具体例で見てみましょう。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、126-128小節)
カギマークで示したAとBを見てください。
再現部の終盤であるここでは
大半のピアニストは
強い表現で弾いています。
どちらの小節も
ディミニッシュという
緊張感のあるハーモニーが使われていますし、
提示部には出てこなかった、
あえてわざわざ付け加えられた部分だからです。
譜例の3小節間は、
提示部では対応する部分が出てきません。
(再掲)
では、AとBの2つの小節は
同じように強く弾けばいいのでしょうか。
そのような演奏もゼロではありませんが、
後ろの小節のほうがより強い表現だと考えていいでしょう。
異なるディミニッシュのハーモニーを連続させて
緊張感を追い込んでいるうえに、
和音の厚みがより重厚になり
より低い音も使われているからです。
Bの小節がこの楽章のクライマックスだと
捉えてください。
展開部の中間に唯一の ff が出てきますが、
それに準じるエネルギーだと解釈して
劇的なラストを演出しましょう。
K.310 第1楽章の演奏解説のようになってしまいましたが、
本記事で言いたかったのは、
作曲家がダイナミクスで指示していないからといって
同じような表現を並べるのでなく、
音域、音の厚み、ハーモニーの使い方などをよく観察して
各部分の表現の差を見抜くべきだということです。
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