパーペダルの指示がありますが、3拍目頭で離すようになっています。これはおそらく「3拍目が重くならない工夫」です。leggieroで軽く演奏していくためにはどうすればいいか上述しましたが、この楽曲のような左手の音型では、「3拍目が重くならないようにすること」も軽さを出す一つのポイントです。

 

テンポによって変わるペダリング

こういったペダリングはテンポをかなり速く弾くときのためのものであって、そうでない場合は右手のパッセージが濁ってしまいます。右手が急速に動き回っている部分では一部を除き、原則ノンペダルで演奏するのもアリです。

 

音楽的な山場へ向けて

7小節3拍目は右手G音から「順次進行」の音階で上がっていきますが、9小節1拍目の右手B音の直前に3度音程の「跳躍進行」をしています:

・これが、ある意味では裏切りで、9小節1拍目の右手B音を聴覚的に「強調する効果」が出ている
・B音は和声としては第9音に当たる音で「緊張度が高い音」

・9小節1拍目の左手は、ここまでで一番低いAs音
・8小節目から9小節目に向けて両手の音域が「反行」で開いていく
・それに伴い、しっかりクレッシェンドが書かれている

「エネルギーに沿って音符とダイナミクスが有機的に結びついている」点でも、よくできています。演奏技術としては9小節目へ向けて「指圧を深くしていく」といいでしょう。

 

ダイナミクスの設計

譜例(1-20小節)

ショパン「小犬のワルツ」1-20小節のダイナミクス設計全体図。

この作品の難しさの一つはダイナミクス。松葉がいろいろと書かれているにも関わらず、どれくらいのダイナミクスにするのかは要所しか書かれていないため、演奏者が判断していかなくてはいけないのです。

 

1-20小節におけるダイナミクスのポイント:

【1小節目は p で軽く】

・パデレフスキ版には1小節目のダイナミクスが書かれていない
・ここはまだシンプルなスタート地点なので、p で軽く開始する

【9小節目で mf までふくらませる】

・5小節目からの4小節間にわたるクレッシェンドは、到達点が mp だと音楽が開いていくにしては遠慮がち
・だからと言って f まで膨らませてしまうと序盤のここではやり過ぎ
・mf くらいまでにしておくのがベター

・到達点から逆算し7小節目で mp
・p から mp までよりも、mp から mf までのほうがダイナミクスの開きが大きいが
・同じ2小節分でクレッシェンドする
・したがって、「後ろ寄り」で大きくなる理想的なクレッシェンドを実現できる

【10小節目の終わりは音楽が閉じているので、p まで落とす】

・9-10小節目のデクレッシェンドだが、10小節目の終わりはフレーズが閉じている
・したがって、p までおさめる

【11小節目で subito mp にする(9小節目との差をつける)】

・11小節目で繰り返しをするが、9小節目とは異なり左手が薄くなっている
・したがって、9小節目との差をつけるという意味でも、11小節目は mf にせず、subito mp にする

【13小節目で p まで落とす】

11-12小節に書かれているデクレッシェンドでどこまで落とすかについてですが、オーソドックスに繰り返しの13小節目をまた p で始めようと思えば、答えは決まります。

【20小節目はデクレッシェンドに変更】

・パデレフスキ版では20小節目にクレッシェンドが書かれている
・しかし、21小節目は多くのピアニストが p で始めている
・一方、音型が流れるように続いているため、クレッシェンドしてsubito p にするのは困難かつ音楽的でない
・したがって、例外として20小節はデクレッシェンドして21小節目の p へ入る

 

プラルトリラーの扱い方

この楽曲には「プラルトリラー」が複数回出てきます。こういった装飾音は流れの中でさりげなく入れてください:

・テンポが速いと頑張って入れようと思うあまり、そこに不自然なアクセントがついてしまったりする
・不自然なアクセントが入るというのは、極端な言い方をすると音楽が止まったのと同じこと
・「ゆっくり練習(拡大練習)」するときからこの点に気をつけてさらう

 

