【ピアノ】レッスンでマルをもらうための本当のヒントと上達のコツ
► はじめに
「今週こそマルをもらいたい」という気持ちでレッスンに臨んだ経験はありませんか。実は、この「一週間でマルをもらう」ことに囚われすぎると、かえって上達を妨げてしまうことがあります。
本記事では、マルをもらうことの意味と、より効果的な学習方法について、実体験を交えながらお話しします。特に初中級以上の学習段階を想定しています。入門や初級の段階では、とにかく楽に続けることを優先すべきでしょう。
►「一週間でマル」依存症から抜け出そう
ツェルニーの一部の練習曲など、時間をかけ過ぎるとやる気の低下につながるものもあります。一方、少なくともJ.S.バッハ「インヴェンション」以降の楽曲では、一週間という期限にこだわらず、丁寧な練習を心がけましょう。
なぜなら、レッスンに間に合わせようと表面上だけさらったものは、とにかく雑だからです。
‣ 筆者の体験談
筆者は上級になってから改めてインヴェンションを学習したのですが、もはや完全に一からのやり直しでした。当時は今よりも音楽の学習が浅く能力も未熟だったので、読み取れないことが多かったのは仕方ありません。しかし、当時から持っていたインヴェンションの分析書や演奏ヒントの参考書に一瞬たりとも目を通していなかったのは、やっつけで学習していた証拠です。
当時は、一週間という期間では、とりあえず譜読みし、通して弾けるようにすることで精一杯でした。しかし、それで運良くマルをもらえてしまった週があったので、それ以来、他の番号でも一週間でマルをもらうことが最大の目標になってしまっていました。これは一種の依存症と言ってもいいでしょう。
‣ 効果的な練習のための7つのポイント
楽曲の背景を調べる:作曲家や作品背景について、しっかりと周辺情報を調べる
楽曲を分析する:参考書なども使って楽曲分析をする
完成度を重視する:一週間目は半分でもいいので、その代わり丁寧に練習する
目的を見失わない:マルをもらえた場合は先に進んでもいいが、それだけが目的にならないよう注意
段階を理解する:すでに時間をかけて取り組むべき作品を弾く上達段階まできていることを理解する
友人の進度と比較しない:友人の教本の進度と比較して落ち込むことを避ける
見栄を張らない:教本の進度で見栄を張ることを一切やめる
表面的な練習 vs 丁寧な練習
表面的な練習 | 丁寧な練習 |
---|---|
とりあえず最後まで弾けるようにする | 部分練習を重視し、完成度を高める |
楽譜上の情報、しかもすぐに目に入る情報しか見ない | 楽譜の裏を読もうと知恵を尽くす |
楽曲について何も説明できないくらい知識が浅い | 作曲家や時代背景も調べて、博士になっている |
指が回れば良しとする | 音楽的な表現も考慮する |
自分で期限を決めたり、または、期限が決められているが故に学習に熱が入ること自体はいいことです。しかし、表面的な学習でその曲を終わりにするのは意味がありません。なぜなら、将来その曲について何も残らないからです。場合によっては、「マルが書かれているけど、こんな曲やったっけ?」などと、曲のことを全く思い出せないケースすらあるでしょう。
とりあえずマルをもらったら、その後に深く勉強するなんてことはまずなく、大抵マルがもらえればおしまいになってしまいます。
上級者への補足:
上級レベル以上になると、「マルをもらう」という考え方さえなくなります。自分が一生残したいレパートリーに取り組み、その作品を指導者と(もしくは独学で)丁寧に仕上げていくためです。そして本番が終わっても、いったん寝かせるというだけで、その作品の学習自体はずっと続いていきます。
► 逆に、なかなかマルがもらえない時の対処法
習いに行っている方で、やってもなかなか進んでいかない曲集を前に途方に暮れている方もいるのではないでしょうか。考えてみるべきポイントは、以下の三つです:
・欲張り過ぎていないかチェック
・やり直しの理由を確認する
・そもそも、本当にその曲集が必要なのかを考えてみる
‣ 欲張り過ぎていないかチェック
「欲張り過ぎている」というのには二つの意味があります:
・終わらせたい量を多く見積り過ぎている
・一度に取り組む併用曲集が多過ぎる
思い返してみてください。「今週、3曲マルをもらって…」「来週でこの曲集は終わりにして…」などと、終わらせたい量を多く見積り過ぎていませんか?
少なくとも習いに行っている場合、マルにするか決めるのは指導者です。自分でコントロールできる部分であればいいのですが、自分で決められない内容に希望を持ち過ぎるのはおすすめできません。「たくさん練習したから、マルをもらえたらいいな」くらいの気持ちでレッスンへいくといいでしょう。
また、曲集が進まない理由に「練習時間の不足」が考えられます。それは一度に取り組む併用曲集が多過ぎることが原因かもしれません。
時々、趣味でピアノをやっている方で一度に五冊習っている方がいるようですが、トゥーマッチです。全体的な練習時間を相当取れる方や専門に進むようなケースでもない限り、一度に取り組むのは1冊~多くて3冊程度で十分です。その中でできる最高の学習を心がけた方が、身になるものは多いでしょう。
上級者への補足:
ちなみに、上級レベル以上になると、「何冊取り組む」という考え方もなくなり、「何曲取り組む」となります。
理由は先ほどの上級者への補足と似ていて、自分が一生残したいレパートリーに取り組んでいくため、「曲集をすすめる」という考え方がなくなるからです。
‣ やり直しの理由を確認する
「また今週もやり直しだ…」と落胆したい気持ちは分かりますが、本当に自分ではよくできていると思うのであれば、何がやり直しの理由なのか思い切って指導者へ聞いてみましょう。
ただし、その返答に自分ががっかりさせられる心の準備はしておいてください。そして、その返答をもとにもう1週間頑張ればOKです。よく分からないまま1週間過ごすよりもずっとプラスの経験になるはずですし、次の週に合格になる可能性も上がるでしょう。
‣ そもそも、本当にその曲集が必要なのかを考えてみる
これはさらなる手段です。「必要なのかなんて、そんなこと分からない」という方は、「やりたいのか」で構いません。考えた結果、なかなか進んでいないその曲集を嫌だと思うのであれば、指導者に「やりたくない」とはっきり伝えてください。
一番良くないのは、我慢したままイライラしながら続けることです。
義務教育での学習のように、ある程度我慢することで身についた基礎もあるかもしれませんが、大人になって学習している音楽では、我慢した先には何もありません。続ける気持ちが無くなってしまったら元も子もないですから。
► 終わりに
マルをもらうことが目的ではなく、音楽的な成長と深い理解を目指すことが大切です。一週間という期限に囚われず、一つ一つの楽曲と真摯に向き合うことで、より豊かなピアノライフを送ることができるでしょう。
教室に通っている方はもちろん、独学の方にも、「将来へ残す学習」について考えてみていただきたいと思います。
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