【ピアノ】練習を真の積み重ねに変える4つのヒント
► はじめに
ピアノの上達は単なる練習時間の長さではなく、質と向き合い方にあります。
本記事では、単なる反復練習ではなく、本当に実力を伸ばすための練習の「積み重ね方」について、具体的なヒントとともに解説します。
► 4つのヒント
‣ 1. 練習が本当に積み重なっているか
「その毎日の練習や音楽学習は、きちんと積み重なっていますか?」
積み重ねるためには、ただ練習時間を増やすだけでなく、練習内容自体を見直すための時間も必要。
例えば次のようなものです:
・耳を使わず、ただ機械的に腕先を動かしていないか
・練習メニューを終わらせることが目的になっていないか
・ICレコーダーなどで客観的に聴くことを意識しているか
・座り方、座る位置などの基本をおろそかにしていないか
・毎日、具体的な目的を持って練習できているか
・ゆっくり練習(拡大練習)を取り入れているか
・弾き込みと休憩のバランスを考えて練習できているか
など。
これらはどれも大切なことですが、どれもうっかりすると忘れてしまいます。
ここで一度、独自の項目リストを書き出してみましょう。
このような反省を「定期的」に行うのが理想的。
積み重ねにおける反省の重要性は「その他の日常生活」にも発見できます。
例えば、何となく毎日こなすだけで物事が上達するのであれば、家事をこなす主婦や主夫はとっくにプロの料理人級の腕になっています。
しかし、そこまで上達をしているわけではありませんし、それを当人も望んでいません。
繰り返しますが、練習が積み重なるためには、ただ時間を増やすだけでなくて、内容自体を見直すための時間も必要です。
‣ 2. 記憶を破壊する練習を避け、確実な積み重ねを目指す
ピアノの練習において最も重要なポイントの一つが「やっていることの再現性」です。
少なくとも、指の動きを覚えたり「動作を身体へ覚え込ませていく」という意味での積み重ねにおいては、
やっていることの再現性を保つことが、練習を積み重ねる上での重要なポイントとなります。
「やっていることの再現性を保つ」とは、具体的には以下のようなこと:
・運指をきちんと決めて、弾く度に変わってしまわないようにする
・ペダリングをきちんと決めて、弾く度に踏み方が変わってしまわないようにする
・バロックや古典派の作品で装飾音を書き譜にして、弾く度に入れ方が変わってしまわないようにする
・フレージングやアーティキュレーションも同様に、一度解釈を決めたら継続して同じ表現を心がける
「記憶を破壊する練習方法」とは、まさに逆を行くものです:
・弾くたびに異なる運指を使用してしまう
・意識せずにペダルを踏んでしまう
・装飾音の入れ方が毎回場当たり的になる
このような練習は、実は “破壊的な練習” となってしまいます。
なぜなら、一度形成された運動記憶を別のパターンで上書きしてしまうから。
もちろん、練習の初期段階では様々な可能性を試してみることは必要です:
・複数の運指パターンを試す
・異なるペダリングを実験する
・さまざまなアーティキュレーション解釈を検討する
しかし、これらはあくまでも下準備の段階でのこと。
いったん最適な方法を見つけて決定したらそれを楽譜へ書き込んでおき、以後は一貫してその方法で練習を重ねることが重要。
このような確実な積み重ねが、最終的には:
・より安定した演奏
・より確実な記憶
へとつながっていきます。
「記憶を破壊する練習方法は、原則避ける」
これを意識して、効率的で建設的な練習を心がけましょう。
‣ 3. 練習を真の成長に変える最大のコツ
毎日練習をしていても今まで弾けていたところが弾けなくなったり、弾けないところが相変わらず弾けなかったりすると、練習が積み重なっていないのではないかと思うこともあるのではないでしょうか。
まず認識して欲しいのは、弾けないところを弾けるようにしたり暗譜しているところを維持したりするのは積み重ねの「一部」でしかないということです。
練習を積み重ねれば安定度は上がりますが、また出来なくなったり暗譜を忘れたりすることはあり得ます。
では、何が積み重ねのもう一部なのかというと「楽曲理解」です。
毎日の練習の中から、たとえ一つだけでもその楽曲についての新たな発見をすべき。
発見により楽曲理解が深まっていけば、それは、翌日弾くときにも翌々日弾くときにも使えるんです。
技術的に安定しない時期でも確実に学習が進んでいる、確実に学習が積み重なっている、と確信できるのは、楽曲理解が進んでいる時。
技術的な安定は退行もあったりして自分でコントロールしにくいのですが、楽曲理解は自分次第で能動的に深めていくことができます。
一番いけないのは、弾き込み期間になったらもう大した発見はないと勘違いして、思考停止でさらいまくってしまうこと。
どんなに小さなことでもいいので、毎回の練習の中から新しいことを発見してください。
このような楽曲理解を徹底することが、練習を積み重ねる最大のコツです。
‣ 4.「練習が積み重なっていない」と指摘された瞬間
筆者は学生の頃、運動系の部活に入っていました。
ただ、生まれつきのものなのか、スポーツ全然ダメなのです。音楽のように上達していかない。
とある日、顧問の先生に呼ばれ、「ピアノはどうやって上達した?」ときかれました。
「積み重ねだと思います。」と答えたところ、「そうだろう? でも、君の部活の練習は積み重なっていないよ。」と返されたのです。
その時に、「練習が積み重なるためにはどうすればいいか」ということを初めて考え始めました。
何となく部活の時間が過ぎるのだけを待っていた筆者にとって、その練習内容が積み重なるわけはなかったということ。
「土曜日にある部活の大会」よりも「日曜日にあるピアノの発表会」の方が、当時の筆者にとっては重大イヴェント。
要するに、運動を好きにはなれなかった。言い換えると、音楽の方は好きで仕方なかったのです。
それ以降、音楽においても「練習や学習が積み重なるためにはどうすればいいか」ということを常に意識するようにしてきました。
本項目でお伝えしたいのは、意識することの大切さです。
► 終わりに
練習の積み重ねは一朝一夕には成らず、継続的な自己観察と意識的なアプローチが鍵となります。
本記事で紹介したヒントを参考に、積み重ねを意識した練習や音楽学習を進めてみてください。
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