あらかじめペダルを踏んでおいたほうがいいケース
ダンパーペダルを使用しているあいだは
すべてのダンパーが上がりっぱなしになるので、
これから弾く予定の鍵盤に対応する弦も含め、
すべての弦が共鳴する状態になります。
この共鳴効果で
音質がふくよかになり、音量も増大するため、
しっかりと鳴らしたい強奏で弾き始める場合は
あらかじめペダルを踏んでおいたほうがいいケースが多い。
例えば、以下のような例。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)
あらかじめペダルを踏んでおいた状態で
曲頭の和音を弾き始めることで、
しっかりと鳴るインパクトのある好スタートを切ることができます。
あらかじめペダルを踏んでおかないほうがいいケース
先ほども書いたように、
ダンパーペダルを使用しているあいだは
すべてのダンパーが上がりっぱなしになるので、
これから弾く予定の鍵盤に対応する弦も含め、
すべての弦が共鳴する状態になります。
音色にも影響を与えて雰囲気をつくるので
その雰囲気が求めている音楽に合わなければ
踏んでおかないほうがいいと言えるでしょう。
『ピアノを歌わせる ペダリングの技法 「いつ踏むか」ではなく「どう踏むか」』
著 : ヘルムート・ブラウス 訳 : 市田 儀一郎、朝山 奈津子 / 全音楽譜出版社
という書籍に
以下のような記述があります。
ベートーヴェン「ピアノ協奏曲 第4番 Op.58 第1楽章」
譜例(PD作品、Sibeliusで作成、曲頭)
ピアノ・ドルチェに対し「フルペダル」を使って響きの水門を大きく開け放つ
──最初の和音の前にすでにペダルを踏んでおく──
と、この序奏部分の親密な雰囲気にはまったく合わない。
逆である。すなわち、ペダルのある音とない音の絶妙のバランスの中で、
凝縮された響きの質が獲得されねばならない。
(抜粋終わり)
ここで取り上げられている例は、
すべてのダンパーが上がって
すべての弦が共鳴してしまうことによる
音色への影響やその雰囲気が
ヘルムート・ブラウスの表現したい内容に合わないと判断されたケース。
実際に音に出してみると感じると思いますが、
これには納得できますね。
似たような例をもうひとつ挙げておきます。
シューベルト「ピアノソナタ第18番「幻想」ト長調 D 894 Op.78 第1楽章」
譜例(PD作品、Sibeliusで作成、曲頭)
ここでもやはり、
曲頭を弾き始める前から踏んでおくのではなく
打鍵した後から
サステインされている音を拾ってあげるように遅れて踏み込むほうが
雰囲気に合う場面です。
音を出して確認してみてください。
本記事で取り上げたのは
「曲頭を弾き始めるときにあらかじめペダルを踏んでおくかどうかの判断方法」
における一側面でしかありません。
実際には数え切れないほどの可能性があるので
「そこで表現したい内容」を自分の中で明確にもったうえで
ペダリングについて考えていくようにしてください。
◉ ピアノを歌わせる ペダリングの技法 「いつ踏むか」ではなく「どう踏むか」
著 : ヘルムート・ブラウス 訳 : 市田 儀一郎、朝山 奈津子 / 全音楽譜出版社
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