【ピアノ】曲頭に見られる特徴から読み解く楽曲の性格づけの分析
► はじめに
楽曲分析において、「曲頭に見られる特徴」に着目することは、特に短い楽曲を分析する時の重要な視点となります。
作曲家は多くの場合、曲の冒頭で作品全体の性格を決定づける要素を提示します。これらの要素は、リズム、和声進行、アーティキュレーション、強弱といった様々な音楽的パラメータとして現れ、その後の展開に大きな影響を与えます。
本記事では、実際の楽曲例を通じて、曲頭分析の具体的な方法を見ていきましょう。
► 実例による分析
‣ J.S.バッハ「ポロネーズ BWV Anh.119」の場合
J.S.バッハ「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳 第2巻 ポロネーズ BWV Anh.119」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)
曲頭で提示される特徴的なカギマークaのリズムは、以下の要素から構成されています:
・4分音符による均等な刻み
・明確な3拍子の拍節感
この要素は、Cセクション開始部(11小節目)からの重要なリズムとして引用されます。
‣ ベートーヴェン「エコセーズ 変ホ長調 WoO.86」の場合
ベートーヴェン「エコセーズ 変ホ長調 WoO.86」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)
曲頭には、作品全体を特徴づける2つの重要な要素が提示されています:
1. sforzando( sf )による強調
・1小節目から連続する sf は、拍の重みづけを明確に示す
・この強調は、5小節目以降の1拍目に重みが入るアーティキュレーションに受け継がれている
2. 特徴的なリズムパターン
・「♩ ♫」(タンタタ)のリズムが基本となる
・このリズムパターンは、後半での「タラタタ」のアーティキュレーションの原型となっている
これらの要素が示すのは、「1小節を、二つではなく一つでとるべき」という演奏解釈。また、sf と特徴的なリズムパターンは、ダンスとしての力強い性格を確立する上で重要な役割を果たしています。
これらの曲頭で提示された2種類の要素が特徴づけとなり、楽曲全体に渡っています。
► 終わりに
多くの楽曲では、曲頭に見られる特徴を詳細に分析することで、以下のような利点が得られます:
・楽曲全体の性格をより深く理解できる
・フレージングやアーティキュレーションの解釈に根拠を持てる
実践においては、新しい曲を学習する際に、曲頭の特徴を詳しく観察し、それが楽曲全体にどのように影響しているかを考察するといいでしょう。
【おすすめ参考文献】
本記事で扱った、J.S.バッハ「ポロネーズ BWV Anh.119」について学びを深めたい方へ
・大人のための独学用Kindleピアノ教室 【J.S.バッハ ポロネーズ BWV Anh.119】徹底分析
本記事で扱った、ベートーヴェン「エコセーズ 変ホ長調 WoO.86」について学びを深めたい方へ
・大人のための独学用Kindleピアノ教室【ベートーヴェン エコセーズ 変ホ長調 WoO.86】徹底分析
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