簡略化した奏法

ちなみに、この作品に出てくるプラルトリラーは速いテンポの中で入れるのが難しいということもあり、やや簡略化した入れ方が推奨されています。多くのピアニストは多少変形をさせて弾いているのです。

譜例(10,12,20小節目のプラルトリラーの弾き方)

ショパン「小犬のワルツ」10小節目プラルトリラーの簡略化した弾き方。

ショパン「小犬のワルツ」12小節目プラルトリラーの簡略化した弾き方。

 

ショパン「小犬のワルツ」20小節目プラルトリラーの簡略化した弾き方。

 

その他の注意点

10小節目でも9小節目と「基本の和声」は変わりませんが、ベース音が変わり第二転回形になったので「聴こえ方」は変わっています。

11,19,84,92小節目は同じようなところであるにも関わらず、版によっては左手の音が少し変化しています。自身で使用している版に書かれている音をよく確認し、整理しておきましょう。そうしないと暗譜でうっかりする可能性が出てきます。

12小節3拍目はややテンポをゆるめて右手を丁寧に歌いましょう。ただし、テンポを動かすのは少しだけ。そして、次の小節へ入る際に変な「間(ま)」を空けたりしてはいけません。

 

‣ Aのb:21-36小節

 

譜例(20-22小節)

ショパン「小犬のワルツ」20-22小節の楽譜。

クロマティックな動きに注目

20-21小節のメロディでは、Es-D-Es-E-Fという「クロマティックな動き」が出てくるので、ニュアンスに気をつけて重くならないように注意しましょう。

この楽曲では装飾的な動きや非和声音が多く使用されて即興的なメロディができています。そのことからも、重くならずに軽い音で演奏していくほうがいいことが理解できると思います。

 

良くあるリズムの間違い

この楽曲では「プラルトリラー」が何度か出てきますが、そのせいなのか、上の譜例へカギマークで示した21小節目などの3連符までプラルトリラーのように弾いてしまっている演奏を耳にします。特に、テンポの速い楽曲で起きてしまいがちです。

 

譜例(21-37小節)

ショパン「小犬のワルツ」21-36小節の楽譜。

休符を活かす表現

24小節目からは、たびたび左手の3拍目の音が「4分休符」になります:

・「音が無くなる」というのも一種の「リズム表現」
・休符を活かすためにも3拍目頭でしっかりとダンパーペダルを離す
・左手の音が無くなるので、3拍目は右手の音がよりしっかりと聴こえるようになる

 

その他の重要ポイント

27小節目のメロディは折り返し地点であり跳躍も含み、ダイナミクスも下がっているので、どうしてもギクシャクしてしまいがち。意識的に丁寧に練習しましょう。

29-31小節までの左手は、バス音が「付点2分音符」になることで、29-32小節までかけて「メロディに対する対旋律」のような役割を作り出しています。強調し過ぎる必要はありませんが、カンタービレに歌いましょう。

・32小節2拍目の左手はぶつけないように
・32-33小節の丸で示したところは表情的な跳躍を伴うので、カンタービレに

 

‣ B:37-73小節

 

37-53小節、そして54-73小節(繰り返し)をあわせて構成的には「B(aa)」です。

 

雰囲気の転換

37-53小節目からは雰囲気を変えて「対比」にしたいので、ペダルも多く使ってカンタービレに歌っていきましょう。sostenuto の一言を見落とさずに。

 

2声的な音楽の理解

37-40小節の右手はシンプルに書かれてはいますが2声的な音楽になっています:

・トップノートの繰り返されるAs音は「保続音」の役割
・内声には「Es-E-F」というクロマティックなラインが隠されている
・ショパンは「クロマティックを多用した作曲家」であり、この箇所もショパンの特徴が出ている

 

音色のコントロール

すべての音をまったく同じ音色で弾いてしまうと、1声に聴こえてしまいます。そこで、トップノートの繰り返されるAs音のほうが「ややエコーのような柔らかい音色」で演奏するのもいいでしょう。この辺りは様々な解釈が出来ますので参考までに。

