【ピアノ】「ピアノ運指法 譜例分類による」(下山望 著)レビュー
► はじめに
ピアノを弾いていて「この運指で本当にいいのだろうか」「もっと弾きやすい運指があるはず」と感じたことはありませんか。
楽譜に書かれた運指をそのまま使うだけでは、なぜその運指が推奨されているのか、自分の手に合った最適な運指をどう考えれば良いのかが分かりません。
今回紹介する「ピアノ運指法 譜例分類による」は、運指に特化した数少ない専門書です。ただの運指の提案集ではなく、「なぜその運指なのか」という理論的根拠を、豊富な譜例とともに解説してくれます。本書を活用すれば、自分で運指を考える力が身につき、あらゆる楽曲にも応用できる運指の思考法が習得できます。
・出版社:音楽之友社
・初版:1986年
・ページ数:152ページ
・対象レベル:中級~上級者
・ピアノ運指法 譜例分類による ムジカノーヴァ叢書 9 著:下山望 / 音楽之友社
► 本書が役立つ学習者
特におすすめ:
・最低でもツェルニー30番入門以降の学習者(難しめの譜例が多い)
・自分で運指を考える力をつけたい学習者
あまり向かない学習者:
・初級者(難しめの譜例が多い)
・ただ最適の運指を探しているだけの学習者(考え方の解説が豊富)
► 内容について
‣ 本書の特徴
数少ない運指専門書
ピアノの運指に特化した専門書は意外と少なく、本書はその貴重な一冊です。単に「この指で弾きましょう」という表面的な提案ではなく、「なぜその運指なのか」を理論的に解説してくれる点が優れています。
実践的なアプローチ
・ポジション移動の合理性
・楽曲の前後関係を考慮した運指選択
・困難な跳躍を考慮した代替案の提示
これらのような視点から、実際の演奏で役立つ運指の考え方が学べます。
‣ 目次構成の魅力
本書は9章構成で、技術的課題ごとに体系的に整理されています:
第Ⅰ章:ポジションの構成
・音階、半音階の運指
・分散和音の扱い
・重音(3度、6度)の処理 他
第Ⅱ章:遠距離の克服
・跳躍や広い音域での運指テクニック 他
第Ⅲ〜Ⅴ章:実践的テクニック
・同音連続の処理
・高音域・低音域の攻略
・両手の協力と交替 他
第Ⅵ〜Ⅷ章:より高度な技法
・難しいトリル、回音
・黒鍵から白鍵への滑り下ろし
・その他の難所対策
第Ⅸ章:総合演習
・ショパン「幻想ポロネーズ Op.61」を一曲通して解説
► おすすめの使い方
1. 辞書的活用(最もおすすめ)
現在取り組んでいる曲で困ったときに:
・巻末の曲目索引から該当曲を探す
・その楽曲の運指例と解説を参照
特定の技術課題があるときに:
・目次から該当するテクニックの章を探す
・類似パッセージの運指原理を学ぶ
2. 通読による体系的学習
一度最初から読み通すことで、運指の考え方の全体像が掴めます。その後は辞書的に使うといいでしょう。高度な楽曲からの引用が多いため、該当曲を弾いていなくても「このタイプの技術要素」として応用的に理解する姿勢が大切です。
► 終わりに
本書は、運指という一見地味なテーマを、演奏技術向上の核心として扱った良書と言えるでしょう。ただの運指表ではなく「なぜ、その運指が合理的なのか」という思考プロセスを学べる点は大きな魅力です。これにより、本書に載っていない曲でも自分で最適な運指を考える力が養われます。
・ピアノ運指法 譜例分類による ムジカノーヴァ叢書 9 著:下山望 / 音楽之友社
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