一般的に「保続音(オルゲルプンクト)」というと
その場面でのバスが
同じ音をずっと伸ばしているだけ、ずっと刻んでいるだけ
などといった
同じカタチを保持しているものだと考えますが、
もう少し広く見た場合は
保続音にもさまざまな形態が見られます。
例えば、以下の譜例を見てください。
プロコフィエフ「子供の音楽-12のやさしい小品 月が牧場に昇る Op.65-12」
譜例(PD作品、Sibeliusで作成、50-63小節)
丸印で示した属音A音はすべて
保続音の一種と捉えることができます。
譜例に補足した(A)〜(E)を順に見ていきましょう。
(A)
前からの左手パート、および、右手パートの終わりの音を共有している。
(B)
オクターヴの跳躍を伴い2オクターヴまで広がっているが、
カタマリとして見たときには
A音の保続と言える。
(再掲)
(C)
半音でトリルしているが、
結局、B音はA音に戻ってくる非和声音なので
カタマリで見たときにはA音の保続と言える。
(D)
57-58小節の下段は、
伴奏的な音を挟んでいるだけで
結局、A音に戻ってくるので、
2小節をカタマリで捉えると
A音の保続と言える。
59-60小節の下段は、
A音が最低声部にきていないだけで
A音が常に鳴っているので
一種の保続と言える。
(E)
主音D音による保続に移行。
コンスタントに刻む、保続の表現でよく見られるカタチ。
(再掲)
この14小節間の中に
さまざまな形態による保続音を確認できたと思います。
上記譜例で見られたのは、
保続音が同じ音程に居続けるだけでなく
2オクターヴで動いたり
非和声音をからめてまた戻ってきたり
伴奏的な音を挟んで2小節ひとつの保続にしたり
内声へ移行したりといった、
柔軟性を伴った表現方法でした。
保続音のいちばんオーソドックスな在り方以外にも
目を光らせるようにすると、
譜読みのときに取れる情報が増えるようになります。
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