テクニックとしては:

・打鍵速度をゆっくりめに
・指の角度も立て過ぎないように

こうすると柔らかい音が出せます。細かなことのようですが、立体的な音楽を目指すためにあらゆる点にアンテナを張っていきましょう。

 

4連符の表現

45小節目は右手に「4連符」が出てきます。これは、「ピッタリ4連符を入れて欲しい意図」というよりは、「歌っているような一種の曖昧な表現が求められている」と解釈できるでしょう。4連符から次の小節へ移るときに不自然な「間(ま)」が空かないように気をつけましょう。

 

拍子感の変化

51小節目のAs音に頂点をつくり、そこから「めまい」のように半音で音楽が閉じていきます。

52小節目の左手は、少し異質です:

・3拍目には音があるが「2拍目に4分休符」が入っている
・これは3-4小節の作曲法と類似していて、52-53小節でも「2小節を3分割している効果」が出ている
・拍子を変えずに拍子の感覚が変わる効果

だからと言って、演奏上、特定のどこかを強調する必要はなく、「音楽はサラリと進んでいるのに聴感上のトリックがある」というのがポイントです。

53小節目は、左手が無くなり右手のみになるので、その効果を活かすためにも52小節目のダンパーペダルはきちんと3拍目で離しましょう。

 

繰り返し部分の装飾音

譜例(54-57小節)

ショパン「小犬のワルツ」54-57小節の楽譜。

55小節目からは右手に「装飾音のAs音」が出てきますが、このAs音も「保続音」としての役割です。メロディとして扱われている装飾音なのだとしたら聴かせてもいいのですが、この箇所の場合はメロディを彩飾するための装飾音であり、それ自体がメロディではありません。つまり、演奏上はきわめて軽く弾き、うるさくならないように注意しなければいけません。

 

装飾音を軽く弾くテクニック

ポイント:「装飾音符がかかっている長い音価の音符のほうに重心を持っていく」

このように意識して打鍵しましょう。装飾音符を「弾こう弾こう」とするのではなく、触るだけにする。そして、「長い音価の音符(譜例の場合は、2分音符)」のほうに手の重心を持っていく。このようにすると、自然に軽くなります。

練習方法:「指遣いはそのままで、装飾音符を取り払って練習する」

 

レガートのテクニック

55小節目からの装飾音が出てくるところでは、ペダルに頼り過ぎず、多くの譜面にも書かれているように「替え指」のテクニックを使って手でもレガートに演奏します。ダンパーペダルを使用して手でもレガートにするのと、ダンパーペダルを使用して手は切ってしまうのとでは、出てくるサウンドが大きく異なります。

 

右手のみになる箇所の難しさ

69小節目も、左手が無くなり右手のみになります。これも、53小節目と同じ発想法。

右手のみになる場所の難しさは、音が露呈されるので「音と音の横のつながり」にまで細かく耳を傾けられてしまうことにあります。打鍵の速度を揃えることで、音色を揃えて音と音の横のつながりを良くしましょう。一音一音が縦割りにならないようにしないといけません。この際、打鍵上のテクニックとして有効なのは、「出来る限り指を鍵盤から上げないこと」です。

69小節3拍目のAs音は音が抜けてしぼんでしまわないように。柔らかくも丁寧に響かせましょう。

 

‣ 再現:74-121小節

 

トリルでのテンポ管理

譜例(70-75小節)

ショパン「小犬のワルツ」70-75小節の楽譜。

ここでは「長く続くトリル」があるため、8分音符で動き出したときに急にテンポが変わってしまいがちです。

・メトロノームに合うようなやり方でテンポのつじつまを合わせる必要はない
・しかし、トリルをしている間も「今、どの小節の何拍目を弾いているのか」という意識は持つ
・ショパンはわざわざ4小節間トリルを書いていることに着目
・フェルマータで引き伸ばしているわけではない

まずは、楽曲の骨格を理解して弾く。自分なりに色をつけるのはそれからにしましょう。

 

