「ピアノペダルの使い方」著 : 笈田光吉 / 音楽之友社
という書籍に、以下のような解説があります。
(以下、抜粋)
ベートーヴェン「ピアノソナタ第23番 熱情 ヘ短調 op.57 第1楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、20-22小節)
最初の小節のフォルティシモ(最強音)のアコールドすべての音が
完全に殺されてからでなくては、
次の小節のピアノ(弱音)を弾き出すことができない。
このような場合には、
強音の最後の和音を弾くと同時に手もペダルも離してしまって、
人工的に小さな間隙を作って
フォルテの音全部が死んでしまうのを待たなければならない。
(抜粋終わり)
「人工的に小さな間隙を作って」
とありますが、
時間をとるのは、とうぜん譜例の矢印Aの部分。
筋肉の準備は一瞬でしなければいけませんし、問題なくできますが、
音響的なことで言えば
一瞬の時間が必要なのは上記のような理由から。
この説明を踏まえれば、反対に、
「subito f にするときには時間を使う必要がない理由」
も分かりますね。
直前が弱音なので
いきなり音量を上げても音響的に問題は起きません。
譜例の矢印Bの部分。
(再掲)
ちなみに、
subito p の直前で一瞬の時間を使うときの注意点があります。
譜例の部分でも当てはまりますが、
大多数のケースで
「subito p の直前まで in tempo でノンストップで進むべき」
ということ。
直後でダイナミクスを落とそうと思うと
どうしても強音の最後のあたりで
ゆっくりとしてしまいがち。
しかし、
「in tempo で弾き切って、その直後に一瞬の時間をとる」
というやり方をとることで
弱音へ変わるところに絶妙な空気感が生まれるため、
表現の聴かせ方として
重要なポイントとなります。
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