ダイナミクスの変化

譜例(78-85小節)

ショパン「小犬のワルツ」78-85小節の再現部ダイナミクス設計。

再現ではあるのですが、楽曲の前半で出てきたときとダイナミクスの書かれ方が異なっています。

 

121小節目のテンポ処理

121小節目では通常、少しテンポを広げて演奏します:

・「大きな跳躍がある」という理由に加え
・次の小節の崩れ落ちるような下降表現を印象的に演出するため

これまで速いテンポで「123 123」ときていたため、テンポをゆるめた瞬間に気までゆるんで拍感覚がなくなってしまっていませんか。テンポが広がっても3拍子の感覚は忘れずに持っていましょう。

 

跳躍前のアクセントに注意

121小節目の跳躍の直前に不自然なアクセントがついてしまいがちです。跳躍に気を取られてしまうとこのように前の音の処理が雑になってしまいます。

・スラーを見ると、跳躍の直前の音まででフレーズが一つ終わっている
・フレーズ終わりの音は大きく飛び出ないのが原則

 

‣ コーダ:122-125小節

 

即興的なパッセージの扱い

122小節目からは「短いコーダ」。122小節目の小さい音符はきわめて軽く、一息でこぼれ落ちるように弾きましょう。

こういった即興的なパッセージでは演奏のコツがあります。それは、「区切りを決めておく」こと。毎回何となくで弾いていると、弾くたびに左手との合い方が変わったりしてしまうので練習が積み重なっていきません。

 

推奨する区切り方

ここでの小さい音符のパッセージでは「3・3・6・6・2・2・2」で割るといいでしょう:

・「3・3」は左手と合わせて
・「6・6」は右手のみ
・「2・2・2」は左手と合わせる

このパッセージ全体は「ゆっくりから始めて、巻いていき、またゆっくりになる」ように動きをつけると自然に聴こえます。

 

最終小節の注意点

最終小節の注意点は2つです:

・2拍目の左手の和音が、メロディを隠蔽するほどうるさくならないこと
・フェルマータにせず、3拍目は休符だということを忘れないこと

 

表現の平坦化を避ける

この楽曲では特に、ダイナミクスの表現が平坦になり、「sempre mf(常にメゾフォルテ)」のような演奏になってしまうことは避けなければいけません。テンポが速い楽曲のときにやってしまいがち。いわゆるガシャ弾き状態になってしまうのは、速く弾くこと自体に必死になってしまうからです。

 

► 終わりに

 

「小犬のワルツ」は、シンプルながら、ショパンらしい繊細な音楽的配慮が随所に散りばめられた作品です。

・装飾的で即興的なメロディライン
・クロマティックな和声進行
・拍子感を操る作曲技法
・軽やかさと歌心のバランス

これらすべてを表現するには、丁寧な譜読みと音楽的理解、そして確実な技術が必要です。本記事を学習の参考にしてみてください。

 

推奨記事:

【ピアノ】「最新ピアノ講座」演奏解釈シリーズのレビュー:演奏解釈とピアノ音楽史を一冊で学ぶ
(演奏解釈をさらに学ぶための教材 /「小犬のワルツ」も収載)

【ピアノ】転回形の響きを意識的に感じて耳を開かせる
(「小犬のワルツ」を教材にした記事)

 


 

► 関連コンテンツ

著者の電子書籍シリーズ
・徹底分析シリーズ(楽曲構造・音楽理論)
Amazon著者ページはこちら

YouTubeチャンネル
・Piano Poetry(オリジナルピアノ曲配信)
チャンネルはこちら

SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら

 

この記事を書いた人
タカノユウヤ

作曲の視点からピアノ学習者の学習的自立を支援/ピアノ情報メディア「Piano Hack | 大人のための独学用Webピアノ教室」の運営/音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

タカノユウヤをフォローする
- ショパン (1810-1849)
スポンサーリンク
シェアする
Piano Hack | 大人のための独学用Webピアノ教室

コメント

タイトルとURLをコピーしました